第12話 発想法(パクりはダメだ)1



 発想法。

 みなさん、どこから発想してますか? まあ、たいていの人は急に降ってくるんだと思いますけどね。俗に言うひらめきですね。


 本を読んでるとき、マンガを読んでるとき、テレビを見てるとき、音楽を聴いてるとき、なんなら雑踏を歩いてるとき、掃除中、運転中、テストの勉強中、仕事中など、何かしらをやってるとき、あるいは寝起きにとつぜんとか。

 何かしらの刺激を受けて、それがモヤモヤと高まり「あっ、こんな話、書いてみたい」と急にひらめく。

 それが、発想。


 ただ、人によっては、ひらめきから得るのではなく、脳みそ駆使して、考えて作る場合もある。たとえば、三題噺とかです。車、赤ん坊、ピストルの三つを使って短編を一つ書いてみよう、とか。そういうのですね。お題のある短編イベントなんかも、どっちかっていうと、この考えて作るほうでしょう。妄コンとか、カクヨムでも5分シリーズがたまに募集されますよね。


 一回完結させたのに、急にまだ書く気になったのは、よく聞く「書きたいけどネタがない」問題と、「パクりはダメだよ」問題ですね。近い期間にたまたま、その二つを創作論で読んだので。


 ネタがないと、パクる人がいる、は、じつは表裏一体の関係ですよね。ネタがない、でもチヤホヤされたい、ネタがないけど賞とりたい、とかの理由でパクるわけだし。


 じっさいに何度もパクられてる経験者からしてみれば、ほとんどのパクりは「ネタがないから、つねにまわりを物色してる」系の人です。


 次に多いのが、「〇〇みたいな話が書きたい!」という好きな話へのいわゆる『オマージュ』ただし、本人がまだ未熟なので、完全なパクりになってしまってることに気づけてない。

 あと、賞の有力候補をつぶすために、わざとかぶせてきた人もいたし、前述のごとく、無意識パクりをしてくる人もいた。が、この二つは少数だと思う。


 オマージュ系パクりさんは、そのうち成長して、もっと自分らしさを追求するときが、いつか必ず来ると思う。そこまで来れば、自分が前にしてたのはパクりだったなと気づくはず。気づいてほしい。むしろ、気づかない人は永遠にそこから成長しないのかも。


 よって、一番やっかいなのが、マネできる作品をつねに物色して、あさってる人。本人は自覚を持ってやっている。こういう人たちのパクりのやりかたは、設定を一部とかではない。あらすじ、展開、場面の演出のしかた、キャラ造形、世界観、タイトル、キャッチコピーまで盗んでいく。そして、オチだけ真逆に変える。

 web上で、このやりかたを教えてる人がいるらしい。

「小説なんか、パクればいくらでも書ける。こんなふうにパクればいい」ってぐあいに。


 ……あっ、この説明しだしたら長くなるな。

 絶対、エピソード一つぶん、パクり問題になってしまう。


 ま、いいか? やっちゃう?

 パクり問題。やっちゃう?


 そう。この方法、どうも教えてる人がいるらしいのだ。以前、カクヨム上でも、パクりを勧める創作論を書いてる人がいた。僕はその創作論、読んでないんだが、近況ノートで自作のパクり論について語ってる人がいたから、「そんなの書いてるんだ」と思ったことがある。


 なんか、YouTubeで、小説の書きかた伝授してる人のなかの誰かが提唱した方法らしい。(その近況ノートにそれらしきことが書いてあったので、そのように推論した)


 ただね。この近況ノートによれば、「ほんとのパクりはあかんよ……」なのである。

 つまり、この人は盗作を推奨してるわけでなく、「このラインまでなら、パクりにはならんよ。作品作りの参照にできる」という持論を展開してるわけです。


 テンプレのテンプレ部分はパクってもいい——という。


 これに近い発想法を別の人も近況ノートに書いてた。ネタがないときは、じっさいに売れてる作品を参考にするとよいぞ、という。


 この第二の人、Bさんとしときましょう。Bさんが近況ノートに書いてた方法論は、たとえば、ドラ〇〇んを使わせてもらおう。主役のドジな少年。未来から来たお助けロボット。主役の好きな女の子。乱暴ないじめっこ。いじめっこに追随するイヤミな金持ち少年。この図式は売れる要素を秘めてるので、このままの人物関係をラブコメにあてはめるのだ、みたいなことを言われてた。


 主役はそのまま、冴えない男子高校生。未来から来た美少女型アンドロイド。NTRヒロイン。寝とるいじめっこ。友達のふりしてイヤミな裏切り少年……みたいな感じに転換されてたのかな?


