第91話 寺生まれのMさん
アクシデントによる初登場から、
「あー。そのー…はい。魔法使いミギーとは私の事ッス。基本は裏方ッスけど、出来るだけ頑張ります、へへっ」
『やったああああ!!』
『ミギー派ワイ、この時を100年待ち侘びた』
『ガッチガチで草』
『ミギーしか勝たん』
『ヘラヘラすんなw』
『マジで魔法使えるようになったんスかぁ!?』
『アデ公とかクリスは華があるけど、ミギーはなんか落ち着く可愛さ』
『丁度いいよね』
『普通に失礼で草』
『胸囲の格差社会(小声』
「おいコラ!コメント欄見えてるから!この早さでも一瞬読めたッスよ!誰が貧乳ッスか!!」
実質初めての配信出演にして、早速騎士団員達からの洗礼を浴びる
「緊張は解けたようですわね。珍しくガチガチになっているものだから、実は少し不安でしたわ」
「いやいや、そりゃ緊張するッスよ。今の同接数8000人ッスよ?ウチみたいなパンピーには荷が重いッス……むしろ、初回から堂々としていたお嬢がおかしいんス」
公爵令嬢として、また騎士団長として、人前に出ることが多かったアーデルハイトと違い、
『それはそうよね』
『配信者のメンタルは尊敬する』
『普通は視聴者数一桁でも緊張するわ』
『そこの団長は髪の毛弄りながら突っ立ってたなw』
『ていうかお嬢呼びなのか……てぇてぇ』
『クリスの時もちょっと緊張気味だったし、やっぱ団長がおかしいです』
『俺は分かってたよ。アデ公がおかしいってことはね』
『便乗ニキももうネタ無くなってきてるわ』
『ッス系後輩キャラすこ』
『そんなことより魔法の話はよ!!』
この配信を見ている者達も、
「ちなみにミギーは、異世界方面軍で最年長ですわよ?」
「うるさ!!ほっとけ!!」
そんな無駄話をしながら、ちらりと横へ目を向ければ。
そこには『師匠、巻きで!!』などと書かれたカンペを持つ
「カンペで怒られたので、話を戻しますわよ。ミギーの魔法についてですわ」
「ッス。結論から言えば、ウチは確かに魔法を使えるようになったッス。といっても、多分皆が想像しているようなのとは違うと思うッスけど……ま、それは実際に見てもらうのが早いッスね。というか、これ以上引き伸ばすと暴動が起きそうッス」
そんな混沌極まるコメント欄を尻目に、
「ウチは魔法初心者なんで、補助具を使わせてもらうッスよ」
『……?』
『あっ、異世界臭がする』
『なんか嫌な予感がするな?』
『もう思ってたのと違うんだけどww』
『魔法の補助具って杖とかそういうのじゃないのかよw』
『っていうかミギーは寺生まれだったりするんか?』
『そういや前にアデ公が、木魚はミギーの私物みたいなこと言ってたな』
『おかしいな。魔法が見れると思ってたらいつの間にか仏具が並んでる』
『経験上、これは多分思ってた斜め上のやつが来るぞ』
「あ、コレは単に音が好きで集めてるだけッス。別に寺の生まれとかじゃないッスよ。さてさて……一応世界初の魔法ってことなんで、張り切っていきますか!」
そう言って
そうして異世界方面軍の三人と、そしてサポートの二人しか居ない静かな協会内に、ゆっくりと木魚の音が鳴り始める。直後、
そうして一分ほどが経った時、
「破ぁ!!」
そう
「ふぅー……おっけーッス!」
そんな視聴者達の困惑を知ってか知らずか、
『草』
『何がだよ!!』
『破ぁ!!じゃねーんだよ!!』
『やっぱ寺生まれじゃねーか!!』
『寺生まれのMさんなんよ』
『意味不明過ぎてゲラゲラ笑ってる』
『寺生まれはスゴイ、じゃねーんだよ!!』
『魔法はどこいったんだよ!!』
『ファイヤーボール!!とかそういうのは!?』
『クッソwwww腹痛いww』
当然ながら、視聴者達からは全力のツッコミが飛び交った。
『魔法』と聞かされた時、大抵の者がまず思い浮かべるのは、よくある『
だが、そんな彼らの反応を見た
「まぁまぁ、言いたいことは分かるッスよ。だがしかし!!コレを見ても同じことが言えるッスかね?……破ぁ!!」
裂帛の気合と共に、
そうしておよそ一分後。
伊豆支部の食堂テーブルの上には、仄かに輝く
「ふぃー……さて、勘のいいリスナー達はもう気づいたかも知れないッスね。さて、いまウチが魔力で作ったコレは、一体何でしょうか!!」
今この配信を見ている者の殆どは、創作やファンタジー作品に溢れた現代を生きる者達だ。
『オイオイオイオイ……オイオイオイ』
『流石に嘘やろ?』
『嘘だと言ってよミーギィ』
『マジだったらマジでダンジョン攻略がひっくり返るぞマジで!』
『正直肩透かしとか思ってたけど、予想以上にヤバそうなのが出てきたぞ』
『アカン、これはアカンでぇ!!』
『いや、マジでそうなら一日クリアは十分にあり得る』
『ワイウスノロ、未だにピンと来てない』
『ここに来てミギーがチート能力者だったの、激アツだろコレ』
『下手に炎とか出し始めるよりよっぽどヤバい』
どうやら視聴者達の反応に満足したらしい。それはもう憎たらしい、見事なドヤ顔を披露する
優れた魔力操作と、ずば抜けた空間認識能力。彼女の個性と適性が、明後日の方向へと突き抜けてしまった。そうして生み出された、まさしく偶然の産物だった。
何よりも恐ろしいのは、ここが地球であったこと。あちらの世界には存在しない、『通信機器』が存在するのだ。それらが意味するのは、紛れもない『チート』であった。
彼女は視聴者達へと告げる。彼女だけの、彼女の為の魔法の名前を。
「これがウチの魔法、『
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