第3話 花一輪

「そうか、あげる!」

 初夏の空気を纏った璃玖が夏椿の花を一輪、差し出す。受け取ろうと持ち上げた手に、璃玖は軽く首を横へ振る。

「かみにかざるから、まって?」

「はい」

 夏椿の名前の通り、首からほろりとすぐに落ちてしまう花に苦戦したのだろう。枝ごと折ったその花を、緩く元結した奏花の耳へ飾る。

「うん」

 満足気に頷いた璃玖の後ろから、呼ばう声がする。

「りく、こっち!」

「うん!」

 同じ年頃の男児五人ほどに手招きされて、璃玖が駆け出す。その後ろ姿を眺めながら、木陰で休む奏花の膝へ小さな手が花冠を置く。

「かせんさま、はなかんむり、つくって」

「ええ、ここをこうして、こうです」

 女の子たちは奏花の近くで花摘みや人形遊びをしている。紙人形を作って渡したら夢中のようだ。

雨山花仙うざんかせん様、チビどものお守を押しつけて申し訳ない」

 立ち上がろうとする奏花の動きを手のひらで制し、大男が窮屈そうに身を屈めた。独特の紋様が織られた幅の広い結袈裟ゆいげさのような衣は、前は膝の辺りまで。後ろは膝より長く、腰の帯で留めるようになっている。都で見慣れぬその衣は、袖のない前開きのほうに似ている。赤、青、黄色、白、様々な色の糸で刺繍された紋様は、家ごとに決まった柄があるという。お陰で顔を覚えずとも、刺繍の柄で相手が誰だか分かって便利だ。

「お気になさらず、煉義れんぎ殿。璃玖さまも同じ年頃の子と遊ぶのが楽しゅうて仕方ないご様子で、ようございました。父に無理を言って夏の間だけでもこちらへ棲み処を移して良かった」

 奏臥と変わらぬほどの上背と、厚みのある立派な体躯。白銀の髪に黄橡きつるばみ色の虹彩をくるりと動かし人懐こい笑みを浮かべたのは、兵士たちの長である昂詰煉義あがつめれんぎである。

「何より煉義殿に乗馬を教えていただくのが楽しみのようです。こればかりはわたくしでは教えられず困っておりました。お礼のしようもございません」

「そんなにかしこまらないでくだされ。璃玖さまは飲み込みが早い。馬もあっという間にコツを掴んだ。元来利発な方なのでしょう。俺の教え方が特別良いというわけではござらん」

 昴詰あがつめ家はこの氷山ひざん以北、以流いるの地で暮らしていた熊を神と崇める狩猟民族の長一族であったらしい。以流はここよりさらに寒さの厳しい土地だ。それぞれに違う獣を神と崇める多くの少数民族が吾毘へ移り住み、以流は現在、一族から追放された者しか住まぬ地となっている。

「志出家は昔、馬ではなく狼に乗っていたそうだが。俺もさすがに狼の乗り方は教えられません」

 はっはっは、と腹から笑った煉義の顔は日に焼けている。彼からは強い陽の光の匂いがする。璃玖にとって、よい手本になるだろう。

「武具に不具合などございませんか。摩耗しても、例え刃が折れたとしても雪影に対して有効なものでないと皆様に申し訳が立ちません。小さなことでもおっしゃってくださいませ」

雪月花仙せつげつかせん殿に臥世真君がせいしんくん雨山花仙うざんかせん様までついているのです。こうして不自由はないかと細かに聞いてくださり、我々の要望をすぐに反映してくださる。頼もしい限りで、ありがたいことです」

 氷山に派遣される兵の名は、「雪牙せつが隊」となった。奏臥が「雪狼せつろう隊」と名付けたが、璃玖がこう反論したのだ。

「おじい様。このあびはたくさんの民があつまった国。しすいのおおかみだけが戦士ではありません。みなそれぞれにほこり高い戦士です。雪の牙と書いて『雪牙隊』は、いかがでしょう」

「うむ。良い名だ」

「要らんとこだけ奏に似おって」

 禄花はぼやいたが、兵士たちはすっかり璃玖に心を許したようだ。

 醜い獣として生まれ落ち、その姿を見た母が心を病んで自死した呪われた若君。

 璃玖の噂を聞いていた兵士たちは、今やすっかり璃玖に同情的だ。自分の目で、璃玖が自分の意志で自由自在に人の姿にも狼にも変じているのを見ているからだろう。おまけに奏臥と禄花が祖父、祖母と呼ばれることを許しているという状況も璃玖に味方した。何より、頼りない現当主に少なからず不満を持つ者はいるようだ。

 都に比べれば涼しいとは言え、陽射しの中長時間走り回る子供たちの様子を見て、声をかける。

「璃玖さま、皆さん、葛餅くずもちをいただきましょう」

「はぁい!」

「やった! 花仙さまの甘味だ!」

「かせんさまのかんみ、だいすき!」

「煉義殿。あちらの方々もどうぞと声をかけていただけますか」

 子供たちに用意した甘味は、兵士の分も作って持って来ている。そもそも煉義が奏花へ声をかけたのも、甘味が目当てのようだ。

「おっ! すみません。みんな花仙様の甘味を楽しみにしてましてね。おおーい、みんな! 花仙様の甘味をいただこう」

「わぁっ!」

「やった!」

 大人も子供も一斉に木陰へ駆け込んで来る。梅花と一緒に、湧き水で冷やしておいた葛の根の粉で作った餅を、これまた湧き水で冷やしてあった蜂蜜をかけて椀へ入れる。

「熱うございますから、しっかり水分を摂ってくださいませね、璃玖さま」

「ん」

 汗を拭って髪を直す。水を飲ませて口を拭うと、いつも通りに奏花の膝へ座る。当たり前のように奏花の膝に座った璃玖を、体の一番大きな男児がからかう。

「りく、かあちゃんのひざじゃないとすわれないなんて、あかんぼかよ!」

「そう花は母上じゃない。なんだ、六太ろくた。そう花がきれいだから、うらやましいんだろ」

「なっ……」

「そりゃお前、花仙様と比べちゃどんなおなごもオカメだろ……」

 兵士がぼそりと呟くと、兵士の妻らしき女子が頭を小突く。

「オカメで悪かったねっ!」

 朗らかな笑い声が初夏の空に響き渡る。雪牙隊の兵士は冬の任務を見据えて家族を連れて来ている者もいる。一年、ここで暮らして璃内りないへ戻り交代する、というやり方でまずは運営してみるらしい。

「皆様、ご不自由はありませんか。あれば母やわたくしにどんなことでも相談してくださいませ」

「いえもう、不自由なんて。雪月花仙様には立派な屋敷まで作っていただいて、井戸もあるし竈もあるし、なんてったって温泉まである。あたしらみたいな貧乏農民が一生できないような暮らしができるなんて夢のようですよ」

 オカメと言った兵士の妻が答える。そもそも、吾毘の民はほとんどが狩猟民族や遊牧民で定住も農業もしていなかった人たちだ。吾毘の土地自体があまり耕作に向いていない。今回の奏臥の提案は若く身分の低い兵士たちにとって、好機だったのだろう。必要なものは禄花がほとんど作ってしまうし、そのうち商魂逞しい商人も商売にやって来るだろう。暮らしが豊かで報奨も高い。貧困に喘ぐ兵士たちにとって、雪牙隊は憧れの職になるだろう。

