第7話

「あーっ! 生き返るぅー!」

「よく食べるわね……」


ミリアにちょっとした広場に連れられた私は、草むらに座ってご飯を食べることにした。机とか椅子とかはあるっちゃあるんだけど、全部妖精サイズだから私には小さすぎて合わなかったんだ。

そして、私はミリアが持ってきてくれた物を次々と口の中に詰めていく。


「んぐっんぐっ……ぷはっ! もぐもぐ……」

「少しは落ち着きなさいって。誰も取ったりはしない……と思うから。うん。私が見張っててあげるから」

「ふぁーいっ」

「飲み込んでから喋りなさいっ」


野菜。パン。ジャム。フルーツ!

未開の森の人間以外の集落で食べる食事だからか、私が初めて知る味ばっかりだけど。空腹に空腹を重ねてきた私には味の違いなんて関係ないっ!


「お姉さん。すごい食べっぷりだねー!」

「見てたらあーしもお腹空いてきちゃった。一緒に食べよーっと」

「えへへ。お姉さんの膝の上もーらいっ」


いきなり集落の真ん中で豪快な食事を始めた私は相当目立っているらしい

妖精たちが次々と集まってきて、私に身体をくっ付けて木の実を食べ始めた……あっこら! そのジャムパンは私のだからねっ!


「いいの? あれほったらかしで。取られちゃうわよ?」

「大丈夫よ。リリスとは出会って間もないけれど、たくましい子だから」

「へぇー信頼してるのね。正妻の余裕ってやつ?」

「なっ! ちっ! そういう訳じゃ……! というか取られちゃうの意味ちがくない!?」


私の頭の上をミリアとスイがじゃれあっている。

スイは私に興味を持ったのか、ここまで一緒に着いてきてしまった。いや、多分ミリアを心配しているんだと思う。友達が人間に騙されないかと危惧しているんだろうね。そんなつもりはないんだけど、今は何言っても逆効果だろうし、行動で信用してもらうしかないか。



「……なるほどね。魔物に襲われているところをリリスに助けてもらったんだ」

「そういうこと。リリスは私の……お、恩人なんだからっ」

「ふふーん? 恩人止まり?」

「な、何よ……」


私がやっとありつけたご飯に夢中になっている間に、ミリアはスイに私との出会いについて話していた。

魔物に襲われたけど、私が錬金術師としての実力を発揮しまくって退けた! うん、間違ってはいないよ? 実力を見せたんだ。

私は少し余裕が出てきたので、余った木の実を妖精たちにあーんしている。やばい。餌付けしているみたいで庇護欲がどんどん湧いてくるよこれっ! 妖精ってかわいすぎない!?


「むー……」

「どっどうしたのミリア?」

「リリス。顔がだらしないわ」

「えー? そうかなっ」


ミリアが頬を膨らませながら私の肩に座った。妖精とはいえ三十センチはあるのでそれなりの重量はある。でも言ったら烈火のごとく怒りそうなので言わない。


「ねぇリリスっ。面白いことを教えてあげる。恋をした妖精って羽がピンク色に……」

「あぁああなた少し黙ってなさいぃぃ!」

「え? そうなの? ミリアっ」

「今こっち見ないでよバカぁ! 嘘だから! そんなの嘘だからぁ!」

「おーもしろーいっ。恋とは無縁だったあのミリアがこんな風になるなんて、恋ってすごいねぃ」


ミリアはまた顔を赤くして両腕を振り回して、スイを追いかけ始めた。

私を中心にぐるぐると円を描くように回る二人に、私は状況が掴めないまま、すっかり懐かれた妖精たちの頭を順番に撫でながら、食後の紅茶を楽しんだ。

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