第16話

街中に現れた黒龍のせいで大パニックが起きる

騎士団と数人の冒険者が黒龍の元に集まる

そこにはキッカ、スフィアが居た

リオは鍛冶師達と避難している

黒龍が咆哮を放つ

咆哮をもろに受けた騎士団や冒険者は恐怖を覚える


「こんなの……勝てる訳が……」


人智を超える怪物に怯え逃げ惑う者も現れる


「誇り高きレウリスの騎士たちよ聞け」


1つの声が響き渡る

声のする方に声の主が立っていた

そこにはレウリス王国、国王ログア・レウリスが立っていた

50は過ぎた老人だが威圧感は凄まじい


「戦えば此処で死ぬだろう!怖ければ逃げても構わない。だが愛する者が居るのなら守りたい者がいるのなら!我らが戦う一秒一瞬の時間、たった僅かであっても我らが戦い続ける限り奴の攻撃は守りたい者達には届かない!戦う者は剣を抜け」


国王は声を上げる


「総員構えろ!我らで黒龍を討つ」


一番最初に声を上げた人は騎士団長だった

感化された騎士団員や冒険者が武器を天に向け叫ぶ


「うぉぉぉぉ!!」

「食い止めるぞ!」


黒龍に突撃する


「魔法部隊詠唱始め!……放て!」


魔法が黒龍目掛けて飛んでいく


「喰らえ!」

「硬ぇこれが黒龍か」


剣士や斧使いなどが足元に攻撃を仕掛けるがビクともしない

並の攻撃では鱗に傷1つつけることも出来ない


「そのまま続けてください!」


一人の男性がそう言いながら詠唱を始める

スフィアは魔法部隊に混じりキッカは最前線を突き進む

魔力を込めた剣で何度も切り掛ると少しずつ傷がついていく

(攻撃が通るこれなら!)


「烈火双乱」


前衛がひたすら切り掛る

タンクは攻撃を防ごうとするが防ぎ切れないで吹き飛ばされる


「タンクも武器を取れ、攻撃は各々回避しろ絶対に直撃はするなよ!」

「「はい!」」

「オーラブレイド」


巨大な剣の形を作って切り掛る

咆哮の際に魔力の衝撃波で前衛が吹き飛ばされる

時間かけて攻撃をするが次々とやられていく

キッカも攻撃を受けて体制を崩す

(まずい)

足で踏みつけられそうになる


「キッカちゃん!」


突如現れた巨大なハンマーが攻撃をギリギリ逸らす

そこにはリオが居た

リオはすぐにキッカにポーションを飲ませる


「離れて」

「リオ危険だここは」

「知ってるよ……」


咆哮がまた放たれて2人とも吹き飛ばされる

リオはハンマーで防ぎ多少なり衝撃を抑えたが次のブレスを回避できない


「あっ」

「リオ!」


キッカが急いで向かうが間に合わずリオは炎のブレスに巻き込まれる

ブレスを吐き終えた黒龍はほかの人に攻撃を仕掛ける

リオが居た場所は炎で燃え人の姿は確認出来ない


「殺す……殺す!」


怒りのままにキッカは黒龍に突撃する


「待ちな」


1人の老婆に止められる


「誰?」

「お主は避難せい、そのままでは死ぬぞ」

「あいつはリオを……」

「助けて貰った命を無駄に捨てるつもりかい。若者がそう死に急ぐでないわい」


老婆はそう言って黒龍を巨大な結界に封じる

だがすぐにヒビが入る


「これは骨が折れるのぉ」

「師匠!?」


スフィアが老婆の姿を確認して叫ぶ


「全く隠居していたというのに」

「おやオーリーさん貴方も来たんですか?」


魔法使いの男性が魔法で現れる


「本当なら避難するつもりじゃったが若者の頼みでのぉ、婆らはここで死ぬらしいぞ」


オーリーと呼んだ老婆と話している


「予言ですか?」

「いや、あれは知っている目じゃったよ」

「そうですか……全く運が悪い、ところで秘技は?」

「最後の弟子に基礎だけ教えた……使えるかはわからんのォ」

「継がれる事を祈ります……さて、黒龍との戦いで死ぬならばせめて一矢報いて死にましょう」


高位魔法を発動する


「ほっほほ、地獄まで付き合ってもらうぞ?魔法騎士団団長殿」


オーリーも魔法を発動する


「私も戦う」

「ダメじゃ、お主に死なれては約束を果たせぬのでな」

「約束……?」

「よくわかりませんが了解しました」

「若者よ生きよ婆らの死を超えて!」


男性がキッカに杖を向けるとキッカとスフィアが避難場所に飛ばされる


「な、ここは」

「嬢ちゃん達魔法で来たのか?こっちだぞ」

「私は戦う」

「ダメです!」


スフィアがキッカを止める


「止めないで」

「死んじゃいます!貴方まで死んだらリオさんが無駄死になっちゃいます」


涙を流しながらスフィアは止める

キッカは剣を手放す

(歯が立たなかった……)

