ラドラ2

          急展開


 結局眠れず、布団の中で考え事をしていた時、ふと思いついた。【状態異常無効】のお陰かはさておき、疲労がないのだ。自慢じゃないがこういう何かあった時、俺はすぐ疲れて眠ってしまう。

 ならばこの部屋の外を見て回るのもありなのでは?と。ここがどんな造りかも気になるし疲労に関してもちゃんと確認しておきたい。なんせ疲労を感じないとかめっちゃ良いじゃん!……まぁゲームも漫画も無いから使い道があるか知らんけど。

 音はなるべく立てずに行こう。あの王様なんか怒らせたら怖そうだし。





 灯りがほとんど無いせいで月明かりを頼りに壁づたいに歩いていく。石造りの壁だ。今、冷静になって歩いていくと、何となく違和感を感じる。

 風がある?

 少し冷たい吹き抜けるような風を感じる。が、この建築様式や西洋の建築に詳しくもない俺が思ったことだし、換気のために窓が開いているならそれまでだ。気にするだけ無駄か。

 いやーそれにしても、もしスキルで透明になれたら今すぐ女子部屋に行くのになぁ。……冗談だけどね。

そりゃ女子に興味はあるが、そこまでのリスクを犯してまで見たいかと聞かれると微妙だな。

 俺はあくまで犯罪者ではなく健全な男子高校生なのさ!







 暫く歩いていくと一つの部屋の灯りがついていた。声が聞こえ、何かを喋っているようだった。こういう時こそ情報は大事だ。そこの人には悪いが盗み聞きをさせて貰おう。自分に冷静さが無くなっていることにも気づかずその声の先を覗く。



「やっとだ。何年もかかった。これで復讐ができる。フハッハハハ。ここで少しずつあのガキどもも俺の手駒にヒヒッ。…ふぅ、駄目だな国王のフリをしているのにこんなんじゃすぐバレちまう。」


 片手で顔を触ると、突然姿が変わる。生きているのか、もうそうではないのかも分からない姿をした何かがそこにはいた。


「復讐?手駒?……国王の…フリ!?」

 思わず声が出てしまった。汗が流れる。だが、もう出てしまったものはとり消せない。恐る恐る、姿が変わった時に茶髪ロン毛から黒髪ロン毛になった何かを見る。

?……気づいていない?なんで……

 不思議に思っていると肩に何かが触れる。

「ぴぎっ」

 変な声が出てしまった。流石に不味い。と、思い問題のある方にもう一度目を向ける。………まだ自分語りをしている?

「こっちは無視かぁ。」

 緊張感のない声が後ろから聞こえた。振り返る、今までで一番の恐怖を感じながら。

 目の前にはフードを被った、声的には男だろうか?

 俺は恐怖で何も言えないでいた。

「あぁいいよ、俺が説明するから。」

 フード男が自分の口に人差し指をあてながら言う。

「今は手短に、情報も絞るけどね。

 まず一つ目、なんであの化け物に気づかれてないの?はね、俺のスキルね。詳細はナイショ。

 次に二つ目、俺はあの化け物の敵側。今は潜入中。手慣れてるだろぉ。

 さて、俺が言える情報はここまで、ここで質問です!


        "お前は敵か?"」


 冷や汗が流れる。こんな所で人生終了とか冗談じゃない。

 だから、

「お、俺は…何も知らない!」

 自分の全てをぶつける。ここで取り繕ってもなんの意味もないことぐらい理解できる。……一呼吸

「俺に…この世界を……教えてくれ!

 何がどうなってるのか俺は知りたい!」

 静寂の中で俺の荒い息だけが耳に入る。

 何でなんも言わないのぉ!怖いってぇ!

 暫くして沈黙は破れる。

「いいねぇ、これは、"良い物"拾ったかもなぁ」

 雰囲気が柔らかくなったフード男が言った。

乗り切った!

 ほぅ、と安堵の息を吐いた。

 あっぶねぇー!心臓ドッキドキだわ!

「じゃあまずは、お前を連れてくか。」

 そう言うと、フード男は俺をお姫様抱っこをすると建物の外に一瞬で出ていた。

 お姫様抱っこなんて恥ずかしくて、本当なら、やめてほしいがフード男の手際が良すぎてそんなこと気にならないくらいだった。

 逆にちょっと良い匂いがするのが気になった。

 何でだ!

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