「さぁ、甘味を食べたら皆さん手習いいたしましょうね。璃玖さま、汗をかかれたでしょう? 着替えましょうか」

「うん」

「午後からは煉義殿に槍を教えていただくのでしょう? 御髪おぐしを結い直しましょうね」

「そう花、頭もふいてくれる?」

「ええ。暑くて痒くなってしまいますものね。軽く水で流しましょうか」

「うんっ」

 奏花の膝からぽーんと下りて、璃玖が駆け出す。

「六太、いおりまできょうそう!」

「あっ! ずるいぞ、りく!」

 きゃはは、と高い笑い声を上げて遠ざかる子供たちを追って立ち上がる。

「ここへ璃玖さまをお連れして良かった」

「……チビどもが失礼をしておりませんか」

「失礼など。子供同士の遊びはわたくしでは教えて差し上げられません。先日、璃玖さまが泣きながら庵に戻ってまいりました。狼の姿でかけっこしたら六太さんに狡いと言われた、と」

「それは……」

 何を言うべきか迷った素振りの煉義へ、小さく首を横へ振って見せた。

「六太さんたちは狼の姿になれません。だから普段は人の姿で居ること。それは人の中で暮らすには必要なことなのです。けれど有事には自分の持てる力を惜しみなく守りたいものを守るために使いましょう、とお伝えしました」

「若君は人より背負うものが少し、多うございますから」

 煉義は元々神熊しんきゅう族の族長一族だ。長の背負う責務というものには思うところがあるのだろう。

「母代わりのようなものにはなれても、母にはなれない。友にもなれない。わたくしでは足りぬことだらけです。……煉義殿、璃玖さまをよろしくお頼みいたします」

「……あなたは立派に璃玖様の母親だと、俺は思いますよ」

「わたくし、これでも男なのですよ」

 ふふふ、と笑うと先ほどの兵士がまたぽつりと呟く。

「それでもやっぱ、どんなおなごより綺麗なんだもんなぁ……」

「ですってよ、花仙様」

 かかか、と笑った煉義へ微笑む。大男は視線を逸らして頭の後ろへ手をやった。

「へへ……俺もあなたはお美しいと思いますよ、花仙様」

「ふふふ……ありがとうございます」

 大男が身を縮めているのは妙に滑稽さがある。人懐こい顔立ちも手伝って、煉義という男はどこか憎めない不思議な魅力がある。

「梅花、片付けを頼みます」

「はい」

「では煉義殿、失礼いたします。午後からは璃玖さまの稽古、よろしくお願い致します」

 深々と頭を下げて庵へ向けて歩き出す。以流との境界から五里ほど離れた兵士たちが「干浬ひり」と呼ぶ場所に兵士たちの住居は建てられている。その程近くに簡素な庵を構えた。そこで璃玖が乗馬や槍の稽古をしている間、奏花は兵士の子供たちに手習いや簡単な計算などを教えている。そこからさらに氷山の近くにある宜山ぎざんの裾野に璃玖と奏花の夏の棲み処はある。氷山、宜山、干浬。この道を商人が通うことになれば、安全な拠点はいくつか必要だ。将来を見据えればそこを璃玖が押さえておく意味はある。いずれ璃玖が雪牙隊を率いることとなれば、今同年代の子供たちに勉学を施しておくことも無駄にはなるまい。

 庵の庭で遊ぶ子供たちを招き入れて見本を見せる。子供たちが女手を書かいている間に、璃玖の頭を洗って着替えさせる。髪を結い直して槍を持たせ送り出す。

「いってらっしゃいませ、璃玖さま」

「うん」

 庵の脇にある祠へ手を合わせ、璃玖が頷いた。手習いに飽きた六太が不思議そうに隣へ並び、それから璃玖に倣って手を合わせる。不思議なもので一人が手を合わせると子供たちは次々と真似をして祠へ手を合わせた。

 庵の庭に植わっている梔子が薫る。璃玖はちらりと梔子へ目をやり、それからふうわりと微笑んで奏花へ手を振った。

「いってきます」

 午前中の涼しい間に、宜山の屋敷で勉学を。その後少し子供たちと遊んで、奏花が子供たちに手習いを教えている間に煉義と槍の稽古。庵に戻って子供たちを送りがてら遊び、宜山へ戻って夕餉。

 夏の間の璃玖はそんな風に過ごした。夏の終わり頃には、兵士も璃玖もすっかり精悍な顔つきになっていた。吹く風に秋の匂いを感じる頃、奏臥と禄花の指導の元、雪影討伐の演習が行われることとなった。奏臥が捉えた数匹の雪影を討伐するのだ。

「奏花は子供たちや女子と留守番していなさい」

「わたくしは女子ではございません。わたくしも行きます」

「ダメだ!」

「わたくしはわたくしの刻んだ印がちゃんと機能を果たすか、皆様を守れるか、見届ける義務がございます!」

「ダメだ! お前は璃玖が心配で付いて来たいだけだろう!」

「左様にございます、璃玖さまが心配で何が悪いのです! 心配に決まっています! 万が一にもわたくしのかわいいかわいい大事な璃玖さまが無様に雪影に負けるなどとは思いませんが、それでも心配なものは心配なのです! 何故、璃玖さまは連れて行くのにわたくしは連れては行ってもらえないのですか!」

 力いっぱい奏臥のほうの袖を掴む。意外に強い力で振り回された奏臥が驚いた様子で奏花を振り切ろうとして力を込められずに困っている。手加減されているのは分かっているが、これほどまでとは。なるほど雪影討伐になど連れて行けぬわけだ。奏花は非力である。認めざるを得ない。

「璃玖さまはまだ、六つですよ? 父上。わたくしは確かに璃玖さまへ剣を教えてくださいませとお願い致しましたが、危険な場所へ連れて行けなどとお願いした覚えはありませぬ!」

「あー……これは奏が悪いぞ。奏が奏花を心配で連れて行きたくないのと同じで、奏花は璃玖坊が心配で付いて行きたいんだ。分かるな?」

「でも禄花!」

「でももくそもあるかこの阿呆め! 簀巻きにして置いて行くぞめんどくせぇ!」

「母上、手伝います」

 うちかけを脱いでたすきを取り出すと奏臥は扇を放り棄てて拳を握る。

「奏花まで!」

「連れて行くしかあるまい、奏よ」

「……くっ」

「連れて行ってくださらぬのなら、わたくし璃玖さまと干浬で暮らします! 己が身は己で守りますので!」

「分かった! その代わり前へ出るな。いいね?」

「はい、父上。ようございましたね、璃玖さま。奏花もご一緒できますよ」

「うん。でもそう花のことは、りくが守ってあげる!」

「嬉しゅうございます、璃玖さま」

 にっこりと笑って頷き、璃玖を抱きしめる。親子のやり取りを見ていた煉義が苦笑いで頭をかく。

「あー……、終わった、ってことでいいですかね?」

「はい。失礼いたしました、煉義殿」

 父が分からず屋で。と呟いた奏花に苦笑いしながら煉義は答える。

「いや、花仙様もお父上と喧嘩なさるんですね。何だか少し安心しました」

「安心、ですか?」

「余りに凄い方々なので、俺らとは違う人間だと。同じですね。変わりません」

「……そう、ですか」

 振りを、しているのです煉義殿。人間らしい感情に突き動かされているふりを。

 でないと干渉されて面倒なのです。それでもわたくしを、あなたと同じだとおっしゃいますか。

 飲み込んで唇の端を吊り上げる。これを笑みだと他人が言うからそうしているだけだ。そんなことも知らぬくせに、納得して安堵して見せる。人とは何と滑稽で哀れなものだろうか。

