☆眠り姫☆
目覚ましの音で目が覚める
どこにでもいる普通の少女
寝惚けながらも布団から起き上がると、目を擦りながらリビングへ向かう
「お母さん、おはよー」
「あら、おはよう
たまには寝坊してもいいのに」
母親は笑いながらそう言って、朝食の準備を続ける
少女はそのまま、朝食が並ぼうとしているテーブルに着いた
「お母さん、私最近眠くてしょうがないの
どうしてだろう?」
「そんなの気の持ちようよ!
しょうもない事言ってないで、ご飯食べちゃいなさい」
母親に軽くあしらわれたが、少女からしてみれば本気の悩みだったのである
そう、それは二日ぐらい前から始まったのだ
今まで1度も寝坊したことがなかった少女が、初めて寝坊をしたのである
目覚ましが鳴る前に起きていたぐらいだったのだが、1時間も寝過ごしてしまったのだ
それだけならまだ普通だが、次の日も更に寝過ごしてしまう
流石に今日は寝過ごす訳にはいかないと、早めに寝た甲斐があったようで、何とか起きる事が出来たようだ
勿論、それ以外の生活は全く普通なのは言うまでもない
しかし、それは始まりに過ぎなかった
次の日、中々起きて来ない少女の部屋をノックする音がする
「いつまで寝てるの!学校に遅刻するわよ!」
母親がいくら話し掛けても返事は返ってこない
「どうしたの?!返事ぐらいしなさい!
もう開けるわよ!」
母親は、また寝坊だろうと思いながら、少女の部屋のドアを開けた
時間にしてどれくらい経ったかわからないが、母親は娘を起こそうと、声を掛けたり揺すったりしたのだが、全く起きる気配がない
少女は何事もなかったかのように眠っていた
こんなにしても起きないのは、普通ではない
そう思った母親は、ケガなどしていないか確認するが、そんな形跡も全くない
どう見ても、眠っているだけなのである
あと考えられるのは、突発性の病気か何か・・・
母親は急いで救急車を呼ぶことにした
病院に着くと、緊急で精密検査が行われる事となり、母親は待合室で待つように言われる
かなりの時間が経つと、主治医から呼び出しがあった
「結論から申し上げますと、娘さんは健康体で、眠っているだけだと思われます」
「えっ!?」
驚いている母親に主治医が続けて話す
「眠っている人と何ら変わらない状態、にもかかわらず意識だけが戻らない
今までにこんな症例は見た事がありません
しかしながら、この状態が続くようであれば、食事が出来ないので点滴などによる栄養補給が必要になります」
母親もどうしたらいいのかわからず、娘を入院させる事しか出来なかったようだ
そして、丸1日が経った
病院のベッドの横では、母親が徹夜で寄り添っていた
「お母さん、おはよう」
うとうとしていた母親は、その声ですっかり目が覚める
なんと、娘が起きたのだ
「お母さんここはどこ?」
母親の心配をよそに、娘はあっけらかんとしている
「良かった、本当に良かった
もうこのまま目が覚めなかったらどうしていいかわからなかった、本当に良かった・・・」
結局の所、病院のほうでも原因がわからずじまい
検査の結果通り、健康そのものなのである
念のため1日様子を見てから退院する事となった
そして、次の日・・・
またしても娘は起きない
今度は丸3日起きなかった様だ
しかし、4日目には目覚めて食事もするし、普通に生活できるのである
そして、一週間後に目が覚めて
そして、1か月後に目が覚めて・・・
医者が少し深刻な顔で話す
「いまだに原因がわかりません
少しづつ睡眠時間が増えているのは確かなのですが、その他は全くわからないままです・・・」
「先生!なんとか治してあげて下さい!
たった1人の娘なんです!今回だって1年も寝たままなんですよっ!」
「こちらとしても最善は尽くしているんです
しかしながら、世界中を見てもこのような症例はないので、私共も手探りで対応するしかないんです
わかって下さい」
そして、1年間眠っていた娘が目覚めた
勿論、健康そのもので1年も寝ていたようには見えない
しかし、母親としては次眠ったらどれくらい起きないのか、そればかり心配してしまう
起きてくれるならまだしも、もうずっと起きないんじゃないだろうか
そんな事まで頭をよぎってしまう
母親は精一杯の笑顔で、精一杯の愛で寄り添い、限られた時間の中ではあるが、精一杯少女と過ごした
そして、少女が眠りについても、枕元を離れる事はなかった
「神様どうか娘を、普通の女の子に戻してあげて下さい・・・」
もう何度この言葉を言っただろう
「神様この子の代わりに私が・・・」
もう何度願ったであろう
神様にはまったく願いを聞き入れてくれない
母親はそのまま娘の枕元で眠りについた
「お母さん!起きて!お母さん!」
そんな娘の声で目が覚める
「え!」
母親は飛び起き、すぐにカレンダーを見る
1日しか経っていない
娘とカレンダーを交互に見ながら、しばらく動けない
「お母さんおはよう!」
満面の笑みで、挨拶する娘
母親はおはようも言わず、娘を抱き締めた
神様に願いが通じたのか定かではないが、この日を境に睡眠時間も普通に戻り、以前と変わらない生活が出来るようになったのだ
医者も原因はわからないものの、元に戻り健康であるならばと、退院を認める事にした
家に戻っても普通の幸せな生活が続く・・・
幸せな生活が・・・
「お母さん、昨日から眠れないの
この前は丸1日眠れなくて・・・」
「もう、夜更かしばっかりしてるからでしょ!」
しかし、3日間眠れない・・・
そして一週間眠れない・・・
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