☆人類移住計画☆

大きな国の大きな会議室


そこには各国からの要人や研究者が集まっていた


「小惑星が地球に衝突するのは間違いありません」


「なんとか回避する方法はないのか?」


「小惑星の軌道を変えるか、地球の軌道を変えるか

どちらにせよ物理的に不可能です」


「小惑星が地球に衝突すれば、人類は滅亡するでしょう」


「何か方法は無いものか・・・」


「核を惑星に撃ち込んだらどうだ?」


「それも考えましたが、小惑星と言っても巨大で、核を何千発撃ち込んでも、表面に傷が付く程度です」


すると、一人の科学者が発言した


「最近発見された、地球に似た星に移住するというのはどうでしょう?

地球に似たと言っても、そこまで調査は進んでおりませんが可能性はあります」


一同黙り混んだまま考えるが、他に方法もない


「その星の調査を進めながら、他に方法がないかも再度検討してくれ」


そして、この日の会議は終わったようだ


地球に似た惑星


いや、地球に似てるであろう惑星への移住計画が始まった


宇宙には危険が沢山ある


地球の軌道上にある宇宙ステーションに行くのにさえ、危険が伴うくらいだ


ましてや誰も行った事が無い、未知の危険な場所


誰も命は惜しいのである


言い方が悪いが


全人類の犠牲になってくれる、宇宙飛行士になる人が見つからない


どうしたものだろう・・・


移住計画の担当者は頭を抱える


色々話し合った結果、死刑囚を宇宙飛行士にするという案が出たようだ


「死刑囚とはいえ一人の人間、そんな事は許されないだろう」


「勿論、人権の観点から強制ではありません

しかし、成功したら死刑は白紙撤回、更には衣食住を提供するというのはどうでしょうか

行くかどうかは、死刑囚本人の自由です」


「なるほど、どうせ死ぬならば、チャンスに掛ける奴も出てくるかもしれない」


そうして、全世界の死刑囚に向けて、宇宙飛行士募集の通知が送られた


これが、予想に反して大反響


どうせ死ぬならと募集が殺到する事となる


募集は1人だけなのに対して、何万という申し込みが送られてくる


とにもかくにも、宇宙飛行士の心配は無くなったようだ


早速、宇宙飛行士になる為の適正試験が行われた


ここで、ほとんどの囚人が落とされる


体力的にも知能的にも宇宙飛行士になれそうな囚人はごくわずか


しかし、数人がすべての試験に合格した


この中でも最も優秀な囚人が選ばれる


平行して宇宙船の発車準備も進められていたので、すぐに出発する事になった


宇宙船が打ち上げられ、数ヵ月後に管制塔へ通信が入る


「こちら宇宙船、目標の惑星に近づいた、これから着陸体勢に入る」


「管制塔了解、慎重に着陸してくれ

君には全人類の未来が掛かっているんだ」


宇宙船はゆっくりと目標の惑星に降下していく


その時である


後もう少しで、着陸という所で宇宙船との通信が途絶えてしまったのだ


管制塔では何度も呼び掛けているが全く応答が無い


宇宙船は原因不明で消息を絶ってしまったのだ


「このまま、囚人1人の捜索に時間を費やすのは意味がない

再び宇宙船を打ち上げるしか助かる道はないのだ

全人類を救う為には、少しの犠牲に目を瞑るしかない」


酷かもしれないが、現時点ではそれしか方法がないのだ


再び最終選考に残った囚人の中から、1番成績の優秀な囚人が選ばれた


今度は失敗する訳にはいかない


囚人には宇宙船が消息を絶った事も含めて全てを伝える


「着陸の時に何が起きたのかはわからないが、原因究明をしている時間はない

君は全人類の希望、そして、未来なんだ

無事に戻って来ることを祈る」


そして再び宇宙船が打ち上げられた


数ヵ月後、宇宙船から管制塔に連絡が入る


「こちら宇宙船、今から着陸体勢に入る」


「こちら管制塔、了解した

前回の事もある、慎重に頼むぞ

全人類の命が君の肩に掛かってるんだ」


囚人だって死にたくないのは同じである


言われなくても慎重になるしかない


「雲のようなものを通過中、まだ異常は確認できない」


「了解、しかし油断はするな何が起こるかわからない」


そう交信している間にも、宇宙船は惑星に接近している


雲のようなものを抜け視界がひらけると


囚人は言葉を失った


なんとその惑星は、地球と全く同じにしか見えないのだ


綺麗な花が咲き乱れ、草や木々が生い茂り、川には太陽の光が乱反射している


宇宙船の計器類を確認してみても、大気などの割合が全く地球と同じなのである


いや、文明が無い為に地球より遥かに綺麗だ


「こちら管制塔、今の状況はどうなんだ!」


管制塔が催促してくるが、囚人はそれに答えない


「おい!聞こえてるのか!」


こんな綺麗な惑星を、地球の奴等に教えるなんて勿体ない


この惑星は俺の物だ


囚人はそう考えると、ゆっくりと通信装置のメインスイッチを切った


管制塔では担当者が叫んでいる


「おい!どういうことだ!また宇宙船との交信が途絶えたぞ!」

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