 気づかぬ方が幸せなのかも知れぬ。

 本当は人間など好きではないと、煩わしいとさえ思っていると、だから関わり合いになりたくないと雨辺山に籠ったのだと、人間がいくら死のうが関心はないと気づかねば良かったのかも知れぬ。もしくは、気づいた時にそう公言してしまえば良かったのだろう。嘘と憂鬱ばかりが澱のように沈んで行くばかりだ。

「りくがそう花を馬に乗せて行く!」

「まぁ、璃玖さま。ご立派です。わたくし大変嬉しゅうございます」

「うれしい?」

「ええ。とても。でもわたくし、馬には滅多に乗らぬゆえ久しぶりに手綱を握りとうございます」

 馬に乗る時も璃玖さまを抱っこしたいのです。お嫌ですか。首を傾げると璃玖は頬を染めて首を横へ振る。

「いやじゃない」

 でもそう花。りくがそう花より大きくなったら、こうして馬に乗せてあげるね。銀色の髪を撫でながら頷く。

「ええ、ぜひ。楽しみでございます」

「りく!」

 いつも璃玖を遊びに誘う一番体の大きな男児が見送る兵士の家族たちの中に見えた。兵士たちに混じって馬に乗る璃玖は、小さく頷いてすぐに前を向く。どれほど普段、奏花へ甘えて見せようともどれだけ普段、童たちと同じに泥にまみれて遊ぼうとも、璃玖には立場がある。背筋を伸ばして馬に跨る姿は幼いながらに己の立場を自覚している者の振る舞いだ。子供たちの目には畏怖と憧憬が浮かんでいる。これで彼らには無意識に植え付けられたことだろう。

 如何に親しく駆け回ろうとも、璃玖は自分たちとは立場が違うのだ、と。

 しばらく行くと兵士の詰所が見えて来る。そのほど近く以流と干浬の境、結界の中に五、六体の雪影が捕らえられている。木鹿もくろくに禄花を背中から抱きしめる形に乗った奏臥が手を上げる。一行は馬を下り詰所代わりの屋敷の厩へ馬を引いて行く。

「奏花様、お久しぶりです。さ、馬は紀之元きのもとがお預かりいたします」

「ありがとう。でもりくはこのまま、少し見回りをしますゆえ」

「おお、あなたが璃玖様ですね。まぁ何とご立派な若君だ」

「紀之元。久しぶりですね」

 馬から下りて璃玖へ手綱を渡す。紀之元は奏臥の弟子であった献正紀之片けんせいきのひらの孫である。まん丸の瞳と雄黄ゆうおう色の虹彩、闊達な性格が祖父の紀之片に良く似ている。

「付いて来たのですね」

「そうですよ。元々献正けんせい家は奏臥様の弟子。志出家とは何の縁もございません。それなのに置いて行くなんて奏臥様は酷いですよ」

 璃内りないも都に倣って陰陽寮を置いている。献正家はその陰陽寮を監督する役目を担っているのだ。

「一応、献正家の禄は志出家から出ている。だから……」

「なら奏臥様から俸禄をください、ってお願いしたんですよ」

「それで連れて来たというわけさ」

「苦労をかけますね、紀之元。父上も母上もお金のことには無頓着で……」

「大丈夫、これからは以斉いせい家の財務管理も献正家が行いますので。もっと早くこうするべきでした」

 明るく笑って馬を繋ぎに厩へ入って行った紀之元を見送る。これで奏臥も禄花も滅多なことでここを離れるわけにはいかなくなった。ほくそ笑んで兵士の元へ向かう奏臥の背中を一瞥する。

「まずは武具があれば雪影を倒せるということを身を持って知って、過剰な恐怖心を克服してもらうとしたい。雪影は結界から出られぬ。貴兄らに危険はない」

 おおっ、とどよめきとも鼓舞ともつかぬ声が上がる。この一年、氷山で奏臥の指導の元、すでに雪影を一人で退治していた璃玖は結界の境を示す荊を指さし禄花へ確認する。

「おばあ様。りくはあちらで番をしてまいります」

「うん、うん。どれ、ばあばも一緒に行こう」

 単身馬を駆って荊へ向かう璃玖を、奏花も梔子の木鹿で追う。同じく蔓でできた木鹿へ跨り璃玖を追いかける禄花とは逆、璃玖を間に守るようにして結界の境目まで近づく。

「璃玖さま、以前に以流についてお教えしましたね?」

「うん。夏は七夜月と月見月しかなく、それいがいはつねにふぶきのきびしい土地。ゆえに作物も育ちにくく、植物も限られたもの、どくじのものが多い」

「吹雪は風に乗って北西へ流れるため、以流の植物は皆北西へ傾いて這うように育ちます。分かりますか」

「うん。植物とちがって、地にふしていないかげが見えたら、ゆきかげ!」

「おお、璃玖坊は賢いのぉ」

「そう花におしえてもらったから!」

 無邪気に、そして誇らし気に答える璃玖へ微笑みかける。

「今は詠月えいげつですので、吹雪で先が見え難うございます。今日は氷山の結界も閉じておりますゆえ、雪影は全てこの荊で堰き止められます。油断はなさらぬよう」

「うん。ふぶきが止んだいっしゅんを、見のがさない。おじい様におそわったよ!」

「ご立派です。璃玖さまは気高き大神のかんなぎでございますゆえ、ご加護がございましょう」

「うん!」

 槍を持つ手に力がこもったのを見やり、荊に沿って氷山の方角へ進む。兵士たちの耳と目が璃玖へ集中しているのが分かる。璃玖はまだ六つ。六つの幼子でも、己の立場を理解し全うしようとしている。そのことへの畏怖が広がるのが、肌へ伝わって来る。

「!」

 無言で璃玖が弓を構えた。ひゅ、と鋭い音がして弓が吹雪の中へ消える。一拍置いて、ごああああ、と何とも言えぬ地鳴りに似た悲鳴が耳朶を打つ。

「来るぞ、璃玖坊」

「はい、おばあ様!」

 おああああああ。

 吹雪に混じって低く、鈍く、うめき声が混じる。やがて吹雪の合間にゆらゆらと揺れる影が見え隠れする。荊に阻まれ恨めしそうに揺れる影へ、璃玖は敢然と槍を突き立てる。

「たけく気高き大神のおん力、しめしたまえ!」

 ごがああああああ!

