第10話 自分のレベルの見わけかた2



 ところで、僕は先日、自分が中級の中のころの作品を読みなおして、手直ししました。ヘタクソなんだけど、なぜか、あるていどは読めるし、そこそこ面白いんだよなってやつです。


 それより前のやつは、ほんとにクッソほどヘタ、ド下手で、とても読めたもんじゃなかったんですが。これは、いちおう読める。でも、ヘタw


 今の目で見ると、粗がほんとによくわかる。

 なので、そのとき感じたダメな点を列挙しときましょうか。誰かの参考になるかもしれない。


 1、行動描写しかない。風景描写は大事な場面だけちょこっと。心理描写がほとんどない。これに関して一番ダメな点は、心理を表したいとこを行動描写で表現してる。心理は心理で表現しようよ。心理を行動で表して成功するのは、マンガとか映画とかビジュアル媒体でしょう。


 2、上記にも関連して、ムダな内容が多い。これ、小説のノウハウでもある。書かなくていいことは書かないってやつ。

 つまり、


 そのとき、部屋に男がかけこんできて叫んだ。

「火事だ!」


 みたいな文章があったとき、読者は想像で、その場にいる人が右往左往するのは想像できる。なので、ここはすっとばしてもいい。

 なのに、


「きゃー。どうしましょう。逃げないと」

「奥さん。ちょっと待ってくださいよ。僕らはこの屋敷の構造を知らないんですよ」

「いっしょに逃げましょ。いっしょに」

「ああ、煙がもうここまで」


 みたいな文章が続く。たとえば、それが家族を失うとか、生き別れになるとかの重要な場面でないなら、とばそう。場面転換して、


 一夜が明けた。あの豪壮な花子の邸宅は炎のなかに崩壊した。


 これでいい。いや、火事だからね。これが事件のラストで犯人が死ぬとかなら必要だよ? そうでないならいらない。ミステリーなんかの始まりで、このあとが事件なんだってとき。

 例が火事なのはちょっと失敗だったなぁ。たとえば、朝の身支度を長々書いてもつまんない。目がさめて、カーテンあけて、やれ、朝ご飯は英国風ブレックファーストだの、髪をといてドレスはお気に入りの薔薇色にした、だの。


 翌朝。花子は身支度をすませると、別荘へ急いだ。


 これで充分でしょ。


 3、寒いギャグが盛りこんである……。

 これは僕だけかもしれないけど、内輪受けの延長線上なのかなぁ? おかしくもない変なギャグもどきが、ところどころ入る。寒い……。


 4、構造(プロット)が薄い。ストーリーが単純に一層で進んでいく。つまり、メインストーリーが一つしかない。

 伏線はありますよ? さきのストーリー展開を見越した伏線は。ただ、それもメインストーリー一つに対する伏線だから、最初から最後まで一本のヒモでつながってる感じで物足りない。まあ、このくらいのほうがわかりやすくて、読者には負担かからないのかもだけど。


 これは、この話のあと、複雑なプロットの練習をしたので、僕の目が肥えてしまったせいかなぁ。


 複雑なプロットとは、たとえば、過去に起きた事件、現在進行形で起きている事件を交互に書き、ラストで二つの事件が重なり、両方解決する。少なくとも主人公の内面で、それに対する葛藤が昇華する。という作り。二層構造の練習をしてた。


 さらに現在は、長いシリーズ物など三層構造で書いてる。上記の二層の進行にプラスして、シリーズ全体を通したメインストーリーもチョコチョコ進む。


 先日、『ジゴロ探偵の甘美な嘘〜仮面の恋〜』について、ルーシサスのエピソードがいらん、これが出るたびに展開が分断されるってレビュー書かれたけど、そのルーシサスの部分が、シリーズ全体のメインストーリーなんですよ。たしかに、かめ恋一作に関してはなくても行けますよ?(とは言っても主人公の葛藤に関する部分で、ラスト、事件が解決して解放された伯爵と、葛藤を抱えたままの主役の内面の対比がキレイに決まってると、以前、上級者には言われましたけどね。決していらないものじゃない。ミステリーに余韻とか求めない人なのかもしれないけど、それがあるのとないのでは、後味が一味も二味も違ってくるんですよ?)


 5、必要な描写が足りてない。

 まあ、これは行動描写ばっかりっていうのにも関連してるけど。説明しないとわからないとこに説明がなかったり。ずっとあとになって急に説明がまとまって入ったり。とにかく、説明のタイミングがヘタ。


 6、人物が定型的。

 心理描写が少ない弊害。というより、人間観察がまだ甘いころだったんだろうなぁ。紙の上での表面的なキャラっぽい。その人の内面が理解できない。または、しにくい。さすがに主役二人はあるていど描けてるけど。脇役が薄っぺらいよね。


 7、場面のひきが弱い、または、ない。そのぶん、ワンシーンがダラダラ長い。

 このころは紙の本で考えてたからなぁ。web投稿し始めてから——とくにカクヨムを始めてから、一話(ワンエピソード)の長さ2000字前後を目標にした。当然、一話ごとにひきがいるんで、次回が気になる終わりかたを心がけている。一回、『龍郎はそれを見た瞬間、息をのんだ。なぜなら——』で、その回を終わらせて、読者さまを悶絶させたことがw


 こんな感じですかねぇ?


 まとめると、これを読んで、自分が中級の下だなとか、まだ初級かよとか、思っても、それを気に病む必要はありません。誰だって最初から上手いわけじゃないんで。


 肝心なのは、自分の腕前を冷静に見きわめて、それを認めること。まず認めないことには上達しませんから。

 何度も言うけど、中級の人だって、受賞の可能性はあるんです。それぞれにあった対策を練りましょう。そして、いつかはあなたも上級者に。


 すでに上級の人。毎回、最終候補には残るのに受賞できない……という人。あとは運です。運を待ちましょう。

 それと、コンテストごとの攻略、ちゃんと考えてますか? なんでもかんでも送ればいいわけじゃないです。


 最近は自分で電子書籍化する人もいるけど、電子書籍化した作品は発表ずみとみなされること知ってますか? ほかは知らないけど、少なくともエブリのイベントでは応募不可になります。どうしても、この作品はいつか必ずどこかの出版社から書籍化してもらうんだ、と思ってる作品は安易に電子書籍化しないほうが無難です。


 ではでは、みなさん、執筆楽しみましょう。

 まずはそこ。

 とにかく楽しんで、たくさん、たくさん書けば、イヤでも上達しますから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る