第11話
「ほいっと……最後に少し混ぜてっと! 完成だよっ」
「完成? これで?」
「これがその、あなたが言った準備?」
ちょっとした穴ぼこにスイの水を入れて、私のポーチに入っていた魔石を入れた
魔石は水の中ですぐに崩れてなくなった。妖精二人が困惑する通り、これで準備は完了だ
「一応できたよ。不安はあるけど」
「不安あるんじゃない……これってどういうものなの?」
「本当に大丈夫なのかしら……でも、私はリリスについていくからね」
「ありがとミリア。それでこれはね、即席の錬金術用の釜なの」
私は若干光っているその水入り穴ぼこを指さした。それでも二人は首をかしげるだけだ
「錬金術は魔力のこもった釜が必要なの、魔力入りの水が詰まった釜ね。この中に材料を入れて混ぜたり煮たりすればアイテムができあがるの」
「なるほどね。でもこれは……」
「うん。さすがにこの川どころか妖精の集落に大きな釜なんてないだろうから、その代用がこの穴」
石で一応塞いではいるけど、完璧じゃないみたいだ。ほんの少しずつだけど水が漏れている。
「ま、まあ分かったわ。それで次はどうするの?」
「釜ができたら材料だよ! ミリアはあの赤い花を、スイはあそこの白い花を持ってきてくれる? 私は他の材料を用意するからっ」
「わっ分かった。ほらスイ! 行くわよ?」
「え、ええ……」
私たちは手分けして材料を揃えた。妖精たちが持ってきた赤い花と白い花、そして私が拾った青い木の実。これで、道具に続いて材料の準備が終わった。
「ありがとう二人ともっこれで……」
「リリスが言った。水質を上げるポーションが作れるのねっ?」
「スイ。あなたまたがっついて……でも、私も焦ってきちゃったわ」
「これなら。理論上はできるよ。理論上はね」
私はそう言ってうつむいた。今から作ろうとしているポーションは、並みの錬金術師なら簡単に作れる物だ。なんなら大量生産されて店先にも水回りの洗剤として並んでいるくらいのアイテム。でも私は並みの錬金術師以下だ。
「……不安なのね? リリス」
「あはは。ミリアにはお見通しなんだね」
「当然よ。初めて会ったときの氷の爆弾にはすごいと思ったけど、あれ以上の物が普通だし、あなたはそれ以下なのよね?」
「……うん」
事実だけど、こうやって改めて言われると辛いなぁ。
杖を抱くように握りしめる私に、ミリアは優しく言った
「大丈夫よ、私が協力するから。錬金術のことはよく知らないけど、私の魔力を使えばなんとかなるわよ」
「でも……」
「リリスにそんな顔してほしくないわ。ほら、指示を出して?」
「……分かった! ありがとうっミリアっ!」
そうだよねっやる前から諦めていたんじゃダメだよね! もしもダメだったならその時は別の方法を考えれば良いんだ!
私とミリアは無言でうなずいた後、穴ぼこの前に立った。
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