第5話

「妖精を恋に落とすなんて……すごいことなのよ?」


ミリアの唇はとっても小さくて、それでもちゃんとミリアの熱は伝わってきた

急なキスに何もできずに私はただ固まっていた


「リリス……っ……」

「っ……」


ただ唇を押し付けてくるだけの不器用なキス。でも私だってキスなんてしたことないから正しいキスなんて分かんない。しかも女同士だし。

でも赤くなったミリアを見ると心臓が跳ねるのが分かった。

……妖精の魔法なのかな。ヘンなの。


「ぷはっ……えへへっ……」

「ミリア……?」


唇を離したミリアはもじもじしながら、私に背を向けた。


「綺麗……」

「ひゃうっ!?」


ミリアの背中を見た私は、思ったことをそのまま言ってしまった

ミリアは空中で飛んだまま髪と羽を上にピンと立てて硬直した


「いっ……いいいいいい今なんて……!!」

「えっ? ミリアの羽って綺麗よね。透き通っていて大きくて、私は好きだよ」

「ううう……そんなの言われたら私っ、どうすれば良いのか分かんなくなるじゃない……!」


ミリアは耳まで真っ赤になった後、ため息をついた


「……リリスのおかげで私は助かったの。だからお礼がしたいわ」

「お礼?」

「ええ。お腹が空いているんでしょ? ごちそうしてあげるからついてらっしゃい」

「ご飯!?」


ぱぁぁっと私の中が明るくなった。良かった……! 今日は魔物がうじゃうじゃいる川で魚を釣らなくても良いんだ!


「行くよ行くっ! ミリア大好きぃ!」

「うっ……妖精の私が言うのもなんだけど、あなたよく今まで生きてこられたわね……」


もはや何度目か分からない呆れ顔を見せたミリアの後を、私はついていった

キスはびっくりしたけど、今はご飯ご飯ーっ!

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