第1幕 未練

第1話 生きて……ない?

 バチンと音がして目を開いた。


「あれ?」


 気づけばライブ会場にいた。


 周りには30人ほどのファン。


「私……」


 死んだはずだ。


 自分の身に起きたことを振り返る。


 なんか凄い衝撃を頭に受けて、血が視界に入って。


 痛いとか思う間もなく、死んだ。


 それなのに、


「なんでここにいるの?」


 意味がわからない。


 自分のカラダを確かめる。


 スーツは綺麗なまま。


 頭から血は流れていない。


「無傷じゃん」


 バッグはないけれど。


「なにが起こったの」


 奇跡的に一命を取り留めたのなら、病院にいるはず。


 ライブ会場にいるはずがない。


 もしかして。


 嫌な予感。


「あの」


 近くにいた、SEVEN COLLARSのグッズTシャツを身につけた男性に声をかける。


「あの」


 無視。


 聞こえていないはずがない。


 大きな声で話しかけているんだもん。


 嫌な予感が確信に変わりそうになる。


「あのっ」


 他の人に声をかけても結果は同じ。


 誰も答えてくれないどころか、私を見てくれない。


「これって」


 もしかして、もしかしなくても。


「私、幽霊になちゃった?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る