第15話 発想法(しぼりだす)2



 ところで、それでも書きたいものがないとき。または、このキャラが書きたいという気持ちはあるんだけど、そのキャラのストーリーのネタがないとき。


 さて、ここでいよいよ、しぼりだす発想法です。

 僕の場合、このときにできるのは、連作短編集。しかも、好きなシリーズのキャラクターを使う。この二点にしぼられます。

 まあ、そもそも、上記のふんわり手さぐり状態で、よっぽどのことがなければ、次に書く話は決まるので。


 しかし、今回のように、ワレスさん限定で連作短編集を書く、書きたい。全体のサブタイトルが決まった。

『ワレスと十二人の恋人』

 つまり、短編十二話で一話に一人、別々の恋人を書く、となったとき。

 これの発想のおおもとは、サブタイの『ワレスと十二人の恋人』がある日とつぜん、ふっと浮かんできた。それだけ。中身はない。


 そんなとき、利用するのは、妄想コンテストのお題。いいですよ。妄コンのお題は。二週間に一度あるので、過去回まで戻ってテーマを拝借すれば、十二個くらいの短編はすぐ思いつきます。とくに、大好きなキャラがいれば、その人にアレコレしてもらうシチュエーションを考えるだけで、ボロボロ、ネタが出てくる。


 たとえば、今回十二恋人でネタ出しに使ったメモ帳をちょっと披露しましょう。タイトルはじっさいに書いたときにつけたもの。また、これ用ではなく、もっと前に妄想しますコンテーマから思いついたネタもあり。


『アンシニカの瞳』

 宝石店で盗みを目撃。犯人の女「うちは以前、裕福で、この髪飾り(ブローチでもなんでもいい)はもとはお母さまのものだったのです。母が死にかけているので、どうしてもとりもどしてあげたくて…」同情して宝石を買ってやる。が、じつは女が嘘をついていることには気づいていた。宝石に家紋が入っていて、それは女とは無縁のものだったから。性悪女にだまされた…と見せかけて、その裏に何やら事件が。済


 これは、かなり長文でくわしく書きだしてあるほう。

 もう冒頭2000字は約束されてますよね。

 たぶん、妄コンの『騙された!』から考えついたネタですね。


 次。


『魔女イネス』

 魔女だとウワサのある未亡人。


 これだけ。これだけですよ?

 一行じゃん!

 短すぎて、何から発想したのかさえ今となってはわからない。


 たぶん、最初は魔女だとウワサの未亡人の屋敷に一泊することになり、殺人事件が……? みたいなシチュエーションを妄想してたんだと思う。けっきょく、どうしても恋人がらみの話にしないといけなかったため、ワレスさんの宿命である『愛する人が必ず死ぬ』という設定にかけて、全体の流れを作るけっこう重要な話にできました。


 次。


『迷いの森』

 ジェイムズと二人で旅行中。道に迷う話。人里離れた街道が、とつぜん左右、ふたまたに別れる。正しい道がどっちなのかわからない。なんなら片方は森かなんかに向かう道で、天国と地獄、みたいなシチュエーション。


 一冊をまとめるためのラストの話にするため、ジェイムズと二人旅はちょうどよかったですね。しかも道が分岐してるし、いろいろ盛りこめる。二手にわけて、ワレスさん、ジェイムズが別々に体験することを交互に書いていきました。


 これは、妄コン『道』から発想してます。

 これなんかシンプルなお題なので、ほかにも何個か思いつけそう。


 たとえば、ワレスさんがこのテーマで遭遇したら、おもしろそうなシチュエーション。


 道のまんなかに木箱(この時代ならダンボールがない)が落ちてる。なかには子猫。または子犬。すて猫だ。無視しようとするワレスだが、じつはこの猫がとんでもない高貴な人の飼い猫で……?


 はい。たった今、考えました。もうね。ワレスさんが主役で、そこになんらかのシチュエーションがあれば、ネタは無限に湧いてきます。これを一話に仕上げるのは、じっさいに書きながらになるわけだけど、ネタ一つあれば、短編一話ぶんにひろげることはわけないので。とにかく、最初のネタ出しが肝心。1からの100に育てるより、0から1を生みだすのが大変。

 書き手なら経験則で納得できるのではないでしょうか?


 ただ、これも、キャラクターあってこそですよね。この人なら、こういうときこうするっていう行動パターンがしっかり、できてる人。


 これを持ってる作者さんは強いと思います。


 もちろん、テーマ付きのイベントからお題をお借りして短編を考えることじたいは、キャラクターがなくてもできます。ただ、キャラクターがあれば、妄想するのが容易ってだけです。


 なんなら、テーマじたいを自分で作ってもいいですしね。てきとうな単語を一つ用意するだけ。


 まあ、僕はこんな感じでしぼりだしてます。

 なんのネタもないとこから、お題でしぼりだし、それをもとに書きながら、ストーリーにひろげていく。自分で動いてくれるキャラが重要。


 そういえば、昨日だったか、カクヨムの自主企画で、書くときに映像が浮かんでくる派なのか、文章で浮かぶ派なのか? というのがありました。


 僕は完全に映像派ですね。映画やアニメのように動画で見えます。もちろん、カラー。

 自分は見える映像を文章に落としこんでるだけ、という人。けっこう近況ノートで見かけますよね。

 映像で見えることがパンツァーであることと関連があるのかなぁ?


 発想法にもなんとなく関係してるんじゃないかと思わなくもない。

 僕はあくまで感覚的に発想し、小説を書いていくタイプ。

 理詰めに仕上げていく人は発想法からして異なるんでしょうね。


 なので、この発想法はあくまで、僕のやりかたです。感覚で書いているパンツァーの人には参考になるかもしれません。



 ※今回でほんとに終わりだと思います。たぶん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る