第9話
濁った川を元に戻す。か……
さっきまでミリアをおちょくっていた時とは全然違う雰囲気で、スイは私に頼んできた。
私はしゃがんで、杖を川の中に入れた。そして引き上げると杖の先に紫色の土と水が杖に付着している。
「……確かに、これは普通の汚れじゃないね」
「魔物の死体のせいよ。死体そのものはとっくに水流で分解されてなくなっただろうけど、毒だけはしぶとく残ってるみたいなの」
つまり、川に残った毒をどうにかするってことだよね
私は立ち上がってぐるっと周りを見た
「……どう、かしら?」
「リリス。こんなんでもスイは私の友達なの、助けてあげられないかしら?」
「こんなのって、あなたねぇ……」
ミリアの軽口にスイはジト目になって唇を尖らせる、でもまたすぐに元の真面目な表情に戻った。
「……できなくは、ないと思うよ」
「本当!?」
「うん。でもいくつか問題があって……」
「何よ、遠慮せずに言いなさい?」
ミリアとスイが揃って私の顔に接近して、私の次の言葉を待っている。
……ミリアの言う通り、言い渋っていてもしょうがないよね
「水質を上げるポーション。それを川に使えば毒は消えて、川は元に戻ると思うんだ。でも、準備が必要なの」
「ポーション……! それってどんな準備が必要なの?」
「落ち着きなさいスイ。準備が必要なら私たちに言いなさいって」
スイは興奮してきたのか、背中の青い羽をパタパタとはためかせて前のめりになって私の話を聞いている
うう、無駄な期待をさせることになりそうで心苦しいなぁ
「錬金術は道具と材料が必要なの。材料はこの川の花を使えば良いんだけどね?」
「道具がないの?」
「うん。私の家に行けばあるけど、今から戻るのもなぁ……」
近場にある森とはいえ、捨て身で王国にある自宅からやってきたんだ。今更道具のために自宅に戻るのは危険だよ。無事に戻れるのか怪しいし戻れたとしてもこの妖精の集落まで再びやってこれるのかも怪しい。というか絶対ムリだよ。ミリアの案内でようやく来れたような場所なんだから
「……その道具も、この川にあるものでどうにかできないの?」
「ちょっとスイ。それはいくらなんでも都合が良すぎないかしら」
「そうだね……とりあえずやってみるよ」
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