第39話 うさぎおいし
キィン!!
「シッ!」
ザン!
ドドドドドドドド!!
「うわああああああ!」
ダメだ! 相手の動きなんて読めねぇ!
また殴り殺されるのか?
いや、僕だって視える!
そうだ。
僕には奴のアストラル体やエーテル体が視えている。
ユラユラ、ユラユラと。
動く瞬間にアストラル体は残像の様に揺れる。
それはきっと次の動きを意識してその方向に揺れるのだろうと思っている。
がしかし、
僕の身体能力をもっと上げたい。 巨人族は身体の成長過程で
確かにハイモスさんの身体を使う時は身体能力も上がっている感覚はある。 しかし、身体が大きいと言うデメリットも付属してくるのだ。
先日食べたミノタウロスの肉から得た遺伝子情報からのスキルに【剛腕】と言うスキルがあったが、今必要なのはそんなものでもない。
僕はもっと根本的に強化したい。
ウサギの前脚でアダマンタイト合金の身体にどうしてダメージが入るのか。 そこに鍵があると思っている。
見るんじゃない、もっと
さあ、来い! そして
僕は構えるのをやめて、
防御に徹する! そして眼に集中して、
【霊魂可視化】相手の霊体を
そう言えば?
あの角。
無駄にエーテル体が集まっていてグルグルと色濃く
刹那、奴が攻撃に転じて撃って来る。
速い。
速いが、集中しているのでなんとか眼では追えている。
全く
ダドドドドッ!
「くっ……そう! もっとだ!!」
ダン! ダダン!!
憎らしいくらいに軽いステップを踏んで、僕の視覚を翻弄しようとして来る。
ドン!
ドドドドドド!!
練り上げたエーテルを受ける部分に集中させて受けてみる。
「つぅっ! ……かはっ! ……まだまだあ!!」
ん、痛いが普通に受けるより幾分マシな気がする。
デンッ! ツタタタタ……
ダム!!
強烈な蹴りが繰り出された。
その脚が一瞬虹色に光って
「ごぶはっ!!」
しかし、まともに食らってしまった。 身体の一部が
すぐに再生しながら距離をとる。 もう一度だ!
同じ攻撃は来ないだろうが、あの角から身体にエーテルが流れている気がする。
ダン!!
ドドドッダダン!
ドダダダダダダ!!
「
どの操作も一瞬なので捉え難いが、あの虹色に
エーテルを貯めて置く……?
何処に?
角?
いやいや、角無いし!?
……………。
……あ! あったわ!
「チェンジフォーム! ディアブルホーン!!」
そうして僕はミノタウロスの角を頭に付けた!!
そうだ、とりあえず
やるならとことんだ!
僕は大量のエーテルを集めて魔力を練り上げ、角に集めて行く。 それはもう、ギンギンに!
「ほう……?」
遠くでネモが声をあげた気がするが、集中していてそれどころではない。
とりあえず動いてみる。
動く瞬間に足元に特濃エーテルを送り込む。
……おおう。 速いな。
速く動ける!
眼と脳にも特濃エーテルを!
や?
敢えてこのエーテルで受けてみる!
ダン! ドドドドドドド!!
ダダンッ!
おおう? 痛くない!
全然痛くない!
最後の蹴りでも肉が
よし、コレなら行ける!?
まあ、やってみりゃわかる!!
ザムッ!
僕は踏み込んだ!
ダッ!
だが僕の手はその先だ!
「キュイイィッ!!」
僕の手は
「おう! やったな!」
「はい! 今夜の晩飯です!」
「ああ、頼んだぜ!?」
「任せてください! 僕も腹減りました!」
「だはははははは! じゃあ、
「了解!」
とりあえず一羽だが、確かな手応えだ。 少なくとももうウサギにヤラれる気はしない。
僕はネモさんと他のウサギを回収して、もう三日は待たせているミレディさんのもとへ戻った。
「お帰りなさいませ、マイロード」
「待たせたな! レディ」
「はい、待ち焦がれておりましたよ? マイロード。 お風呂になさいますか? 晩御飯になさいますか?」
「じゃあ、さk」
「それとも、わたくしになさいますか?」
「おい!?」
「こほん……」
「チッ……」
「舌打ち!?」
「じゃあ、レディ……お前にしようか」
「マイロード♪」
「ええええええええ!?」
「何だ? 三日も待たせているんたぞ? お前にはお前の仕事があるだろう?」
「それは……そうですが……わかりました。 僕は先にウサギの下処理をします」
「ああ、そうしてくれ。 行くぞ、レディ!」
「イェス、マイロード♪」
そうさ、わかっている。 僕は
解ってはいるんだが……。
「あん! マイロード! そんないきなり!」
「そう言いながら、こっちの方はしっかりと……いや、しっとりと準備出来ているじゃぁないか!?」
「マイロード……人前ですよ? はした……んっ!」
すっげえ激しいディープキスを胸や股間を触りながらし始めた。 いや、良いけど早く寝室へ行ってヤってくんないかな?