 璃玖の槍には雪影討伐の印は刻まれていない。ただ奏花の「決して折れず、何物をも貫く」呪がかけてあるのみだ。それはここ数カ月の訓練で兵士たち皆の知るところである。しかし雪影は、璃玖の槍に貫かれ黒く煤けてぐずぐずと崩れ行く。

「すごい」

「やはり大神様のご加護が」

「璃玖様の武器には神気が宿っていると臥世真君もおっしゃっていた」

 ぱん、と奏臥が扇で手のひらを打つ。その音に兵士たちは視線を戻した。

「さて。璃玖の物とは違うが諸兄らの武器にも雪影を討伐する印が刻まれている。我こそは試してみせようという御仁は?」

「はい!」

「よぉし、やるぞ!」

「幼い璃玖様があんなに勇敢に戦っておられるのだ。我らが尻込みしているなど恥ずかしいぞ!」

 結界に捕らえられ動けぬ雪影を雄たけびと共に貫く数多の剣を無感情に見やる。

 愚かだ。檻に捕らえられたものを嬲り殺しにすることなど、誉れであろうはずもない。ただ彼らのその野蛮さを鼓舞する必要はある。これは間違いなく殺戮であるからだ。彼らは殺戮に慣れなければならない。自分の役目という大義名分に酔いしれなければならない。その方が気が楽だ。その点で奏臥のやり方は正しいと言えるだろう。

 雪影がどうやって創られているのか。奏臥も禄花も知っているはずだ。けれど彼らは人間の側に立つ。そのことへの嫌悪もある。だが奏花にそれを非難する権利はない。雪影の成り立ちを知っていても問題を解決しようとはしていないからだ。その点に於いて両親や兵士たちと奏花に変わりはない。どちらも愚鈍でどちらも卑怯だ。

 人間にとって害獣なら殺してもいいというのならば、駆逐されるべきは人間ではないだろうか。人間は愚かで狡く、醜い。しかしそれは何より強い種としての「生き残る」ための本能でもあるのだろう。だから彼らを責める権利など奏花は持ち合わせていない。何故なら、奏花は生き残るための努力や工夫や苦労を必要としないからだ。だから奏花は人間を駆除しない。しかしいつか、奏花にとって脅威となるのならば迷いなく排除するだろう。それだけのことだ。

 目を伏せ、淡々と璃玖を追う。禄花はそんな奏花の態度を例え雪影であろうと虐殺は見たくないという優しさと取ったようだ。

「大丈夫か、奏花」

「……ええ。平気です、母上」

 璃玖が馬首を巡らせ、奏花の元へ戻って来る。それから隣へ並んで奏花の手を取った。

「そう花、だいじょうぶ?」

「ええ、璃玖さま。ただ帰りは少し、璃玖さまを抱っこさせてくださいませ」

「うん」

 璃玖の青銀色の髪を撫でる。璃玖の髪色は雪に紛れて溶け込んでしまう。狼の姿になればなおさらだろう。この子はやはり、雪の大地に生きるかたちを持って生まれたのだ。

「璃玖さまは、雪影が恐ろしゅうございますか」

「……ううん」

「恐ろしくはないのでございますか」

「怖くないよ。あれは、ああいう生きものでしょ。ならしかたない。本当はこの国に来ないでっておねがいできたらそれが一番だけど。なんで来るのか、なんで人をこわすのか、ことばがつうじないから聞けないし。追いはらえたらいいけど。弓であっち行けってしても、よけいにおこらせるだけでしょ? だから本当はおじい様みたいにけっかいで入れなくしちゃうのが一番なんだけど、それはおじい様たちいがいにはできないから。りくにはたおすしかできない。いつかたおされるのいやだなぁ、ってここに来なくなってくれるといいけど」

 拙い言葉で懸命に伝えようとしている。奏花が思うよりこの子は聡いのかも知れない。

「……そう、ですか」

 理解しているのだ。この子は理解している。狩猟民族の本能だろうか。脅威だからと言って、無意味に駆除することはこの世界にとって是ではないのだと。

「……璃玖坊は賢いな」

 禄花が白い息と共にぽつりと吐き出した。それから璃玖の髪を乱雑に撫でまわす。

「いや、本当に璃玖坊は賢い! 人というのはいつの時代も可能性を見せてくれるものよな」

 ははは、と笑った禄花の横顔を見る。奏臥の結界に捕らえられていた雪影は全てぐずぐずと崩れて煤の塊に似た何かになって雪を黒く染めていた。荊を離れて、奏臥の元へと馬首を向けた璃玖と禄花へ続く。

「今宵は私と夜警に当たるもの、休むものと分けることにする。夕刻まで休んでくれ」

「はい」

「煉義殿は昼の担当の指揮を頼む。私と禄花、奏花は眠らないからいつでも声をかけてくれ」

「はい」

「おや父上。わたくしは璃玖さまと共に休みますよ?」

「……何?」

「いつも通り、璃玖さまに添い寝します。璃玖さまはまだ六つですよ」

 それにこんな寒いところで璃玖さまがお体を冷やして病になどなっては大変ですもの。ね、璃玖さま。木鹿を解いて璃玖の馬へ跨り、璃玖を抱きしめて頭を撫でる。

「璃玖さまは幼子ですから、当然昼の担当ですよね。夜警などまだまだ危のうございますれば。では父上、これにて失礼いたしますね。さ、璃玖さま。日暮れ前に宜山へ戻りましょう」

「待ちなさい、奏花。これから宜山へ戻るのか?」

「当たり前です。こんな寒い、しかも危険な場所で璃玖さまを休ませるわけには行きません。明日もわたくしがちゃんとこちらまで送り届けますのでご安心くださいませ」

「だからあんなに頑なに付いて来ると言って譲らなかったのか」

「当たり前です」

 せめて元服するまでは、こちらで皆様と一冬一緒に住まわせるなどできるわけもございません。さ、璃玖さま。馬はこちらの厩舎へ置いて行きましょうね。寒かったでしょう。帰って湯に浸かりましょうね。おお、かわいいお手々が真っ赤です。奏花が温めて差し上げましょうね。さ、わたくしの懐へ手を入れて。

