全部、あんたのせい

「終わった〜」

 新幹線のトイレの中で鏡を見ながら思う。これから東京駅に着くまで、約2時間半もある。最長2時間半、あの金髪ギャルと隣に座っていなくてはならない。気まずすぎる。向こうが先に降りてくれればいいのだが。

 どうしてこうなった?あの女が悪いんだ。ギャルのくせに、謎に可愛い。礼儀正しいし、胸も大きいし……

 もうやめよう。虚しいだけだ。どう考えても、俺が悪い。ごめんなさい。

 トイレから出て、左を見ると、あの女が壁に寄り掛かっていた。俺は女と目を合わせないよう、手洗い場に移動した。その後、彼女は、こつこつとヒールを鳴らし、俺が使用した後のトイレに入っていった。

 素早く手を洗い、自分の席に急いだ。

 その最中ですら、「今、俺が使ったトイレにギャルがいるのか……」そんな言葉が頭を掠める。なんか、俺って最悪だ。また、自己嫌悪に陥ってしまう。何にも変わってないじゃん。俺は座ると、小さく頭を抱えた。


「すみません」

「はい!」

思わず、大きな声で答える。そこにいたのは、トイレから帰ってきたあのギャルだった。

「これ、違いますか。トイレに落ちてたんですけど」

派手なネイルがつけられた手には、俺のスマホが握られている。

「ああ。ありがとうございます」

差し出されたスマホを手に取ろうとした、その時だった。

「あ、あのもしかして」

「はい」

「『ウクレレ少女』見てましたか?」

 俺は彼女の意外な一言に、返事を忘れていた。

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