2人は人混みに紛れて避難する

遠くで戦闘音が響く

激しい戦闘が繰り広げられていると分かる

大きな衝撃波が空気を揺らすと途端に静かになる


「終わったの?」


避難に当っていた騎士団員が確認しに行く

だいぶ時間が経った後戻ってくる


「黒龍は居らず戦闘は……終わりましたが……」

「倒したのか?」

「いえ、恐らく逃げられました」


戦場となった場所で行方不明者を探す

オーリーや国王、騎士団長などを含む多くの人間が死亡し確認出来た生存者はキッカとスフィアを除くとほんの数人しか居なかった

当然生存者の中にはリオは居ない


「リオさん……師匠……」

「嘆く時間は無い!復旧作業を行う!英雄達の死を無駄にするな!」


騎士団の一人が涙を流し叫ぶ


~~~


「君はここで何をしているんだ?」


森の中にいた一人の男にエーデルワイスが問い掛ける

男は一瞥する


「蒼月の銀狼のエーデルワイスか」

「私の質問に答えろ!」

「何もしてないさ」

「お前から黒龍が時空間魔法で移動した時に使われた物と同じ魔力見えるんだが?それの弁解は?」


魔力の件を言われ反応した男はエーデルワイスの方を向く


「感知能力に優れているのか……邪魔をするな」

「邪魔をさせてもらう」


瞬間移動とも思える高速移動で攻撃を仕掛ける


「なっ……」


すまし顔だった男もさすがに驚き魔法を発動させる


「遅い!」


魔法を起動するよりも先に拳が当たる

杖で受け吹き飛ばされた男は杖を地面に突き立てて耐える

(反応された……)


「くっ、バケモノめ、いでよゴーレム」


杖で地面を叩くと土で出来たゴーレムが数体現れる

男は距離を離して時空間魔法を起動させる


「逃がすか!」

「奴を止めろ」


ゴーレムと殴り合う

高位の魔法で作られているようでかなり強い


「邪魔をするな!」


ガントレットに蓄積された魔力を爆発させてゴーレムを吹き飛ばす

すぐに男に拳を振るおうとするが横からゴーレムに邪魔をされる


「邪魔!」


ゴーレムを壊して進む


「化け物め」

「レーネ」


通信機器を利用して遠くにいるレーネに指示を出す

遠距離から弓を構え矢を放つ


「……!くっ……」


寸前で気づき体制を変えて男は回避しようとする

だが肩を撃ち抜かれる


「くっ伏兵が居たか。まぁいい」


魔法の発動は止められず逃げられる


「すみません」

「いや仕方ない、むしろよく攻撃を当ててくれたよ」


ゴーレムは転移後直ぐに消える

蒼月の銀狼はレウリスに向かう


~~~


あれから時間が経ちフィルドスの騎士団やウルダの騎士団、遠征に出ていたクランが集まっていた


「俺たちが居ない時に狙われたか!」


疾風怒濤のリーダーが机を叩く

槍使いのレイズ、Sランク冒険者の男性


「私たちが頂上に到着した段階で黒龍は移動を開始した。間違いない奴の仕業だ」

「そいつは捕まえたか!?」

「逃した……やつは時空間魔法の使い手でありながら高位の大地系の魔法使いでもあったようだ。奴のゴーレムはかなり強かった」

「妾達が到着した時には黒龍は消えていたがどうやら生存者の話によれば黒龍は深手を負ったそうだ……回復に時間がかかるだろう」

「なら今叩くぞ!俺たちは出られる」


いつもよりもレイズが声を荒あげている

クランが遠征に出てる間に自国が攻められた

その辛さをこの場にいる皆は理解しているため誰も触れない


「……黒龍はかつての災厄氷龍よりも強い、我々でも手負いの奴を倒しきれるとは限らないそれに龍使いとでも名付けるか。エーデルワイスの戦った男の件もある。討伐隊は結成するが……いつ討伐するかはまだだ」

「それに今のレウリスに魔獣の襲撃を防ぐ力はない」

「一先ずはそちらをどうにかするかのぉ」

「本日の会議は終わりとします。現状はレウリスの建て直しを重点に動く事とします」


状況が進まないまま会議は終わる


「団長」

「フィーネか……どうしたのじゃ?」

「討伐隊に参加するメンバーについてですが……現状では対抗出来る力を持つ者はそう居ないようです」

「……じゃろうな。レウリスですらここまで追い込まれる程の奴じゃ……」

「どうしますか?」

「後衛都市にも呼びかけて実力者を集めて訓練して……いやそれだと傷が癒えきる前に叩くことが出来んか」


フィルドスの魔法騎士団長兼賢者であるリフェルは悩む

最近魔獣の動きが活発な事も不安要素となっている

実力者を束ねて討伐に向かった際に襲撃されると前衛都市が陥落しかねない


「どうするかのぉ、フィーネ現場に戻って良いぞ」

「はい、失礼しました」


副団長のフィーネが立ち去る


「ところで主は何者じゃ妾は忙しいのだ」

「話がある」


フィーネは気付かなかったがフィーネが入ってきた時に中に入り待機していた

黒ローブを身に付けている人物が立っていた


「不審者と話すことは無い」

「龍使いの居場所、及びスタンビードが起きる日付と黒龍討伐に必要なメンバー」

「おぬし何者じゃ……?」

「僕の名前はレス、ある目的の為に動いている、現状の君達と利益は一致しているはずだ賢者リフェル、君は黒龍を倒したいだろ?」

「……話を聞こうか」


レスとリフェルの秘密の会話が始まる

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