嘘だ!

 「嘘をつくな!俺は玲歌を信じているし、あいつは無事完治して俺と一生過ごすんだ!」

 俺は現実を受け入れられなかった。玲歌を少し前まで信じられていなかったくせに。

「嘘じゃない。毎週来ているならわかるだろ?秋ごろ転院してから半年。よくなった時があったか?」

 俺は毎週玲歌に、会うことばかり考えていたが半年も経っていた……自分でも驚く。そして、よくなっていた時はない……

「じゃあどうすりゃ良いんだよ!俺はただ見ていることしかできない。一緒にいるのも休日の少しだけ……俺に何ができるんだよ!なんでそんな事実を俺に伝える。」

 俺は睨んだ。睨むことしか出来ない。

「お前には少し協力してほしいんだ。俺は研究者でな、1年前、猿にマウス段階の薬を投薬して暴れさせてクビになったんよ。だから暇だし医者してた。嫁さんとは学生時代出会ったけどよ、俺金あるのにそんなことばっかりしてるからいつ収入がなくなるかわからないから仕事辞めないから!とか言われたけど。

 そんな研究者な俺だけど、あんたの彼女、玲歌は公にできない病かも知れないんだ。今のところメカニズムは未解明ってことになっているけど、何か微細な物質が関与している可能性がある。それをどう除去するか研究したいが、その物質自体が特殊な物だからバレたら実験体かもな。そこで取り引きだ。俺の研究所を作る。お前はその上に家を建てろ。そしたら秘密裏に研究できる。金は出すぞ。未知の物質の研究なんかワクワクしかしない。それに細胞を破壊するなら狙った細胞を破壊させるように出来たら大金持ちだぞ!」

 急展開過ぎてついていけないし、急に話し過ぎて理解が追いつかない。

 わかったのは、この医者はマッドで嫁はこいつがクビになっても食っていけるように働いていること。

 そして俺が持ち家を持つ?家は欲しいけど、玲歌と一緒に住んで子供に囲まれてって未来には大きな家が必須だけど……

 家の地下に秘密裏に研究所を作って玲歌を治すって?

 玲歌が治るならなんでもしてやる。もし金無くなっても、自己破産しても何してもいい。保護者の問題は絶縁でも覚悟でいい。

 でも家あげるから研究させてねってそんなうまい話あるか!

「嘘だ!玲歌を好き勝手するつもりだろ!俺の玲歌を渡さない。」

「いやいや、細胞の培養だの取り出した物質をマウスに投与するとか色々やるには研究所が必要なんだよ。心配なら上が家なんだし二人で住めば良いだろ。俺はたまに客間でも貸してもらえれば。」

 一理あるけど、なんでそんな突拍子もないことするんだ?金はどこから来るんだよ。嫁さんに怒られるぞ。色々言いたいことはあったけど、俺の答えは一つ。

「玲歌が助かるならお願いします。」

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