「ここ、調理場なんですけども?」
「ああ、気にしないでくれ?」
「ハァ、ハァ、ハァ……マイロード! んっ!」
「気になるから! 気になるから
「っせーな。 これだから童貞はよぉ。 レディ、しゃあねぇから風呂場へ行こう!」
「ハァ、いぇす……ハァ、まいろ〜……んっ!」
「早く行ってください!」
「ちっ! わーったよ!」
「あん♪」
ネモはミレディの股ぐらに手を回して乱暴に抱え上げ、肩に乗せてミレディのケツを
……正直なところ、ドキドキしている。 しているが、居心地が良いかと言われれば、そうでもない。 むしろ悶々としてむず痒い気分になる。
……シロ……。
いや、シロとそんな風になりたいとかそんなんじゃなく……なりたくない訳では無いが。
童貞の僕はキスだって未経験だ。 順番とかあるだろう? いや、まあ? 付き合ってる訳では無いが。
シロは十八歳。 僕は二十九歳。 犯罪ではないだろう? いや、まあ? 付き合ってる訳では無いが。
僕はシロが好きだ。 それはもう、かなり早い段階で好きになっていた。 これが恋じゃないと人に言われたとしても、僕は恋だと言ってしまえるくらいに、僕はシロが好きだ。
じゃあ、何故何も言わずに飛び出して来たんだって? そりゃ……
ーー自分に自信が持てないからだーー
シロはある程度僕を慕ってくれていると言う自負は無駄に持っている。
しかし、シロのソレが恋だとまでは、僕は思ってはいない。 僕に助けられて、ずっと一緒に居て、ずっとお互いに依存して過ごして来た。 そう、それは依存だと僕は思っている。
勿論、僕の呪いによる懸念も払拭できないのも大きな理由だ。 この呪いだって僕の思い込みかも知れないが、実際に眼前で起きている事象に目を背けることは出来ないのだ。
そして、過去の経験から恋愛に対して臆病になっている。 そう、A君の事件の時、僕が当時好きだった子に、僕が小さな勇気を振り絞って出した正義感を笑われた。 あの人を嘲笑するような小気味悪い笑顔が、トラウマのように頭に小縁付いて離れないのだ。
わかってる。 あの子とシロは違う。 しかし、どうしても人に恋をする事に臆病になってしまっている。
そう、僕は臆病だ。 僕の心はミジンコ並みに小さい。 いい加減人間嫌いにも終止符を打たなければならない。 僕は人を好きになったのだから、人と関わらずに生きて行くなんて道理ではないだろう。
その点、マイペースなネモさんとは距離感の相性が
しかし……そろそろかな?
「おい?」
「はい?」
「めちゃくちゃ良い匂いがするな!!」
「はい、三日ぶりの食事なので気合い入れましたからね!」
「ふぅ……」
長い入浴を終えて、バスローブ姿で風呂場から出て来た二人は、ダイニングキッチンのテーブルに腰掛けた。
僕は二人に
「お疲れ様でした!」
「「「乾杯!」」」
ジャキン!
分厚いガラスのぶつかる音と共に泡が踊り、零れそうになる泡を啜りながらグングン飲んで行く。
良い飲みっぷりだ。
僕は静かにジョッキのオレンジジュースをストローで飲んだ。
〜・〜・〜・〜・〜
『ウサギ料理ア・ラ・カルト』
【ウサギもも肉とセロリのイタリア風サラダ】
・ウサギのもも肉を低温調理し、しっとりとジューシーに仕上げた肉を薄切りにして、セロリ等の葉野菜とパプリカ、ラディッシュを酢、シロップ、パプリカ、柑橘類の汁、ハーブ、スパイス、塩などで作ったドレッシングをかけたもの。
【ウサギ肉のたっぷりワイン煮込み】
・大量の人参とタマネギ、のような根菜とセロリ、ウサギ肉で鍋いっぱいにして、ヒタヒタになるまでワインのみを注ぎ込む。 数種類のハーブで作ったブーケガルニと一緒にワインの汁気が無くなり、全体にとろみがつくまで煮込んで、塩コショウで味を整えたもの。
【ウサギもも肉のロースト】
ウサギの肉に塩コショウとハーブやスパイスで味付けして、たっぷりのオリーブオイル?のような油にニンニクを入れて小麦粉をまぶしたもも肉をじっくりと焼き上げたもの。 マスタードソースを添えて。
【ウサギ肉の唐揚げ】
ウサギ肉を牛乳、卵、ニンニクで作った漬け汁に浸して置く。某フライドチキン風に調合したフラワーを卵液を付けた後にまぶしてからりとなるまで、二度揚げにしたもの。
〜・〜・〜・〜・〜
「おぅぃ!?」
「はい、何でしょう?」
「うまふぎう!!」
「マイロード! 口にモノを入れながら喋るなんて下品ですよ!? もぎゅもぎゅもぎゅ………」
「レディ、お前もか!?」
「だって、美味しすぎて……ごきゅん!」
「まあ、喜んでもらえたなら良かったですよ」
「私の作る料理より美味しいなんて認めたくないものだわ! 悔しいけど!」
「お粗末様です」
「後でこの粗末な料理のレシピを書いておいてくださいね!!」
ミレディさんは非常に向上心が強く勤勉だ。 今までに作った僕のレシピを習得して、上位互換を作ったりしている。
何故、僕に当たりが強いのか……まあ、察しはついてはいるのだが。
「マイロード? 後でデザートもありますからね♡」
「お? おう……」
本当にヒューマノイドなのか?
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