☆博士と助手【物体転移装置】☆

ある所のある研究施設


この研究施設では日々発明に取り組む、博士とその助手が居た


「ついに完成したぞ!その名も物体転移装置じゃ!」


博士が興奮した様子で言う


「博士、とうとうやりましたね」


「自分で言うのもなんじゃが、この発明は世界に類を見ない発明じゃ


世界の歴史に私の名前が刻まれるじゃろう」


実際、この類いの発明は現実に不可能だ、と思われてきたのだが、博士はやり遂げたのである


助手が博士に言う


「ところで博士、凄そうなのはわかるのですが、具体的にどこら辺が凄いのでしょうか?」


「一緒に研究しててそんなことも分からないとはの・・・だから君は助手のままなのじゃよ・・・」


少し呆れながらも、博士は説明を始めた


「よく聞くんじゃぞ

これは物体転移装置といって、物体を瞬間移動させる装置じゃ

有機質の物ならば分子レベルに分解し、違う場所で再構築できる装置じゃ

まぁ、君に難しい事を言っても理解出来ないじゃろう


「博士!とにかく凄い物なのですね!」


返事だけは誰にも負けない助手である


「百聞は一見に如かず、見れば凄さはわかるはずじゃ」


博士はそう言うと、いきなり服を脱ぎ出した


助手が慌てて言う


「は、博士っ!

私は博士の裸を見ても、凄いとは思いません!

嬉しい気持ちはわかりますが、服を脱ぐほどの気持ちも理解できません!」


「何を言ってるんだ、馬鹿者が!

この装置は、有機質の物体しか移動出来ないんじゃ

無機質な物は着てても意味がないじゃろ」


「そういう事ですか、博士が正常で良かったです」


納得した助手を後目に、博士は装置に入る


博士が入ったカプセルは隣の部屋にもあり、このカプセル間を瞬間移動するという算法だ


博士がカプセルのような装置に入ると、助手にスイッチを押すように促す


それを確認した助手はスイッチを押した


室内に重く鈍い音が響き渡り、カプセルからは強い光が漏れる


そして、光が徐々に収まり、再び室内に静寂が戻ると、助手はカプセルの覗き窓から中を覗いた


勿論、博士は居ない


覗き窓は少し小さいものだったが、ほぼ内部を目渡せる為、隅に隠れる事など不可能であるし、そもそも隠れる理由もない


そして、助手が覗き窓から視線を外そうとしたとき、カプセルの隅に何か黒い物が見えた


なんだろうと思い、再び覗き穴から中をよく見る


その途端、助手の顔から血の気が引く


それは髪の毛のようなものだった


正確に言うと、頭皮が付いた髪の毛である


助手は博士がバラバラになったと思い、急いでカプセルのドアを開け、中を確認する事にした


しかし、カプセルの中にはバラバラになったであろう、他の部分は見当たらない


バラバラになったまま、隣の部屋のカプセルに移動したのかもしれない


そう思い、急いで隣の部屋へ向かう助手


隣の部屋へ移動し、恐る恐るカプセルの覗き窓を覗いた


すると、そこには博士が居た


助手が急いでカプセルのドアを開けると、博士がゆっくりと出てくる


「博士!大丈夫ですか!」


「だ、大丈夫だ・・・じ、実験は成功だ」


少し顔を赤らめた博士が、頭を光らせながら呟いた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る