「そう花、りくもここにのこっちゃ、だめ?」

「どうしてもですか?」

「……そう花も、いっしょにいて?」

「……でもね、璃玖さま。ここでお休みになると、やれ奏花の懐へ手を入れるな、やれ奏花の膝へ座るな、やれもう一人で寝なくてはとじいじがうるさいですよ」

「……っ」

 璃玖が奏臥へ顔を向ける。それから奏花の懐へ手を入れたまま、首を傾げた。

「おじい様、だめ?」

「……っ、璃玖は幼子だから……っ、奏花に甘えるのは仕方のないことだ……っ」

「幼子相手に大人げねぇな、奏」

 禄花がにやにやと面白そうに腕を組んで笑っている。奏臥が握り締めた扇がミシミシと音を立てた。

「扇や笏をへし折るの、以斉のお家芸だよな……」

 禄花が木鹿を解いて呆れ顔で奏臥の肩を叩く。両親を無視して璃玖の体を抱きしめる。

「さ、璃玖さまのお体が冷えてしまいます。早く屋敷へ参りましょう。璃玖さま、すぐにわたくしと湯に浸かりましょうね」

「君と璃玖と禄花は先に使いなさい」

「父上。わたくしも母上も男です」

「いいから先に使いなさい! 璃玖の体が冷えてしまうだろう!」

「そうしてください、花仙様。花仙様と御一緒じゃあ、俺たちも気恥ずかしい」

「では煉義殿のお言葉に甘えて」

 煉義が奏臥に追従して促す。一礼して兵たちの元を去り、屋敷の中へ入る。

「あんな綺麗な人たちとじゃ、男だと分かっていても同じ湯に浸かれないよな」

「雪月花仙様は芍薬、雨山花仙様は梔子と讃えられる絶世の美形だ。一緒の湯に浸かったなんて言ったらうちのかかあに火吹き竹でどつき回される」

「違いねぇ」

 兵士たちの笑い声を背中に湯殿へ向かう。璃玖の手を握り渡殿を行く。

「見た目の作りに違いなどありませんのに」

 兵士たちと同じようになく、同じようにある。それだけのことだ。

「まぁ、奏は己れに心底惚れているので仕方ないが。お前は好きにすれば良いよ」

「だめ。そう花は、りくとばあばだけ」

「お? じいじもだめか」

「父上には一度きちんと現実を見ていただいた方がよろしいのでは?」

 あなたのお子は確かに男です、と。奏花はうんざりと眉を潜めた。

「だ、だめっ」

 大人と居る時は滅多に大きな声を出さない璃玖が、慌てたように奏花を仰ぐ。奏花の腰辺りに掴まった璃玖を抱き上げる。

「まぁ、璃玖さま。璃玖さまがそうおっしゃるならそうしましょうね」

「……うん」

 抱き上げられて奏花の髪を弄る璃玖へ顔を寄せる。はにかんで唇を軽く噛み、上目遣いに奏花を窺う璃玖の鼻先へ自分の鼻を押し当てる。

「かわいいかわいい奏花の璃玖さま、いつまでわたくしと一緒に湯に浸かっていただけるのでしょうか」

「ずっと!」

「そうですか。ではずうっと一緒ですよ?」

「うふふっ」

 最前線には兵士以外の人間をできるだけ置きたくないのだろう。屋敷の中には禄花の式神が複数、世話係として待機している。人間は献正家の者だけだ。

「桜花、湯の支度を」

「御意」

「それから夕餉の支度をしてくれ。あと己れには酒」

「承知いたしました」

 桜色の小袖姿で簡潔に返事をして渡殿を音もなく移動して行く。見た目は奏花の使う梅花たちに似ている。姿形から所作までがそっくり同じなのは媒体が同じだから仕方のないことだ。例えば奏花の梅花は、奏花の庵に植わっている梅の花が媒体だから、どれだけ呼び出しても皆同じ容姿である。禄花の桜花も同じなのだろう。

「ここの桜花たちは、兵士たちの命も聞くようになっているのですか」

「ああ。飯炊きやら下働きは必要だろう?」

「そうですね」

「屋敷の案内と護衛も兼ねているし、屋敷内の些事は紀之元へ一任してある」

 禄花は奏臥と違い、人間の味方ではあるが人間を信用しきっていないところがある。護衛、というのはそういうことだろう。そしてわざわざそれを奏花へ伝えるというのは。

「だから璃玖坊の心配はない。しかしまぁ、それで安心しろと言われても己れなら納得せぬがな」

「できませぬね」

「だろうな。まぁ、元服までとお前が言うのだからそれまでは好きにするがいい」

「はい」

 東と北の対に当たる場所に、屋敷を造る際に掘り当てた温泉を利用した湯殿が造られていた。主の居ない寝殿と北の対は小さめに造られており、西の対と東の対を夜警組の寝所、昼警組の寝所と分けるつもりのようだ。

「奏花」

「はい」

「己れたちは花だ。己れたちは途中からそうなったし、お前は生まれつきそうだ。花というのは人を魅了する性質を持っている。それは進化の過程で必要だから得たものだ。花はただ花であるだけだ。けれど、花は花であるからこそ、不埒な輩に摘み取られる。お前にとっては煩わしいばかりだろうが、それは花と生まれたからにはもうどうすることもできぬ」

 奏花の腕の中で、僅かに身じろぎして璃玖が禄花をちらりと見上げた。

「だからこそ、奏はお前を過剰に心配するし守ろうともする。花を手折ろうとする者は後を絶たぬ。そのこと、心に留め置いてくれ」

「……はい」

 禄花は奏花に少し似ている。けれども違う。愛情という、人としての感情を持っている。だから禄花は奏花を理解できない。奏花は黙って手折られる花ではないのだから。ふう、と一つため息を零す。それは青銀の艶やかな髪に弾かれ、簀子へ落ちた。

 奏花はずっと、生まれた時から奏花であるというだけなのに。

 単を握り締められ、胸に抱いた小さな頭を覗き込む。

「だいじょうぶだよ」

「?」

「そう花は、りくがまもってあげる!」

「……ふふ。はい。璃玖さま」

 ああ、愛しい。握り潰して中身をぶちまけて潰した脳味噌へ顔を埋めたいくらいに愛しています、璃玖さま。奏花のような化け物しか寄る辺のない、愛しい愛しい、哀れな狼。

 温泉に浸かり着替えて渡殿を戻る。西の対が騒がしいから、そちらが夜警組の寝所となったのだろう。桜花たちが慌ただしく膳を運んで行く。

「では璃玖さまは東の対へ参りましょうか」

 握り締めた小さな手を揺らすと、寝殿の方から奏臥が大股で歩いて来た。

「璃玖と奏花は私と禄花と共に北の対で休む。いいか、西の対と東の対には日中以外立ち寄らないこと」

「……ならば少し離れた場所にわたくしたち用の屋敷を造った方が早いのではありませんか」

「そうしよう」

 即答した奏臥の想像している「わたくしたち」には奏臥と禄花も入っているのだろう。お断りだ。だが今そのことに言及すると面倒だ。頷きもせず西の対へ歩き出す。

「こら、奏花! 西の対へ行くなと今言ったばかりだ!」

「ええ、ですので父上。まだ陽は落ちておりませぬ。さ、璃玖さま。皆様と食事致しましょう」

「……っ! ……っ!」

「ははは。一本取られたな、奏」

 西の対の兵士たちに混じって膳の前に座る。

「さ、璃玖さま」

 常に倣って璃玖を膝へ座らせようと手を広げると、いつもならすぐに奏花の膝へ座る璃玖がもじもじと自分の袴を掴んでいる。

「璃玖さま?」

「……りく、今日は一人でたべる……」

 腕を広げたまま固まる。璃玖を見つめたまま動かなくなった奏花に兵士たちが静かになった。瞬きを何度も繰り返し、それからもう一度手を広げる。

「さ、璃玖さま」

 にっこり微笑む。璃玖はちらりと奏花を見やり、再び首を横へ振る。

「六太が、そう花のおひざでしょくじをするのはへん、だって……」

 手を広げたまま虚空を見つめる。兵士たちは固唾を飲んで奏花を見守っている。

「六太さんは……明日から甘味なしでございます……」

 兵士の一人が酒を吹き出した。気を取り直して立ち上がる。

「では璃玖さま。宜山か庵に帰りましょう。食事はそちらで済ませればよいのです」

「やだ……りく、ここにいたい……」

「では、お膝へ」

「……それはだめ」

 頬を染めて俯いた璃玖のつむじを凝視する。何とか妥協案を探るために提案を口にする。

「璃玖さま。今日はわたくし、お匙を触りません。ですのでお膝へ」

 にっこり微笑み手を広げる。璃玖は上目遣いで奏花を見つめたまま、首を横へ振った。

「だめ。一人でたべるから、そう花は見てて?」

「お膝でないとよく見えません」

「だめ」

「璃玖さまの……いじわる……」

 袖を顔へ宛がって目を伏せる。面倒だ。一人で帰ってしまおうか。それにしても六太は余計なことを璃玖に吹き込んだものだ。邪魔になるなら排除してしまおうか。奏花の不穏な考えを見抜いた訳ではないだろうが、璃玖は仕方なし、という様子で頷く。

