偽りの記憶
(描写)オルバたちが学校近くのファストフード店に到着した頃には、綾瀬は既に店内にいた。オルバが先に入り、他の三人はヴェータを綾瀬から隠すようにして席につく。
彼女は不安そうな面持ちで待っていた。
(オルバ)「綾瀬さん、待たせて悪かった。ちょっとトラブルに巻き込まれてさ……」
(綾瀬)「わたしも今来たところだから。その、ごめんね、突然呼び出したりして」
(オルバ)「気にしないでくれよ、話聞くって言ったの俺だし」
(綾瀬)「ありがとう。矢神くんがあなたに近付くなって言うから、学校で話せなくて」
(オルバ)(周りから綾瀬さんを遠ざけようとしてンのか。重い彼氏みてェ)
(描写)申し訳無さそうな綾瀬の一言に、オルバは笑顔を崩さぬまま、胸中で独りごちる。綾瀬は少し俯いていたが、意を決したように口を開いた。
(綾瀬)「あの事故のことだけど、本当は何が起こったの? 全然覚えていないんだけど、わたしとオルバくんだけ無傷って……おかしくない? あの事故、何か変じゃない?」
(オルバ)「……」
(綾瀬)「わたし、あれ以来変な夢を見るの。事故の瞬間、怪物みたいなのが出てくる夢……。ねえ、オルバくんはあの時、何か見なかった? 何があったか覚えてる?」
(描写)オルバは考え込む素振りをし、少し俯いた。少し離れた席にいる四人からのプレッシャーには当然気付いている。オルバの答えは決まっていた。
(オルバ)「悪い。俺、事故のコトよく覚えてないんだ。バスが急に揺れて、倒れた? のかな。それくらいしか分からない」
(綾瀬)「……そうだよね。ごめん、変なこと聞いて」
(オルバ)「こっちこそ、力になれなくてごめんな」
(描写)──それまで賑わっていた店内が、突如として静まり返る。ワーディングエフェクトだ。一同が気付くと、綾瀬は気を失い、矢神秀人に抱えられていた。矢神は恍惚とした顔をして綾瀬を見つめている。
(オルバ)「矢神……!!」
(描写)「君には近付かないように言っておいたのにね。どうせ、君たちは事実を話せやしないのに」
(ヴェータ)「事実だと」
(描写)敵意をあらわにするヴェータを尻目に、矢神はくつくつと笑った。
(矢神)「あの事故は、本当は綾瀬さんが目覚めるはずだったんだ。なのにオルバ君が目覚めた」
(オルバ)「まるで自分がやったみたいな口振りだな?」
(矢神)「そうだよ、あの事故は僕がやった。綾瀬さんを目覚めさせるために」
(描写)喜びを抑えきれないと言い放つ矢神に、一同はざわりと殺気立った。特にルシアとヴェータは、矢神を射殺さんばかりの気迫を放っている。
(矢神)「綾瀬さんは僕と同じで選ばれたんだ。もう普通の人間の側にはいられない。彼女はFHに連れて行って覚醒させる」
「──そうして、僕と一緒になるんだ」
(描写)矢神は高らかに笑い、綾瀬を連れ去った。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
(冬海)「待ちなさい、シューラ・ヴァラ!」
(エナード)「あちらからボロを出してくれるとはね。手間が省けるよ」
(ヴェータ)「奴と決着を付けに行こう。この手で叩き潰さなければ気が済まない」
(ルシア)「気が合うなヴェータ、私もだ」
(オルバ)「どうしてそんなに殺意高いんだよ二人共!?」
(ルシア・ヴェータ)「お前(オルバ)は知らなくていい」
(描写)一同は矢神の追跡を開始する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます