第4話

「何ニヤニヤしてるの?」

「いっいや何でもないよっ」


やば。褒められたからつい調子に乗って、私が錬金術師として成功して王国中に名前が知れ渡った後のことを想像してしまった。

アトリエに殺到する注文客。ブランド化する私の名前。弟子入りを志願する子たちの長蛇の列。王族や貴族のパーティーに招待されて何かオシャレな名前の料理をお腹いっぱいに食べる……! そしてその料理を自宅でも食べられるように、用意しておいた入れ物に料理を入れて持ち帰って次の日のご飯にする私っ……!

ぐぅ


「どうしたのよ? ニヤニヤしたと思ったらお腹を押さえてぐったりしちゃって」


腰に手を当ててミリアが呆れた顔で私を見た


「お腹すいたぁ……」

「……え?」

「実は私、今日何も食べてないんだ」


朝起きて、もそもそと背中を丸めながら食糧庫を開けたらカラッポだった


「そういった事実を重く受け止め、わたくしは森まで赴きました」

「なんでそんなに堅苦しく言ったのよ……」

「うぅ。ヘンに固い言い回ししたら余計お腹減ったぁ……さっきのクモ頑張って追いかけたら捕まえられるかな……」

「やっやめてよ何する気よ!? あんなの絶対食べられないって! あーもう! 分かったよぉ!」


ミリアは私にさらに接近してきて……


「助けてくれてありがとう。私、あのクモに食われそうになってたの」

「えっ……それって……」

「その続き言ったら怒るからね? 私は妖精だから! 食料扱いしたら怒るからね!?」

「あっはい……」

「そうやって露骨に残念そうにされるのも腹立つわね……とにかく!」


ごほん。とミリアは咳払いをして私に向き合った


「さっきのリリス。とても素敵だった。その、ね? 口で言うのは恥ずかしいから……行動で示す……から」

「え? どういうこと? ……えっ!?」

「っ……」


ミリアは頬を染めて、私の顔に限界まで近づいてきて。

唇と唇が、重なった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る