「……じゃあ、おひざだけ」

「はい!」

 にこにこで手を広げる。恥ずかしそうに奏花の膝へ座った璃玖を抱きしめて、膳を引き寄せた。

「璃玖さま、お水も飲みましょうね」

「ん」

「ほらほら、お口の横が汚れてしまいましたよ。お拭きしましょうね」

「うん」

「璃玖さま、好き嫌いはいけません。お約束致しましたでしょう? 何でも食べて大きくなぁれ」

「……ん」

 二人の様子を眺めていた兵士が、ぽつりと漏らす。

「いつも、そんなご様子ですか」

「いいえ。いつもはわたくしが匙で璃玖さまのお口へお運びします」

「そう花!」

「? 璃玖さま? どうしてそんな怖いお顔をなさるのですか?」

 今までだって甘味を食べる時は奏花の膝の上だったではないか。心底解せぬ気持ちで首を傾げる。

「……りくはもう、せんしなのでそう花のおひざでそう花にあーんしてもらわずとも、たべられる……」

「……っ、そうでございますね……」

 なるほど、そういうことを六太にからかわれたのだろう。呆然と答えると、璃玖は奏花の頬を両手で包んで額を合わせた。

「一人でなんでもできるようになったら、そう花のことをこんどはりくがだっこしてあげるから。ね?」

「……約束ですよ……?」

「うん」

「絶対ですよ……?」

「うん」

「でも、いつもやれ膝に乗せるな甘やかすなと小言がうるさい父上にはいじわるをします」

「……ううーん……。あまりひどくしないでね?」

「はい」

 璃玖さまの優しさに免じて、父上への仕返しは考えていたことの五割程度にしておきます。

 答えると周りの兵士たちが飯を吹き出した。胸を叩いて咳き込んでいる者までいる。妻戸を開いた奏臥が重々しく呟いた。

「奏花はこれを機会に璃玖離れしなさいっ!」

「ならば父上はわたくし離れなさってくださいっ!」

「……っ! ……っ!」

「あっはっはっは、奏! お前の負けだ。ははははは!」

 楽しそうに腹を抱えて笑う禄花に、兵士たちも笑い出す。笑い声につられて東の対に居た兵士たちも顔を覗かせる。

「なんだ? 何があったんだ?」

「煉義殿」

「どうしたんです、花仙様」

「父上への嫌がらせとして、わたくしと璃玖さま用の屋敷を近くに建てることにします」

「奏花!」

「わたくしと璃玖さま以外は父上であろうと母上であろうと中に入れぬように致しますのでご安心くださいませ、父上」

「そ、奏花ぁっ!」

「ははははは、奏が悪いぞ? はっはっは」

 やがて夜警と昼警の兵士入り乱れての宴会になり、奏花は璃玖を抱えてこっそり北の対へ向かう。抱えた懐の中、璃玖が奏花へ耳打ちする。

「おじい様はかわいそうだけど、りく、そう花と二人きりのおうちうれしい」

「うふふ。わたくしもです、璃玖さま」

「えへへ」

「うふふ」

 禄花は妙なところが律儀というか、拘るというか細やかなところがある。主が居ないとはいえおそらく北の対にも寝殿にも御帳台は設えてあるだろうと覗いてみれば、やはりあった。

「今日は大変でしたね。明日も早いでしょうから、もう休みましょう」

「ん」

 畳の上へ寝転がって璃玖を抱き寄せる。袿をかけて次第に温くなって行く璃玖の手を握り締める。二人きりになれば小袖へ手を入れ甘えて来る。いつも通りの璃玖だ。

 ――かわいいおおかみさん雨辺野を駆ける。金色お目々はなぜなぜまるい。まんまるお月さま見たからまぁるい。

「璃玖さま。そんなに慌てて大人にならないでくださいませ」

 でないと握り潰す楽しみが減ってしまう。柔らかい頭蓋はいつでも簡単に壊せるからこそ、我慢のし甲斐があるのだ。いつも通りに闇を見つめる。幽き寝息を聞きながら。忙しない鼓動を肌に感じながら。化け物に見守られて眠る哀れな幼子を潰さぬようにと抱きしめる。

 ああ、なんて柔らかいのでしょう。この肉の塊は。

 ――銀色おおかみさん雨辺野を駆ける。金色お目々はなぜなぜまるい。まんまるお月さま見たからまぁるい。

 うっそりと闇を目路へ入れる。璃玖さま。感謝します。朝が待ち遠しいなんて、生まれて初めてです。夜が楽しいだなんてこれまでになかったことです。あなたをどうやって壊そうか考えるだけであっという間に夜が明けてしまう。

 その年の正月は雪牙隊は着任したばかりで忙しいと璃貴への挨拶は断った。二年、三年目の正月も益々志望者が増えた雪牙隊は大所帯となり、璃内へは戻らず。誰も住まわぬ最北の不毛な土地であった干浬は今や、ちょっとした里へと変化しつつある。

「かせんさま、みやこからしらびょうしが来たって。かぐらやるんだって。みに行く?」

「おや、おみちさん。そんなに急ぐと転びますよ。気をつけて。神楽ですか……。璃玖さまが戻られたら聞いてみます」

 おみちの隣に居る女童は見たことがない。奏花がにっこりと微笑むと、女童はおみちの後ろへ隠れてしまった。

「おみちさん、そちらのお方をご紹介していただいてもよろしいですか」

「たかいこちゃんだよ、おっとうが新しく雪牙隊に入ったの!」

「はじめまして」

 消え入りそうな声で挨拶した女童へ、しゃがんで視線を合わせる。

「初めまして。以斉奏花と申します。よろしくお願いいたします」

「……はい」

 たかいこはまるで初めて見る生き物を眺めるように奏花を見つめ、それから目を伏せた。奏花を初めて見た人間は老いも若きも男も女も皆、同じ目をする。

「おみちさん、また璃玖さまと遊んで差し上げてくださいませ」

「……っ、うん」

 璃玖の名前が出た途端、襟を直すように弄っておみちは駆け出した。弾かれたようにおみちの後を追いかけるたかいこの小さなくるぶし辺りを眺める。幼い頃から璃玖の後を付いて回っていたが、女の子は精神の成熟が早い。

