第8話
「ごちそうさまミリア。助かったよ」
「どういたしまして。お腹は膨れたーって、その顔じゃあ聞くまでもないわね」
「うんっ、本当に美味しかったよ」
「うっ! そっそれは良かったわ! ……また用意してあげるから」
私は食後の紅茶を飲み終わって、私にくっついて遊んでいた妖精たちとも別れた
あー……お腹一杯になった安心感かな。今更にして目が覚めたよ
スイは、その私たちの様子を腕を組んで見ていた
「リリス。あなたは錬金術師って言うやつよね」
「そうだよ。まあ腕前はそんなに高くはないんだけどね」
「本当に? あの氷爆弾はすごかったのに?」
「ミリアはあのアイテムが気に入ったの……?」
目を輝かせるミリアは置いといて。スイは何か考えているみたいだ
少し間を置いたあと、真剣な目つきで私を見つめた
「あなたに見てほしいのがあるんだよ。ちょっと着いてきて」
「ん。どう思う?」
「これって……」
私はスイに連れられて集落の、少し一目……というか妖精目の少ないところにやってきた
もちろんミリアも一緒だ。私の肩に座って離れようとはしない
「スイ。あなたこれをどうにかしようって言うの?」
「そうよ。錬金術師ってのはよく知らないけど、何とかしてくれそうだし」
「うーん……」
私たちは川辺に来ていた。人間が水浴びをするにはちょっと狭い、でも妖精にとっては充分な大きさなんだろうね。森の中だけあって空気は綺麗で木漏れ日も入ってくる。ガサガサと木の葉が揺れる音と水の流れる音が、張り詰めた心を収めてくれる。
でも、少し違和感があった。
「こんだけ綺麗な場所なら、魚がもっといそうなものだよね」
「ふーん。やっぱり私の見立ては間違ってなかったのかしら」
川の中は少し濁っていて魚があまり見当たらない。空気も木々も木漏れ日も、何もかも綺麗なのに、川の水だけは綺麗ではなかった。
「スイ。このために私を連れてきたの?」
「そうよ」
スイは腕を軽く組んでため息をついた。この子も顔が良い……あっ痛い! 何するのさ耳引っ張らないでよミリアっ!?
「私は水の妖精なの。だから水の状態については敏感で良く分かるのよ。しばらく前に川に落ちてきた魔物の死体のせいで水が汚れて、この様よ」
スイは青い羽をパタパタを動かしてうつむいた。そして勢いよく私の方に顔を向けた
「お願い。この濁った川をどうにかできない? ミリアの話を聞く限りだと錬金術師って何でもできるみたいじゃない」
「何でもは言いすぎだよっ! それに私は錬金術師だけど腕前は高くないし……」
「それでも、何とかしてほしいの」
「うぅーん……」
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