第12話
「まず木の実を入れて、かき混ぜる……よし。次はミリア」
「うん。どうすれば良いの?」
「穴の水に魔力を注げないかな? 木や石とか他の物を入れないで魔力だけを入れるの」
「ふふふっ私は妖精よ? それくらいなら簡単にできるわっ!」
材料を入れてかき混ぜる。ここまではいつも通り。自慢じゃないけど大体失敗するか中途半端なアイテムができあがる。でも今、私の隣にはミリアがいるんだ。
不安は尽きないけど、やってみるしかないよね!
「それっ……!」
「っ……!」
私の足りない技量はミリアの魔力で補う。そうすれば上手くいく。そう信じたい!
ミリアの魔力のおかげで穴が光る。
「混ぜて、混ぜて……ええと、次は……っっ!」
どうしよう、かなり焦ってきたかもっ。杖を握る手の感覚がなくなってきた。肩に余計な力が入る、錬金術は繊細なものなんだから、こんな風に焦ったら完成されるアイテムの品質に大きく関わってきてしまう。それでも私は心の中の恐怖と緊張に飲まれかけていた。
「リリス」
「あっ……ミリア……?」
ミリアが、宙で飛びながら私の腕を、その小さな手で添えていた。ミリアの小さな妖精の手から温かさを感じる。
「大丈夫よ。私が傍にいるわ。だからね? 一緒に最後までやるわよ?」
「……っ……うん!」
ミリアに触れられている手の部分から、失っていた感覚が徐々に戻ってくるのが分かる。これもミリアの魔力なのかな
いいや、今はなんでも良いよっ。ポーションを完成させるんだっ
「最後に、中心から外側に広がるように混ぜれば……!」
「うひゃっ!?」
私たちが混ぜていた穴が光った。食い入るように見つめていたスイがびっくりして声を出す。
「……できたっ」
突然の光がスイを驚かせた後、穴には濃い青色の水が残った。
私はそれを、森の中で既に飲み干していた後の水筒に入れる
「リリス。それって……」
「まさか……」
「うん……ミリア、スイ! 完成したよ!」
水筒を手に掲げる。信じられないよ。私っ……やったんだ!
「水質を上げるポーションの完成! これで川も元踊りだよ!」
「やったぁー!」
「わわわっ危ないよミリアっ!?」
「別に良いじゃない!」
ミリアが私の胸に飛び込んできた。よく見ると、目の端に涙が浮かんでいる。
「喜ぶのはまだってのは分かってるわよっ。でも……えへへっリリスと一緒に作業しちゃった! それも大成功なんて!」
「あはは……落ち着いてよミリア」
「私が手伝うまで手が震えまくりだったくせに、何言ってるのかしらっふふふっ!」
ミリアは頬を赤くして、私に向かって微笑んでいる。
そういや、私の錬金術でここまで喜んでくれる人は初めてかもしれない。いつも失敗ばっかりだったし、大した物は作れなかったもんね
「み、ミリア、その……近いよ」
「えっ……!? えへへっ。今更すぎるよぉ」
「ほらお二人さん。喜ぶのは後にしようよ。早くそのポーションで川を元に戻してよっ」
「ああっと、そうだったね!」
「行くわよリリスっ! 私たちの錬金術のお披露目よ!」
「うんっ!」
私はミリアに手を引かれるまま、川の水流のすぐ近くまで戻ることにした
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