列車で行こう
今日は週末だ。俺は列車に乗り県を跨いで病院へ、玲歌を愛している玲歌の顔を見に行く。
中学生に金などない。今まで玲歌と遊ぶ以外に金を使ってこなかった分、小遣いやお年玉がたんまり溜まっていたため、毎週病院へ通えている。
本来なら特急を使って会いに行きたい。特急で向かえば面会時間をフルに使える。
しかし、金がない。特急で向かうと倍近くかかる。週に2回会うのと1回会うのでは大きな違いだ。少し会う時間が短くても鈍行で行く。
始発で向かう。そして補導される時間ギリギリに家に着く電車に乗る。本来なら面会時間が過ぎてすぐのに乗れば余裕で着くのだが、玲歌の近くに居たいと思ってギリギリまで病院の近くにいる(ほんとやばいやつ)
会うたびに弱々しくなって行く玲歌を見ると、本人の前で笑うのが精一杯だった。
今日も始発で向かい病院へ着く。すっかり顔パスになっている受付を通り玲歌の部屋へ。
「玲歌〜今日も来たぞー」
出来るだけ明るく、玲歌の前では明るく……そう玲歌には不安を感じさせないように。玲歌が一番不安なんだろうから。
「おはよう、刃……」
迎えてくれた玲歌はとても弱っていた……
無理矢理作った笑顔で玲歌に話す。始めの頃は学校の話をしたら悲しいかなと思いしていなかったが、本人曰く俺の生活を知りたいから話せとのこと。
「学校で変なやつに絡まれたけど玲歌を守るために鍛えてたから問題なかったよ!だから退院したら俺に守られてくれよ」
そんなクサいセリフを言って後悔したりと楽しい時間が過ぎた。
夕方面会時間ギリギリまでいる予定だったが、玲歌が疲れたのか寝てしまった。寝顔を見ていても良いが、さすがに申し訳ないから帰ることにした。
病院を出て近くの公園へ向かう。初めてこの病院の近くにいたいと思っていた時に偶然見つけてからいつもここに来る。
「うぁぁぁ」
泣いた……玲歌が治りそうにもなくて泣いた。俺から玲歌を奪わないでくれ……玲歌が居なくなったら俺はどうすれば良いんだよ。
『俺は何も出来ない……医者も何も出来ない……玲歌……お前死んでしまうのか?俺を一人にするのか?嫌だ……嫌だ!嫌!嫌!嫌!そんなの嫌だ!俺はなんで何も出来ないんだよ!医者も医者だすごい人かも知れないけど治せないなら医者を辞めろ!玲歌を治せるならなんだってする。金が必要なら臓器の一つや二つくれてやる。俺が死ねば玲歌が生きられるならそれでも良い。玲歌は悲しむだろうけど、俺は玲歌の死を受け入れられない。』
涙も出ないくらい泣いた。無力な自分に泣いた。そして気づいた。俺は玲歌を信じてあげてない……
玲歌が治ると信じてあげられる人がいなかったら必死に生きようとしている玲歌に申し訳ないじゃないか!俺はなんでバカなんだよ!俺はとにかく信じて待つしか出来ないんだよ!無力でもいい、玲歌を信じて、玲歌を一人にしないでいることが大切だ。そう気づいたら少し落ち着いた。
「おい、小僧話がある。」
玲歌を治せない医者だ……優秀だろうが玲歌を治せないやつは敵だ。ヤブ医者だ。
「おいおい、なんだその目は……彼女が治らないから俺を憎んでいるってか?それこそヤブ医者め……とか」
なんだこいつなんで俺の心を読む。
「玲歌を治せないヤブ医者って思っていたのは事実です。あなたが優秀な人というのは聞いています。しかし、玲歌が治らないのは事実。俺はあなたを信じられない。」
「あーそれそれ、治らないのはさ、治療と研究がこの病院じゃ無理だから。それこそもう少し良い施設あったらせめて延命はできるかも知れないけどここじゃあと1年ってところだろう。」
1年……?延命……?嘘だろ……そんなのないだろ……
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