第13話

後衛都市アルデルカは前衛都市ウルダから離れているが後衛都市の中では近い部類

馬車で王都から向かうと最短でも丸一日はかかる


「久しぶりに戻る感想は?」

「……特にありません」

「面白くないな~」

「魔獣の群れを確認したぞ!」


御者が叫ぶ

左側から魔獣の群れがどうやら馬車目掛けて来ているようだ

確認すると数がかなりいる

3.40は居るだろう


「群れか……レーネが数を減らして射程入ったらスフィアが魔法で殲滅、取りこぼしたら私が仕留める」

「分かりました」

「了解しました」

「スフィアはヒーラーでは?」

「攻撃魔法の才能があるからウィザードとしても機能できるように訓練してるの~」


レーネが弓で次々と仕留めていく

同時に三本放ったり素早く三連射したりと魔法の射程に入る前にかなりの量を減らす


「……凄い」

「吹け集え形作り並び立て!ウィンドランス」


スフィアが魔法陣を展開する

突如風が吹きランスの形を作り矛先を魔獣に向ける

数は10数個にも及ぶ

杖を振るうと魔獣目掛けて飛んでいく

突っ込んでくる魔獣にぶつかり吹き飛ばす

続けて同じ魔法をスフィアが使いレーネの弓の猛攻も加わり群れは馬車に届く前に殲滅出来た


「終わりました」

「凄いな嬢ちゃん達」

「ディールボア……ランクはD、この付近に生息しているけど襲ってくることなんてないはず」


ディールボアは魔獣の中でも大人しい性格で群れで行動するが馬車に突っ込んでくることはそうそうない


「逃げてるのでは?」

「いやそれは無い……こちらを襲う気で来てた」


レーネはディールボアから溢れる殺意を感じ取っていた

意図的に襲って来ていた

休憩を挟む


「スフィアをキッカのパーティに推薦したい」


休憩中にエーデルワイスはキッカに話しかける


「推薦?」

「パーティを組むならヒーラーは必要、高難易度依頼になればなるほど戦闘中に回復薬なんて使う余裕はなくなる……ウィザードとしても活用出来るしパーティとしての実戦経験も多いスフィアなら足手まといにはならない」

