第11話 衝撃

「ちょっ、え、ん、え?」


 私、世界で一番大事で愛している推しから告白されました?


 されましたね。


 サラっと言われましたね。


 流石我が推し。


 カッコいい。


 って、関心している場合じゃない!


「冗談ですよね」


 夢だ、これは夢。


 幽霊が夢を見るのかは知らないんですが。


「夢じゃないよ。本気で言ってるよ」


 夢じゃありませんでした!


 またまた心を読まれてしまいました。


 推し、エスパー説が濃厚。


「和泉ちゃん、わかりやすすぎ。顔に全部出てるよ。全然幽霊っぽくないね」


 苦笑されました。


 そんなに顔に出てたのか。


 生まれて初めて知りました。


 もう死んでいますが。


「そんなことを言われても……え、本気なんですか。私、幽霊ですよ」


「うん、知ってる」


 おーん。


 嬉しい。


 昇天しそうなぐらい。


 しないけど。


 成仏する気配が一ミリもないけど。


「初めてライブ会場で見たとき、一目惚れしたんだ。その後握手会に来てくれて、短い時間だったけど確信した。私は貴女に恋に落ちてしまったって」


 真剣な表情で言われた。


 動くはずがない心臓がドクドクと高鳴っている気がする。


「貴女が幽霊となって現れたあの日。凄く後悔したんだ。『なんで生きているうちに告白しなかったんだろう』って。だから、もう二度と後悔したくない。貴女を手放したくない」


 熱烈な告白。


 どうしよう、顔を見ていられない。


 恥ずかしくって、嬉しくって。


 頭がパニック。


 こんな気持ち初めてだ。


「和泉ちゃん」


「はっ、はい」


 両手で頬を優しく包まれた……え。


「触れるんですか!?」


「うん。私はそういう体質だよ。幽霊みんなに触れられるわけじゃないから、和泉ちゃんにちゃんと触れられて安心した」


 目を細めて笑う鞠っち。


 可愛い。


 心が溶けてしまいそうになる。


「和泉ちゃん」


「……はい」


 再び名前を呼ばれる。


 推しに何度も名前を呼ばれるなんて狂喜乱舞事案なのだけれど、それよりも、あまりにも顔が近すぎて。


 死にそう。


 既に死亡済みですが。


「ずっと一緒にいてくれるかな」


 真剣な目。


 温かい手。


 私が幽霊でも構わないという彼女。


 一目惚れしてくれた彼女。


 真っすぐに愛を伝えてくれた、大切な人。


 私の答えは決まっている。


「鞠っち、私もね……一目惚れだったんだよ。生きていた間も死んでからも、ずっと貴女を愛してる」


 彼女はエスパーだから。


 言葉にしなくても伝わっただろう。


 私は、彼女が望む限り一生傍にいる。

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