第3話 情報の収集

 少女―――【セーラ】はウサギの獣人で10歳。

 ここ王都の一角にあるスラムに住み着いた孤児だった。


 

 俺は、俺の姿が見えて、話が通じる彼女といろいろな話をした。

 トイレのすぐそばに置かれたベンチに座って会話をしたのだが、よく考えれば俺の姿はセーラ以外には見えてないんだから、セーラが独り言を呟いているように見えるよね。


 通りを歩く人々が、何か見ちゃいけないものを見たような顔をして早足て立ち去っていく。

 ゴメンよ。

 でも、ここしか話せるところがないんだよ。


 俺がそう謝罪すると、セーラは人好きのする笑顔を浮かべると、俺のわがままを許してくれた。


「大丈夫。スラムの子のことなんて誰も気にしないから」


 そんな訳で、俺はセーラの優しさに甘えて情報交換に勤しむことになったのだった。

 


 俺の方は前世で死んでこの世界に転生したこと。

 そして、このトイレから外に出ることが出来ないこと。 

 それらをセーラに話す。

 すると、セーラはそれを一切疑うことなく信じてくれたようだ。


 ねえ、大丈夫?

 おっちゃん、ちょっと心配だよ? 



 そして、少女からはこの世界のことや、彼女の生い立ちについてを聞いた。



 その結果、彼女はスラムの住人でありながら、スラムにほど近いこのトイレの掃除を自主的に行っているこころ優しい少女であることが判明した訳だ。


 どうしてそんな一文の得にもならないことをしているのと尋ねた俺に、彼女はとても可愛らしい笑顔で答えてくれた。



 ――――トイレには それはそれはキレイな神様がいる。

 だからいつもキレイにしていたら、神様みたいにキレイな娘になれる、と。



 おい、どこぞのヒット曲みたいなことを言っているぞと思った俺は悪くないはず。

 だが、セーラは祖母から聞いたその言葉を信じて毎日毎日トイレの掃除に励んでいたようだ。


 そうしたら、俺と出合ったと。


「こんな幽霊でゴメンね」


 俺は素直にセーラに謝罪する。


 きっと神様がいると信じてトイレ掃除をしてたら、こんな幽霊が出てきちゃうんだもん。

 そりゃあ、気分も害するよね。


 そう思っての謝罪だったが、セーラは真面目な顔でそれを否定する。


「ううん。私、こんなにキレイな人を見たことない。だからあなたはきっと神様」 

「いやいやいやいや……、そんなに気づかってもらわなくても……」


 僕がそう否定すると、少女は身を乗り出して力説する。


「ホントよ!その黒髪は艶やかで美しいし、切れ長の目で整った鼻筋。背も高くてこの世の人とは思えないくらいにキレイなんだもん。絶対に、絶対に神様よ!」


 おっ、おおう。


 まさか、こんなに面と向かって褒められるとは思っていなかったよ。

 鏡もないので自分の顔を見ることが出来ないが、黒髪ということは前世と同じ容姿なのかなと思う。

 だが、前世の俺は切れ長の目でもなければ鼻筋も整ってないぞ。

 むしろ、チビでデブだったはずなのに……。


 そんな風に考えていると、セーラはまだ疑っているのかと畳み掛けてくる。


「それに、優しい笑顔には心が癒やされるし、澄み切った声は心を洗われるもの」


 まさに褒め殺し。

 そこまで言われるなんて思ってもいなかったよ。


「ご、ごめんよ、もう……もうそれ以上褒めるのはやめてよ…………」


 俺は思わず顔を抑えて、激しい羞恥心を堪えることでいっぱいだった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


なかなか物語が動かない。

もう少しお付き合い下さい。



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