「スフィアはCランクのはず」

「ランクってのは実力もだけど主に実績、彼女は主にサポートで評価されづらいし私のやり方で実績もあまり積ませてない」


実力はあっても実績がないとランクは上がらない

実力が伴ってなくても実績があればランクが上がる場合もある


「強いなら何故上げないんですか?」

「何故……?そんなの死ぬからだよ。冒険者ってのは死ぬ仕事だ、なまじ力あるだけに油断して死ぬ奴も高難易度依頼を受けて死ぬ奴が多く居る」


エーデルワイスの声色が変わる

前衛都市のクランを率いる者として彼女は多くの冒険者の死を経験してる


「自らに力があると思ってしまうと油断し図に乗り犠牲を増やす……私のクランの仲間は無駄死にはさせない。キッカ、君も気を付けるんだこの先は今まで通りには行かない」

「そうですね」

「話が脱線したね……それでどう?」

「ヒーラーは必要ですからその話受けます」


こうしてスフィアがパーティに加わった

休憩後は何事もなくウルダへ着く

そこでエーデルワイス、レーネと別れてギルドへ向かう

2人は蒼月の銀狼の拠点では無い場所に向かっている


「冒険者登録解除の申請の破棄をしたいんですが」

「お名前は?」

「キッカ・アルクティス」

「はい、確認しました。ランクはCから始まりますがよろしいでしょうか」

「問題ないです」


隣の受付でリオが冒険者登録をしている

3人でCランク依頼を受ける

リオはFランクからスタートだがパーティに入ったので同じ依頼に参加出来る

この制度を悪用する者も居るがこういう場合便利だ

リオの武器は片手剣のようでどうやら自分で作ったらしい

腕は素人よりは戦える程度だったが本業は鍛冶師なので仕方がない

Cランク程度はキッカの相手にはなら無い


「キリングバル、鳥型の魔物ランクはC、厄介なのは空中で攻撃を仕掛けてくること」

「火よ起きろ広がれ穿つ矢となれファイヤーアロー」


炎の矢が飛んでいるキリングバルの翼を貫き落下したところを切り裂く


「やぁぁ!」


リオが剣を振るう

キリングバルを傷つけられるが傷が軽い

リオに襲いかかろうとした奴を炎の矢でスフィアを仕留める


「助かったァ」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫」


暫く低ランク、高ランクを交互に行いランク上げつつ戦いの勘を取り戻す


「つぎはDランク魔物のルースロイガの討伐」

「どんな魔物?」

「植物型の魔物で潜んでるらしい」

「それなら、記しなさい示しなさい教えなさい彼の者の達の場をサーチ」


魔力を通す事で魔物や人間などの居場所を探す魔法

反応があったのかスフィアが魔法を放つと出てくる


「きもっ」


大きなうねうねした生物が現れる

キッカが一刀両断する


「だいぶ感覚戻ってきた」

「ようやくDランク魔獣何とか1人で倒せた……」


疲れ果てたリオが机に突っ伏す

2人の監視の元Dランク魔獣と接戦をしていた


「いやDランクでも1人で倒せるのは中々ですよ私なんて基本ずっと逃げてましたし」

「そうだね普通なら数ヶ月くらいかかるかなぁ」

「キッカちゃんは?」

「1週間とかその辺」

「キッカさんは天才ですから参考にはなりません」


ウルダに来てから1週間経った

順調に依頼をこなしていた

今はギルドにある待合場で座って話している


「そう言えばそろそろ遠征する時だよね?」

「その予定です」


黒龍が住んでいるとされる山への遠征

この遠征はかなり時間がかかり頂上まで着くに半月はかかる

距離もあるが何せ魔獣の巣窟、Sランク冒険者を筆頭に精鋭で揃えたとしても困難を極める


「蒼月の銀狼は今日出発の予定です、レウリスのクラン疾風怒濤はもう出発してます」


ほかの候補地点には別のクランが遠征に出ていた

疾風怒濤もSランク冒険者が率いるクランである


「あっキッカさん」

「受付の……」

「リリスです、ちょうど良かった前衛都市の冒険者の皆さんにこれをお渡ししています」


3人分の小さい機器を渡される


「これは?」

「賢者様や魔法技術者が生み出した通信機器というものらしいです。耳付近につけると遠くでも連絡が取れるそうです……予め登録すれば音声入力か手動で素早く連絡が取れます」

「これはエーデルワイスさん達には?」

「遠征組の皆様にはいち早くお配りしてあります、これで黒龍を見つければ討伐隊の準備を見つけなくてもすぐに別の候補を調べることが出来ます」


どうやら賢者は対黒龍に全力を注いでいるらしい

魔法騎士団を副団長に任せて自ら魔獣の討伐や黒龍の痕跡を探している

今回の黒龍が住んでいる候補場所も賢者が割り出した物のひとつだ


「これで失礼します」


役目を終えてすぐにリリスは帰っていく

(もっと強くならないと)


「キッカさんレウリスに行きませんか?」

「レウリスに?」

「はい、前衛都市3つで真ん中にあるレウリスは最も魔獣との戦闘が激しい所です危険度は上がりますが修行には丁度いいかと」

「成程」

「それなら僕は鍛冶に集中するよ、どうやっても黒龍討伐には参加出来なそうだから」

「私は依頼をしながら魔法の訓練をします隠居した腕利きの魔法使いが居ると聞いた事ありますので」

「それじゃ今日向かおう城壁を通れば数時間で着く」

「了解」

「分かりました」


城壁に向かう時にエーデルワイスとレーネに会う

子供連れだった


「依頼?」

「いえ、レウリスに向かう予定です」

「あぁレウリス確かに修行には丁度いい」

「スフィア姉さんお久っ!」

「久しぶりだねみんな」

「この子達は?」

「孤児院の子だよ、私とレーネは孤児院出身だから偶にこうやって世話してるんだよ」


エーデルワイスは元孤児でルーガルド家の養子となった人物である

エーデルワイスを養子にしたあと正当な子供が生まれたため貴族としての責務はなく自分で決めて冒険者となりクランを創設した

蒼月の銀狼のメンバーの一部は色んな孤児院の出身だったりする

レウリスに向かうために軽く話す程度で終える

3人は城壁を登り城壁を渡る

3つの前衛都市の城壁と繋がっている防衛ラインである巨大城壁を冒険者は通れる

そこには24時間騎士が待機している

魔導兵器と呼ばれる設置型の武器や障壁などが設置されている


「何度か通った事ありますが凄いですよね」

「かなり昔に作られた城壁なのに今の技術では再現できないとまでされてる古代技術の結晶」

「初めて見た何これ」


リオは巨大なボウガンのような武器に夢中になっている

後衛都市の田舎に居たリオはこれらの武器を見た事ないのだろう


「それは魔導式バリスタ、あれは魔導式大砲それぞれ魔力を通すことで魔力で生成された弾を飛ばす」

「迎撃用の設置武器……凄いなぁ」

「嬢ちゃんここは初めてかい?」


騎士のひとりが話しかけてくる


「「お疲れ様です」」

「お、お疲れ様です」

「この武器は賢者様が作ったんだよ、聞いた話だと150年くらい前にまだ賢者と呼ばれてなかった頃に開発した武器だよ」

「150年……」

「賢者様はエルフなんですか?」

「そうだよ賢者様はエルフそれもハイエルフと呼ばれるエルフの中でも希少とされる種族、かなり長寿で長いと1000年以上生きる人いるんだってさ」

「何サボってんだ!」

「す、すみません!それじゃ嬢ちゃん達ご武運を」


先輩騎士に呼ばれ騎士が走って持ち場につく

3人は一礼してレウリスに向かう

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