第9話 自分のレベルの見わけかた1



 と、ここで重要になってくるのが、自分のレベルの認識だと思います。


 みなさん、おっしゃいます。

「自分のことは冷静に見れない」「自分の悪いとこ(よいとこ)はわからない」「他人の評価はわかるのに、自分のはどうしてもひいきめで見ちゃう」


 ですよね。これが冷静に見れれば上級者です。


 じゃあ、だいたいでいいんで、自分が今どこらへんなのかなぁと客観的に判断できる目安をお教えいたしましょう。


 僕はこう見ている。東堂薫式。

 なので、「自分的には違うと思う」という意見は聞きません。あくまで目安ですから。それぞれの基準があるなら、それで見てください。


 まず、初級。

 これはもう言わずと知れた、書き始めたばっかりの人。短編三作書いたよ〜、処女作執筆中です〜、とかの人はここ。


 具体的に言うと、執筆ルールがよくわかってない人。


 1、三点リーダは二つ。二の倍数。

 2、段落の頭は一個マスさげる。いわゆる字下げ。

 3、?、!のあと文章が続くときはスペースを一つ入れる。

 4、カギカッコ内の最後の文末には句点(。)をつけない。同様にカギカッコ内の最後の文末がクエスチョン(?)やエクスクラメーション(!)だった場合のスペースはいらない。

 5、一人称、三人称など視点の違いがわからない。そもそも視点というものを知らない。

 6、一般文芸では顔文字、絵文字は基本的に使っちゃいけないんだよ。


 上記のどれか一つでも知らなければ、あなたは残念ながら、まだ初級者です。

 縦書き原稿は基本的に、数字は漢数字で書く、とかね。


 つまり、ほんとに小説を書く技術的な面で基礎の基礎ができてるかどうか、です。

 なので、ここを脱するのはたやすい。ちょっとまじめに読み書きしてれば、一年か二年でぬけだせる。人によっては数ヶ月。なんなら、それまでにたくさん読んでれば、処女作ですでに上記の知識だけは持ってる人もいるはず。その場合は、数作の短編、または一作の長編を完結させた時点で、すぐに中級に入れる。


 ただし、この時点で視点を使いこなせてるかどうかは別物。というか、初級者には使いこなせない。乱れてるのが普通なんで、まだ気にすることはない。


 次は中級者。

 ここの範囲がとても広いのが書き手の世界なんだと思う。上記のようなルールはだいたいわかっていて、視点もあるていど狂いなく書けているレベル。そこそこ文章力はある。でも、まだ欠点も多い。


 中級者と上級者のハッキリした違いを具体的に示すには、webサイトでいいんで、『最終選考には残るよ』とか、『短編のイベントで受賞したよ』に達するかどうかなんだと思います。(まあ、短編はまぐれで傑作が書けてしまう可能性もあるんで、一回のみでなく妄コンなら優秀作ふくんで常連になるレベル)


 つまり、受賞の可能性があって、いつでもプロになれる実力を持っている人。それが上級者。


 身も蓋もない言いかたで、すいません。具体的に表すとなると、やっぱりどうしても、そうなってしまうのかなと。


 よく「落選した。モチベさがった!」「また落選! なんで自分のが選ばれないんだ!」と書いておられる人がいますが……申しわけない。言いにくいんだけど、それはやっぱり、小説の腕前がまだ中級だからだよ。


 だから、落ちたことに腹立てる(あるいは嘆き悲しむ)より、自分の腕をあげよう。どこが悪いか反省しよう。なおすべき点がどこかにあるはず。

 それがわかれば大きな突破口になる。


 ただね。だからって悲観する必要はない。前に書いたように、中級者でも受賞できる、書籍化できるのがwebサイトだから。


 なので、上級者に対して僕から言うことはないです。賞を狙って、狙いすまして、送り続ければいいよ。そしたら、運がよければ(上級者でも運とタイミングは必要)、きっとどこかで書籍化できるはず。


