情報収集2

(描写)その頃。N市支部の執務室では、ルシアと冬海が関係者の調査にあたっていた。


(冬海)「ルシアさん、霧谷さんから連絡がありました! 『今回の件で協力を頼んでいる方がいます。情報の共有をするためにそちらに行くよう指示をしましたので、もうすぐ着くかと思います』とのことでした!」


(ルシア)「ほう、協力者と。外部の人間か?」


(冬海)「そのようです! 詳細は当人から聞いて欲しいとありました!」


(描写)二人が会話をしていると、執務室のドアをノックする音が三度響いた。「入ってくれ」とルシアが告げると、「失礼するよ」と穏やかな声と共に扉が開く。ルシアはその声に違和感を覚えた。

何故ならば、毎日のように聞く声だったからだ。


(??)「えーと、支部長さんはここかな? 霧谷くんに言われて来たんだけど……、って、母さん?」


(ルシア)「!? エナード……その、お前なのか? 協力を頼まれたのは」


(エナード)「うん、僕だよ。シューラ・ヴァラって人を調べて欲しい、って頼まれてたんだ」


(描写)声の主は、ルシアの息子であるエナードだった。互いに驚きながら会話を終えると、おや、とエナードは冬海に気付いた素振りをした。


(エナード)「そっちの人は?」


(冬海)「はっ、はい! UGN補佐官・早蕨冬美と申します! 霧谷さんの指示で、ルシアさんと共同で職務にあたっています!」


(エナード)「そうなんだ、教えてくれてありがとう。僕はエナード、交渉人(ネゴシエーター)をしているよ」


(描写)エナードの言葉に、ルシアは怪訝そうな表情を浮かべる。


(ルシア)「これ(個人調査)は交渉人の仕事とは思えんがな」


(エナード)「やっぱりそう思う? 交渉のついでに入った情報をちょっと使ってただけなのに、今じゃあ情報屋みたいな扱いになってきちゃってさ。僕、荒っぽいことは好きじゃないけど、依頼だからちゃんとやるよ」


(冬海)「そこまでいったら合法的な職ではない気がするんですが……」


(ルシア)「冬海さん。このバカ息子の事は、どうか気に留めないでくれないか」


(エナード)「そこまで言うことないでしょ、酷くない!?」


(ルシア)「言うに決まっているだろう!!」


(描写)揉める二人を眺めながら、冬海は「ルシアさんってとても苦労されているんですね……」と呟いた。


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


(描写)ルシアは席に戻り、咳払いをした。


(ルシア)「話を戻すぞ。お前は霧谷の依頼でシューラ・ヴァラの調査をしていたんだな」


(エナード)「そうだよ。シューラ・ヴァラと、春日恭二って人が話してる所に行ったりもしたんだ。逃げられちゃったけど」


(冬美)「二人はどんな話をしていたんですか?」


(エナード)「確か、プランを実行するぞって言っていたかな。」


(ルシア)「プランだと? それを聞いたのはいつの事だ」


(エナード)「5日前だよ」


(冬海)「FHは、何を企んでいるんでしょうか……?」


(ルシア)「今ある情報から、それを突き詰めてみるのも手か」


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


エナード 侵蝕率1D10上昇

ルシア 侵蝕率1D10上昇


エナード 登場による侵蝕率増加 1D10→7

ルシア 侵蝕率増加 1D10→1


エナード→早蕨冬海にロイス「母さんの部下 P:好奇心●/N:隔意」を取得


情報判定


・『シューラ・ヴァラ』

〈情報:裏社会、UGN〉難易度12


エナード

【社会】8/D10 +〈情報:裏社会〉1

エナード 8dx10+1>=12→12 成功


(エナード)「シューラ・ヴァラについてだけど、こっちで調べたところ、矢神秀人って名前だと分かったよ。あと、5日前には鋭い切れ味の武器か何かで攻撃もされた」

「そうだ。ほんの数日前に、バスの爆発事故があったっけ。監視カメラの映像とか、近くにいた人から聞いた話を擦り合わせると、その人は事故の現場にいた可能性がとっても高いんだ。僕にしたように、バスが爆発するようなことをしたと見て間違いないと思う」


(描写)思い出したかのようにポンと手を叩くと、エナードはつらつらと記憶を口にする。一般人ではとても知り得ない情報を持ち、堂々とした立ち振る舞いで語るエナードに、冬海は驚きを隠せなかった。