「花仙様、さっき行商人が探してましたよ。庵の方へ参ります、と」

 頼んでおいた乳鉢でも持って来たというのだろうか。頷いて商家の並ぶ結界や雪牙隊の詰所とは反対側の通りへと首を巡らせる。

「ありがとう、つうさん。ご主人と先ほどお会いしましたよ」

「あの人、また遊女眺めてにやにやしてたんでしょ!」

「あはは」

 そうです、とは言えずに笑顔で濁す。里の中に引いた温泉の源泉で野菜を蒸していたつうがふと手を止めて懐かしむ目をした。

「あたしら初めてここへ来た時には、雪牙隊の詰所しかなかったのにね……」

「ええ。随分人が増えましたね」

 雪牙隊の報奨は璃内の衛士より倍近く高い。まずは娯楽が。それから衣食が。そうしてどんどん商人が住み付き、今や干浬はちょっとした最北の里だ。何より雪牙隊の活躍を見て物語にするため、白拍子や琵琶法師などがこぞって訪れるようになった。幼き獣の若君が雪影を倒す物語が都で人気だと、真面目一本やりの口茄上くなかみ家当主の文に書き記してあった程だから、かなり有名なのだろう。

 その上禄花が塩の作り方だの甜菜栽培だの薬草採取だの、兵士の家族に教えて回ったものだから報奨以外にも懐が潤い、益々消費の盛んな土地となって商人を呼びこんでいる。

「夏の間は駐留する兵の数を半数以下に減らすだろう。そうなると夏に璃内へ戻る兵士たちの禄が減る。夏の間璃内へ戻る兵士たちへの手当てが必要だ」

 塩だの薬草だのはその夏の間の禄を補うため、のようだ。禄花のそんな手厚い考えに兵士たちはまた、雪牙隊への兵役を望む。

「そういえば、新しくお役目に就く方がいらっしゃるようですね。さきほどおみちさんにかわいいお方を紹介していただきました」

「ええ、ええ。阿兼あかね殿の娘さんでしょう? 家族で干浬へ越してきてそりゃもうやる気だそうですよ」

「阿兼殿、ですか」

「ええ。ほら、あそこで今洗濯している方が奥さまで」

 つうが指をさした先、数人の女人が洗濯をしながら賑やかしく話をしている様を目路へ入れる。詰所を中心に建物を増やして行く際、禄花は温泉と川の水を道に沿って張り巡らせた。不浄の物を流す木枠で囲われた水の道、それから洗濯や炊事に扱える石で囲った水の道。そうすることで疫病が減るだろう、と禄花は言っていたが先日まだ満足の行く結果を得られていないと話していた。

 物見櫓から雪影出現を知らせる木札を打つ音がした。つうが櫓を仰いだが、通りを行く者たちはさして気にせず行き交う。庵の方から、馬を駆る璃玖の姿が見えた。

「璃玖さま、お気をつけて」

 声をかけると奏花へ目をやり、一つ頷いて荊の結界へと駆けて行く。

「若君は凛々しくおなりになって。体と口ばかり達者になったうちの六太とえらい違い」

「ふふふ。それでも璃玖さまの一番の友は六太さんですよ」

「恐れ多いですよ、璃玖様は今や夏の雪牙隊をお纏めになられる立派なお方。うちのを初めみんな頼りにしております」

「ありがとうございます。わたくしの我儘で冬の間は雨辺山へ戻らせていただいておりますので、璃玖さまも夏は皆様のお役に立ちたい一心なのでございましょう」

「本当にご立派なお方ですよ。花仙様も、若君も。雪牙隊の者は感謝こそすれど、悪く思う者などおりません。そうだ、庵の祠へこれをお供えしてくださいませ」

「ありがとうございます、おつうさん」

「いいえいいえ、あの大神さまの祠は旅のお守りに霊験あらたかと商人にも有名なのですよ。宜山の祠も雨辺山の祠も、わたしらが璃内へ戻る時に必ずお参りしております。ところであの祠は何の神様をお祀りしておられるのですか?」

「早駆け様です。皆様が璃内へ帰られる道中の安全を願って祠を建てました」

「ああ。何から何までお気遣いいただいて。ありがとうございます、花仙様」

 差し出された蒸し魚を受け取り、つうに挨拶をして庵へ歩き出す。途中で兵士たちと引き上げて来る璃玖と行き会った。

「璃玖さま」

「奏花。庵へ行くの?」

「はい。行商人が訪ねて来たとおつうさんが教えてくださったので」

「じゃあ、乗って」

 馬上から差し伸べた璃玖の手を取る。片手で奏花を引っ張り上げると自分の前へ座らせ、手綱を握り直して軽く馬の腹を蹴った。馬がゆっくりと歩き出す。

「もう染色月そめいろづきですね。そろそろ雨辺山へ移り住む準備をしなくては」

「うん。やっと奏花と二人きりだ」

「楽しみです、璃玖さま」

「璃玖も楽しみ」

 他人が居る時は「私」などと大人のように振る舞う璃玖も、奏花と二人きりだと昔と口調は変わらない。

「そういえば、おみちさんが白拍子が来たので神楽を観に行きませんかと言っておりましたよ」

「みち? あやたちと行けばいいのに」

 同じ年頃の女の子たちの名前を挙げて首を傾げる。璃玖の方はまだまだ、そういうことには疎いようだ。

「奏花は?」

「はい」

「奏花は神楽、観たい?」

「わたくしは……神楽を観るより、璃玖さまを膝枕して龍笛を吹く方がようございます」

「じゃあ、そうしよう?」

「はい」

 染色月の中頃には煉義が璃内から戻って来た。奏臥と共に煉義へ引き継ぎをして、璃玖は夏のお役目を終えたことになる。

「では父上、母上、煉義殿、皆様。冬の間お暇いただきます」

「おじい様。春には戻って参ります」

「うむ。春になったら冬の間に習った笛を聞かせておくれ、璃玖」

「はい」

 璃玖と二人、梔子でできた香鵬の背に乗り干浬を後にする。雨辺山の住まいは既に梅花たちに掃除を頼んである。紗布をくぐって廂から母屋へ。御帳台へ寝転がった璃玖が奏花を呼んで手を伸ばす。

「お行儀が悪うございますよ、璃玖さま」

「おじい様も皆もいないのだからいいでしょう?」

「ええ」

 くすくすと笑い合って額を押しつける。干浬で気を張っている分、雨辺山へ戻ると璃玖は甘えたになるようだ。

 そうして干浬と雨辺山を行き来する暮らしにも慣れた、四年目の正月前。璃玖が十歳になる年のことだった。

「お方様ご懐妊につき、今年の正月はぜひ璃内へお越し願いたい、と」

 雨辺山には結界が張ってあるので、山の中には入れない。代わりに建てた雨辺山の麓の大神を祀った神社に志出家の使者が必死で頭を垂れている。干浬の庵、宜山の麓、そして雨辺山。それぞれの祠は奏花と、奏花が直接の対面を望まぬ者との連絡場所も兼ねている。

「梅花」

「はい」

「文を受け取って来てください」

「はい」

 どうせ碌なことは書いてないだろう。梅花に文を受け取らせ、使者には早々に立ち去るよう告げる。お方様がご懐妊したので今年こそは挨拶に来てほしいということと、奏花に会いたいと意味もなく繰り返すだけの文にうんざりして庭へ放り投げる。