 ほら、こうすれば、もう原形はとどめてない。オリジナルとして世に出せます。

 誰にも、元話が何か推察できないくらい煮詰めれば、それでよし。


 という方法論でした。

 なるほどねぇと、感心したものです。というか、この方法なら、僕も何度かやってるよ。ここまで完全に模倣からの出発ではないけど。好きなシチュエーションを自分好みに料理していく方法ですね。


 手法としては、オマージュ系のパクりですよね。ただ、自分のなかでまったく違う形に変えるという一手間がかかってるかどうか。それによって、パクりではなく、オリジナルになる。


 この違いがどうしてもわからない人たちがいる。オマージュです、と言って、まんま似たような話をポンと持ってくる。でも、それはパクりですから……。


 第一のノートの人Aさん。この人が主張してたのも、けっきょくはソレなんだけど、そこを理解してない人がいる。


 Aさんいわく「マネしていいのは、みんなが使ってるテンプレの部分だけ。その作品のオリジナルの部分をとったらダメだ。それをしちゃいけないってことくらい、なんでわかんないのか?」と。


 つまり、昨今、タイムリープはあたりまえのテンプレになった。いろんなマンガや小説やドラマで見た。だから、タイムリープを題材に新作を書くのは、もうパクりにはならない。


 だけど、じゃあと言って、タイムリープ+ヤンキーの抗争で書くとなったら、それは東リべのパクりじゃないですか? オリジナルの著作権を侵害してるでしょ? って問題です。この違い、わかりますよね?


 タイムリープならタイムリープで、ほかにいろいろ設定は考えられるじゃないですか。水着美少女大会+タイムリープのラブコメとか。ホラー+タイムリープの回避できない死亡フラグとか。受験+タイムリープのお受験青春物とか。タイムリープに足すものが何か、そこがオリジナルなわけです。


 あるていど書いてて、自分で発想することになれてる人なら、あたりまえにわかるこの境界だと思うんだけど、たぶん、書き始めてまもない人にはわからない。

 先達に「パクりやってもいいよ。こういうふうにやればいい」と言われれば、まんま、ストーリー展開からシチュエーションからキャラ設定、世界観まで盗んでいいと思うのでは?

 パクっていいっていう言いかたが、すでにダメなんだよね。


 パクりは絶対にダメです。著作権法に違反します。犯罪です。


「でも、創作の最初は模倣からだっていうし……」


 わかりますよ?

 最初はみんな模倣です。最初からオリジナルが書ける稀有な人は、ほぼ存在しません。みんな、初めは自分の好きな作家や作品な話をめざして書き始める。


 ただね。そのとき、自分では気づいてないだろうけど、そうして書いた処女作は、完全に「こんな話を書きたい!」と思った作品のモノマネでしかないんです。第三者が読めば、自分が思ってる以上になんです。


 なので、そういう作品は世の中に出しちゃいけません。たとえば、習作として模倣で書いたとか、「今読むと完全にパクりだな」と気づいたら、そっと非公開にすることをお勧めします。それでも本人には愛着があるだろうから、消せとは言いません。大切に思い出の作品としてしまっておきましょう。


 ま、僕はすてましたけどね。最初のころに書いた作品は全部。あるていどうまくなると、逆に黒歴史でしかありませんから……見るのが恥ずかしいレベル。


 なので、初期のころに模倣する、または、そのつもりはなかったけど模倣になってしまう、というのは、しかたないことです。誰もが通る道。


 しかし、それでも、模倣された側がその作品を見れば不愉快です。「いや、オマージュだから」とか言われても、愛するわが子をとられた人にしてみれば「コイツがおれの子を誘拐した犯人です!」なわけです。非公開にしようねというのは、そのため。相手の作品をリスペクトしているのであれば、なおさらのこと。


 そこからぬけだして、じゃあ、と新たに書いた作品からは、だんだんに元話の影響が減っていく。読者が「もしかしたら、この作者さん『〇〇』が好きなのかなぁ?」くらいにしか感じなくなったら、やっと、オマージュ作品が自分のなかで消化されたということ。オリジナルと誇っていいです。


 そこへ到達できないで、いつまでも「オマージュだから」とか言ってると、そのうち、ネタを探してつねに他人の作品を物色するハイエナに堕ちてしまいます。こうなった人たちは正直、救いようがないんだと思う。


 以前、「今日から小説書きました!」という人が僕の作品を丸パクりしてきた(たぶん、このエッセイのなかでも、そのエピソードについては書いたことがある)んだけど、その人は処女作をあらすじ丸々、他人から盗む方法で書いて、満足だったんだろうか?

 ただの習作なら、消してほしいし、その方法で書くのやめないと、ほんとの作家にはなれないよと思う。早く模倣期間を脱却できるといいですね。


 一度染まると難しいと思うけど……。

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