 問題なのは、中級者ですよね。上達したくても、自分ではようわからんし……何がダメなのー! って、グルグルになりますよね。


 中級者の長い闇。ここで脱落する人が多い気がする。


 初級と上級はハッキリしてて、それぞれ対処法があるけど、中級者は幅が広い。小説を書きますという人の八割はここだろう。

 なので、僕は中級者のなかにも、さらに上中下があると考える。初級に毛が生えたくらいの、コンテストに対してほとんど戦闘力を持たない人もいれば、きわめて上級に近くて、なんなら運がよければ受賞してしまう人もいる。


 大事なのは、この上中下のどこに自分があてはまるのか、判断できるかどうかなんじゃないかと。

 だって、それによって対策違ってくるしね。以下、上中下ランクわけと、対策法。


 中級の下

 初級からあがったばかりの人。まだ視点の違いとかよくわかってない。視点が乱れる。日本語の正しい用法、てにをはなどが間違う。人によっては何作も同時進行で書いたり、飽きたら次に手を出し、ほとんど完結させたことがない。

 エタってばかりいる人は、たとえ何十万字書いてても、書き手としてはまだ未熟。このへんの人にかぎって推敲をしないのも特徴か? というか、たぶん、推敲力じたいがついてない。


 →この手の人が受賞をめざすなら、エタが許容されてるラノベで攻めるしかない。文章はヘタでもゆるされる。本になっちゃえば、こっちのもんだ。


 →または、小説の書きかたのノウハウ本や、しっかりした一般文芸などを読み、基礎を勉強する。賞はそのあと、実力をつけてから挑戦する。


 中級の中

 視点もほとんど狂わなくなった。あるていど達者に書ける。ただし、三大描写(風景描写、行動描写、心理描写)のうち、行動描写ばかりが、やけに丁寧。中の中の人は地の文をしっかり書きたいという気持ちはあるが、それがゆえに行動描写に走り、逆に読みにくくなってることが多い。


 →コンテストに関しては、中の下の人と同じ戦法。アイディアがよければ、ワンチャンある! ただ、一般文芸では厳しい。


 →文学作品を読もう。一般文芸では心理描写が重要だ。人間観察が必要になってくるよね。人間性の深みが描ける人になろう。そう。だから、文学作品を読もう。


 中級の上

 ここまで来れば、もう上級者とほとんど差異はない。しいていえば、自作が完全にコントロールできてなかったり。

 キャラが暴走しちゃって、プロットめちゃくちゃになったー!

 このとき、でもより面白くなったからいいか、ならオケー。なんか変になっちゃったので書きなおします、なら、もうちょい修行が必要だ。でも、自分で変になったとわかるってことは、実力はついてる。自信を持って。


 書くは書けるけど、ものすごく時間がかかったり。やっぱり、プロにはあるていど速さも求められると思う。ものすごい傑作書けるけど、一作書きあげるのに五年かかります、という人は、迷わず純文学をめざそう。エンタメ向きじゃない。


 中級の上くらいの人でも、たまに視点乱れてるのを見かける。

 かなり上手いけど、スコンと大きな穴があったり。なんか最後、はしょったな……みたいな。


 文章はものすごく上手いけど、やまなし、オチなし、意味なしの作品とか。つまり、文章力はあるのに構成力にとぼしい。構成力が欠けてる人はわりと多い。みんな、文章は練習するけど、プロットの練習はしないから。僕はプロットの練習したのが強みになってる。


 →賞的には、選評シート貰えるコンテストに挑戦するのもいい。編集者さんの意見なら素直に聞けるはず。

 一般公募では選評もらえないよね。じゃあ、せめて、それまでの受賞作品を読みあさろう。受賞作にあって自作にないものを考えよう。


 →カクヨムコンなんかもそうだけど、応募要項出たときに、その賞が求める作品がたいてい書かれてる。そこから受賞しやすそうな作品を類推する。前回までの総評もちゃんと読もう。あたりまえだけど、応募要項は守ってるよね? 文字数制限でつまずくとか、もったいない。


 こんな感じですね。

 長くなったので、次回へ続く。

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