第3話 成仏……あれ!?
ライブ中涙が止まらなかった。
これが最後の推しの姿になるなんて。
もっと推しに貢げばよかった。
もっと推しの記憶に残るような会話を握手会でしたらよかった。
もっと推しに愛を伝えればよかった。
後悔してもしきれない。
「鞠っちー!」
彼女の名前を声が枯れそうになりながら叫ぶ。
今までのライブの中で一番声を出した自信がある。
「SEVEN COLLARSでしたー。ありがとうございました!」
リーダーである鞠っちが手を振って頭を下げ、他のメンバーも頭を下げた。
「あーあ、終わっちゃった」
頬を伝う涙を拭う。
これでもう私はなんの未練もなくあの世へ逝けるだろう。
この後の握手会に並べないのが残念。
推しがステージ袖にはけ、ファンたちが私の横を通り過ぎていく。
「バイバイ、みんな」
スッと目を閉じた。
「……バイバイ」
ん?
「……お父さん、お母さん、今までありがとう」
あれ?
「……全然成仏しないんですけど!」
どういうこと。
私、まだやり残したことあるの?
嘘でしょ。
完全に成仏する流れだったじゃん。
「えー、マジか」
どうしよう。
なんか足がムズムズする。
念のために言っておくけど、水虫ではない。
早く歩け! って言われているみたい。
誰に命令されているのかはわかんないけど。
「行きますかあ」
誰かに操られているように感じる自分の足を動かし、私は残っていたファンの後ろをピッタリついて歩いたのだった。
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