ラドラ3

          真実


「さてと、ここら辺でいいか。」

 お姫様抱っこで少し行ったところ、フード男は近くの丘で俺を下ろしてそう言った。

 ここら辺に隠し拠点でもあるのかね?

「何で不思議そうな顔してるんだ?お前は俺の質問に中立だ、と言ったんだから俺らの拠点に行くわけにはいかないし、あそこは敵の本拠地だ、ここがちょうどいいだろう?」

 そう言われると頷いてしまう。でもちょっと見てみたかったな。隠し拠点的なやつ。

「俺の名前は戸田寛大…いやカンタ トダか。チャンスをくれてありがとうごさいます。」

「はいよ、じゃあこっちも、俺はマルトだ。"静寂"なんて呼ばれてる。そっちの方が通りがいいから覚えるなら静寂で頼むわ。」

 中二病…って言っても通じないんだろうなぁ。

「それじゃあ静寂さん、俺の話を聞いてほしい。」

 そして、俺は経緯を話した。気づいたら学校のクラスメート達と共にあの場にいたこと、あの黒髪ロン毛に聞いた話も。

「ふぅん、事情はわかった。何となくだけど。」

 静寂さん達の世界にも学校があるらしく説明が省けて助かった。

「しかし、あの化け物がラドラ王国の王…ねぇ。大きく出たもんだ。」

 少し考えこんでしまった静寂さんに目で続きを促すように見つめる。

「あぁ、悪いちゃんと話すからそんな目で見るな。

 まずあの国は旧独立国イルって所だ。」

「ラドラ王国じゃなくて?」

「ラドラってのはこの大陸の名前さ。それでなんとなくあの化け物の目的はわかった。やっぱり拾って正解だったな。」

 静寂さんが着ているローブのフードから覗く口角が少し上がっているのが見えた。

「目的ってもしかして大陸の支配とか…ですか?」

 俺は伺うように聞く。しゃーないやん。言っちゃ駄目なこととかあるかもしれんし、知らんもん。

「いや少し違う、ちょっと長くなるぞ?

 独立国イルはな、召喚に長けた国だった。六十年程前にイルが召喚を行い一人の人間が召喚された。その頃は、魔物っていう化け物が暴れていてな、まぁ色々あってその人間が召喚された十年後に魔物をこの大陸から消したんだ、文字通りしかもたった一人で。

 しかしその後、周辺国家がイルを警戒し出した。そりゃそうだろうな、今まで先祖代々悩まされてきた存在をたった十年で滅ぼした男がそのイルの王女との婚約を発表したからだ。イルがもし戦争に乗り出したならば、と疑念が疑念を呼んで、イル以外のラドラ大陸の六割の国がイルに討伐隊を派遣したのさ。イルの人口約一万二千に対して討伐隊は約六十万多くて百万なんて話もあった。

 そしてイルは滅んだ、けど一番殺したかった存在ははどこにもいなかったんだとさ。そして今でも復讐を狙っている…と言い伝えられてる程なわけ。」

 その召喚されたやつチートだなぁ。やばすぎやろ。

「じゃあつまり…あの偽国王はその…復讐を狙っている張本人かもしれない…ってことですか?」

「さっきの話とかもろもろ合わせたらそうかもな。」

「そして静寂さんたちはその張本人を…倒すために行動しているってわけですね?」

「あぁ。そうだ。」

「少し可哀想…ですね。」

 いやー俺だったら…いや俺でもキレるわ。これ。

「だろうな、これは俺たちの罪だ。英雄を信頼できなかったことのな…

 だが、だからといって俺達が死ぬことに対して、当たり前だが納得はできない。

 お前はどうしたい?本当に何も知らなかったようだし、人があまりいない場所の紹介でもしてやろうか?

 さっきも言ったようにこれは俺たちの罪だ、関係ないやつを巻き込む気はない。」

 はい、そうですか。は無いよなぁーそりゃ。

 そして少し悩んだ。逃げもありだ。この申し出はとてもありがたい、が…

「いいえ、俺も召喚された以上この世界の人間です。俺もあの偽国王を止めたいです。」

 クラスメート達も少し心配だし。友達いないけ

「わかった。少し遠いが俺たちの拠点に案内しよう。」







 拠点はあの偽国王がいた城を囲んでいる森の中にある砦らしい。

 歩いている途中、一つ聞いてみた。

「そういえばあの偽国王イドラ·ペセドなんて名乗ってましたけど、あれの本名知ってますか?」

「いや知らん。それは伝わってないからな、基本的に化け物とか復讐者が定番だな。」

 つまり俺たちと同じ日本人かどうかも分からないのか。まぁ、漫画とかアニメの転生者とかが全員日本人なのは創作だからで、この世界の人も同じ日本人とは限らないか。

 静寂さんに森の歩き方を教わりながら、何も考えずに進む。これ以上考えてもしょうがないし、何より拠点までの距離を聞いてそれどころではいられなくなったというのが大半である。

 深い森が周りになかった身としては、キツすぎる。

 運動、続けとけばよかったかなぁ……

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