(ルシア)「シューラ・ヴァラ……鋭き投槍か、成程。奴と相対した場合には、間合いに注意せねばなるまい」


(冬海)「戦うのですか? FHのエージェントと」


(ルシア)「当たり前だ。こいつの話が正しければ、奴はオルバを殺そうとした事になる。この手で叩き潰さねば、腹の虫が治まらん」


(エナード)「──オルバを殺そうとした、だって?」


(描写)部屋に入った時から保たれていたエナードの笑顔が固まった。胡散臭さを滲ませる笑みこそ変わらないが、その眼は笑っていると言えるようなものではなくなっていた。


(ルシア)「お前、オーヴァードについては聞かされていないのか」


(エナード)「オーヴァード? 何それ」


(ルシア)(霧谷め、こいつがただの人間だからと情報を渡していなかったな)

「……端的に言えば、人と変わらん見た目の超能力者だ。レネゲイドウィルスというウィルスに適応、覚醒した者のことをそう呼ぶ。オルバは事故にあったことで覚醒したようだ」


(冬海)「ルシアさん!」


(描写)協力者とはいえ、一般人の枠を出ないエナードに機密情報を伝えるルシアに、冬海は反射的に声を発した。


(ルシア)「知らない方が後々邪魔になる。こいつには口止めをするし、責任は私が取るから問題無い」


(冬海)「ですが…!」

 

(エナード)「ここで聞いたこととか、霧谷くんの依頼で調べたこととかは言わないよ。ていうか言えないから安心して」


(冬海)「それは、どうしてですか?」


(描写)冬海の質問に、エナードはルシアに目線を差してみせた。


(エナード)「言ったら最後、母さんに何されるか分かったもんじゃないからね」


(描写)一転して虚ろな目で笑うエナードに対し、冬海は苦笑いを返すことしか出来なかった。


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


(エナード)「事故があったのは知ってたけど、オルバが巻き込まれていたのは知らなかったよ」


(冬海)「そもそも事故のことも秘匿してある情報なのに、一体どこから手に入れてるんですか?」


(エナード)「んー、内緒♡」


(描写)人差し指を口に当てて自然に零された流し目に、冬海は思わず赤面する。それを見たルシアは大きく溜め息をついた。


(ルシア)「そいつだけは止めておけ、もう44になる。冬海さんなら幾らでも良い人を探せるから」


(描写)冬海はルシアとエナードを交互に見る。それもそのはず、エナードはその年齢の割には皺もなく、きめ細やかな肌をしていて、更にルシア譲りの整った造形をしているからだ。


(冬海)「よ、44歳!? 嘘ですよね!?」


(エナード)「本当だよ? 母さんが69歳で、オルバは20歳だから、妥当な年じゃないかな?」


(冬海)「そうなら、なおさら不公平です!!!!」


(描写)「こんなの……あんまりです……うう」そう言ってくずおれ、すんすんと鼻を鳴らす冬海に、ルシアは「泣かないでおくれ」と慌ててハンカチを差し出すのだった。



・『春日恭二、ファルスハーツの動向』

〈情報:裏社会、UGN〉難易度8、10


ルシア

【社会】2/D10 +〈情報:UGN〉1 +〈冬海の協力〉1

2dx10+1+1>=10→6 失敗



(描写)FHに下ったシューラ・ヴァラは、バスの爆発事故を起こした。多くの人間を殺め、傷を負わせ、そして一般人だったオルバをこちら側(オーヴァード)に引きずり込んだことになる。だが、それは一体何のために? 考えても頭に霧が掛かったように、先行きを見透かせない。

もどかしさにルシアは歯噛みした。


(ルシア)「FHめ……」


(描写)ルシアが呟いた直後、彼女の端末から通知音が鳴る。


(エナード)「その音、オルバからの連絡でしょ」


(ルシア)「どれ。『学校終わったからヴェータとN市支部に行く 先にいるなら待ってて』だそうだ」


(冬海)「私、迎えに行きましょうか?」


(ルシア)「ヴェータがいるなら大丈夫だろう、あの子は強い」


(描写)ルシアの言葉に、エナードはぴくりと反応した。


(エナード)「強いって、まさかヴェータもオーヴァード?」


(ルシア)「ああ。特に銃火器の扱いならば、滅多に引けを取らんぞ」


(エナード)「……ここでもぼっちなのかぁ、僕……」


(描写)自分以外の家族が発症者という事実に気付いたエナードは、がっくりと肩を落とした。

一同は、オルバとヴェータの到着を待つことにした。

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