 勉学の合間の息抜きに狩りへ出かけた璃玖がそれを拾い上げた。

「……おじい様に言わなくては」

「必要ありませんよ。これから断りの文を書きますゆえ」

 璃玖さまが捕まえて来た雉は末醤みしょうを使って汁物に致しましょうか。答えて文机を出してから、はたと手を止める。狩って来た雉を梅花へ渡し、廂から母屋へ入って来た璃玖へ向き直る。

「璃玖さま、弟君が生まれたらお会いしとうございますか?」

「……ううん。その子には母君が居られるのでしょう? なら、璃玖は会わない」

「何故?」

「志出の家はその子の物だよ。璃玖の物じゃない。璃玖は元服したら、おじい様にお許しをもらって以斉の名を名乗りたい」

 立ち上がって、奏花の肩辺りにある璃玖の頭を抱き寄せる。

「じいじもばあばもきっと喜びます」

「奏花は?」

「はい」

「奏花は嬉しい?」

「そうですね……。それが、璃玖さまがお選びになったことならばどんな道でも奏花はお支え致します」

 それでも、璃玖は志出家の嫡男である。権利はある。道理として考えれば、あの愚かな領主よりは璃玖の方が何倍も領主に相応しいだろう。しかし本人が望まぬのならば、それはただ単純に奏花の不満でしかないのだ。

「……璃玖さまに嘘は吐けませぬね。本当はわたくし、憤っております。父上が何を言おうとも、『璃玖は私の子だ』と言わぬ璃貴殿に。璃玖さまの処遇を改めようとはしないくせにわたくしを呼びつけようとする鈍感さに。璃玖さまのお心が如何なものか省みようとせぬ愚昧さに」

 さらに真実を言うのならば憤ってなどいない。ただただうんざりしている。璃貴の愚かさに飽き飽きしている。それでも一応、両親の手前殺さずに相手をしなければならないことに、辟易している。とうに璃貴への礼儀など持ち合わせていないが、それでも両親が踏み潰さずにいる鼠を、どうして奏花が奏臥と禄花を差し置いて踏み潰すことができよう。奏花が礼を尽くしているのは璃貴にではなく奏臥と禄花に、だ。それすら理解できず奏花の足元をうろちょろする鼠を踏み潰すことを我慢するというのは、中々に苦行であるというだけだ。

 璃玖の腕が奏花の腰を抱く。強く、きつく力が込められた腕に身を任せた。

「璃玖の代わりに奏花が怒ってくれるから、璃玖は父上を恨まずに済むんだ。ありがとう、ごめん」

 ああ、この子はとうに諦めてしまったのか。あの男に憤ることも、期待することも。しかしそれは冷静で正しいのかも知れない。

「奏花はいつまでも璃玖さまの味方です」

「うん……」

 奏花の肩へ顔を埋めた璃玖の髪を撫でる。青銀色の髪はまるで、深く降り積もった雪のようだ。深く息を吸い込んだ璃玖の背中を撫でさする。

「璃玖さまは、璃玖さまのなさりたいようになさってくださいませ。わたくしは璃玖さまのなさりたいことをお支えします」

「……うん」

 琥珀色の瞳がとろりと解ける。その目玉は炙れば琥珀のように若木の香りが立つだろうか。抉り出して舐めしゃぶりたい衝動を堪える。

「さ。夕餉までの間、火鉢へ当たって暖を取ってくださいませ。奏花はその間に文を書いてしまいますゆえ」

 璃玖を火鉢の傍へ座らせ、自分は文机の前へ戻る。もはや粗相のないようになどと考えもしない。簡潔に断りの文言を入れて文を脇へ置いた。

「梅花。墨が乾いたらその文を璃内の志出家へ」

「はい」

 璃玖がちらりと文を覗いて微かに笑う。文机を片付けて火鉢の傍へ座り直す。

「酷いですよ、璃玖さま。これでも手加減した方です」

「ふふっ。だって『今年は雪深く、かの地より璃内は遠く足を運ぶこと叶いません』なんて」

 きっと父上は奏花がまだ干浬に居ると勘違いなさるよ。笑う璃玖の頬を軽く摘む。

「だって本当に今年は雪が深うございますれば。勘違いなどさせておけばいいのです。じいじとばあばが怖くてさらに催促することも叶いますまい」

 奏花は冬の間、雨辺山で誰にも邪魔されず璃玖さまとのんびり過ごすと決めているのです。夕餉が終わったら雪見をしましょう。降り積もった雪の上に花を降らせましょう。とても綺麗ですよ。

「奏花は不言花いわぬはななれば。不言花に返事を問うお方が愚かなのです」

「物申す花なのに、不言花とはこれいかに」

「おや、璃玖さまお上手」

 うふふ、ははは。二人の笑う声に梅花たちも笑う。深い山の中とは思えぬ光景だ。夕餉を済ませ、雪の上へ花を降らせて遊ぶ頃、禄花の莉蝶が飛んで来た。

「奏花、あの阿呆から文が来たか?」

「参りました」

「断って良いぞ」

「既にお断りの文を出しました」

「それでいい。私からも断っておく」

「おばあ様。奏花は文にまだ干浬に居るようなことを書いたので、父上は勘違いなさると思います」

「はっはっは、そりゃ愉快だ。己れもこっちにまだ奏花たちが居るようなふりをしておく」

「お願い致します」

 ふうわりと消えた莉蝶を目で追う璃玖を見つめる。元服まで後、二年。そこで一つの区切りが来る。

「さ、璃玖さま。今日は寒うございますから、早めに休みましょう」

「奏花は寝ないのに?」

「奏花は、一人で暮らしていた時は寝ずにおりました。今は違います」

「?」

「眠る璃玖さまを眺めております。奏花が一日で一番好きな時間でございます。ですから璃玖さま、どうかせめて璃玖さまが元服なさるまで奏花の好きな時間を奪わないでくださいませ」

「……ん」

 奏花の腕の下から背中へしっかり手を回し、強く抱きしめられる。

「元服しても傍に居て。……璃玖がずっと干浬に居ると言ったら、奏花は一緒に居てくれる?」

「璃玖さまが、奏花がお傍に居てもいいとおっしゃってくださるのならば、ずっと」

「ずっと、傍に居て」

「はい、璃玖さま」

 ああ、璃玖さま。いつまでもずっと。この先もずっと。いつでも壊せる柔い肉の塊でいてくださいませ。愛しい愛しい、愚かな肉塊。いつか奏花を壊す銀の狼。あなたの絶望の顔と、恍惚の顔。わたくしは一体、どちらを望んでいるのでしょう。

 瑞々しい若木の香りのする手を取り、寝所へ誘う。いっそこのまま、骸になるまで抱いていようか。袿を被せて抱きしめる。ああ、璃玖さま。決めました。もしも、あなたを殺すような事態になった時は。

 不言花の海で窒息させましょう。あなたが好きな、わたくしの花です。ですからどうか、最期まで溺れていてくださいませ。真を言わぬ、穢れたこの白い花に。

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