第11話

戦いはそう長くは続かなかった

エーデルワイスは攻撃をギリギリでかわして鋭い連撃で追い詰め攻撃を受け流し体制が崩れた所に強撃を打ち込み討伐した

相手はAランク魔獣なのに軽々と討伐していた


「グリムリスは速度とその速度から放たれる攻撃が強い、私にとって相性がいい相手」


グリムリスの速度を超えた速度で動き自慢の攻撃を全てかわして叩く

真似しろと言われてもキッカには真似の出来ない芸当だろう

エーデルワイスは蒼月の銀狼のマスターになる前に起きたスタンビードと呼ばれる魔獣による襲撃の際にフラッと現れて多くの魔獣とAランク魔獣数体をたった1人で討ち滅ぼした英雄

当時まだCランクだった人物がだ

1人の聖女がおぞましき怪物達の行進が行われる彼の者は戦場に立ち行進を食い止めると神の声を聞いたと言っていた事から神託の戦姫という異名を得た


「訓練を再開する、進め」


何事も無かったかのように訓練を再開する

その後は特に問題もなく訓練を終える

翌日に備えてキッカは早く寝る

早朝になり起きて王都からの騎士団を待つ

寝相が悪いのかキッカにスフィアが抱きついていた

暫く待つと騎士団が現れる


「王がお待ちだ」


キッカを連れて騎士団が王都へ戻る

王都に何故かスフィアがついて行く、エーデルワイス曰く念の為だと言う

災厄の聖剣は置いていく

騎士団が護衛していることもあって何事もなく数時間かけて王都へ着く

迷いなく王城まで進む


「ここが王都」


かなり人が多く賑やかだ

見たところ活気に溢れている

キッカは商人の護衛をしていた冒険者から聞いた話とかなり違うと感じる

王都の中でも大きな通りはかなり豪華な装飾がされている


「ここは後衛都市の中でも1.2を争う大国ですからね、騎士団の質も前衛都市に負けず劣らずとも」

「後衛都市の騎士団は弱いという話があるが我々はこの国を守るための騎士、騎士は弱くて務まるものでは断じて無い!」


アルフレッドの言葉から怒りが滲み出ている

後衛都市の騎士団は前衛都市の騎士団に馬鹿にされる傾向にある

世界の境界の守護を務める前衛都市の騎士団に比べて後衛都市の騎士団は後方支援と自身の国の守護だからだろう

アルフレッドは若くして騎士団団長になった人物、周りから色々と言われてきたのだろう


「……失礼、王の客人の前でする話ではなかったな」


沈黙が続く

馬車が目的地に着く


「こちらへ」


キッカとスフィアの手を取り紳士的に馬車から下ろす

王城は大通り以上に豪華な装飾がされている

騎士に囲まれながら王の間に連れていかれる

王の間で王は無駄に装飾がされている玉座に座り待っていた


「私はキッカ・アルクティスと申します、王の貴重な時間をとって頂き感謝致します」

「よくぞ来てくれたワイバーンの件で褒美をくれてやる」


全員片膝をつき頭を下げる

待機していた騎士が金の入った袋を持ってくる


「有り難き幸せ」


袋を受け取る

雑談もせず淡々と進める


「ところでキッカよ、我の愛人にならないか?金も地位もくれてやるぞ」


王が本題に入る


「光栄ではありますがお断りします、私にはやることがありますゆえ」

「我の提案を蹴ってまでやる事とは?」

「黒龍討伐です、私は黒龍を討つために再び冒険者に戻るつもりです」


王は鼻で笑う


「黒龍をだと、辞めておけ。あれは勝てる相手ではない……冒険者になぞ戻るなその美しい身体を無駄にするな」


王は一目でキッカを気に入った

聞いていた通りの美少女、数年とせずに美女になるだろう

服の上からでもわかるスタイルの良さ

目の前の少女が無駄に戦い傷を負うと言うのを王は見逃せないと考えている

隣にいるスフィアも中々の上物


「これは決めたことですので」

「王に逆らうか」

「これは譲れません」

「騎士団よ!捕らえろ」


騎士団が武器を構える災厄の聖剣を持たないキッカではここを突破するのは厳しい

そもそも国家反逆罪になりかねない為抵抗はしないで2人は大人しく捕まる

二人一緒に地下の牢屋に入れられる


「ごめんなさいスフィアさん」

「いえ、仕方ない事です。と言うよりむしろよく言ったと思いましたよ!」


スフィアはキッカを責めるどころか褒め称える

ここからは出られないだろう

2人は数日間閉じ込められる

食事はちゃんと出される


「どうすれば……」

「一騎打ちをしましょう」


騎士に怖がる振りをしてキッカに抱きついてスフィアは耳打ちする


「スフィア一騎打ちって?」

「アルフレッドさんと決闘して勝てば釈放」

「もし勝ったとしてもあの王様が引き下がるとは思えない……」


バレないように柵の死角になるようにスフィアがキッカの耳元で話す


「それは多分何とかなります」

「何とかなる?」

「何やらあの人には都合があるそうで」


キッカにはスフィアが何を言っているか分からない

あの人とは誰のことだろうか

スフィアに勧められるがままに王が来たタイミングでアルフレッドとの決闘を申し込む


「良いだろう、勝てたらな……ただ負けたら今夜楽しみにしておけよ」

「……キモっ」


小声でスフィアが悪態をつく

決闘まで体を動かす

牢屋から出されて訓練場に行く


「舐めているのか?」

「舐めていません、貴方がこの国で最強だから勝負するのです」


2人は対峙する

手渡された剣は見るからにボロボロ

一度切り合うだけで砕けてしまう

魔力の剣を2本作り戦う

斬り合う、刃こぼれしたらすぐに修復して戦う

実力はほぼ互角、相手は恐らく特性持ちの剣

どういう特性かは分からない


「はぁ!」

「強いな、ワイバーンを倒したのは伊達じゃないか」

「加速」


加速魔法を使い凄まじい速度で連撃を食らわす

防ぎきれず大振りを放ち距離を取る


「こちらも本気で行くぞ!バルファ」


アルフレッドが剣に魔力を通すと先程よりも早い速度で距離を詰め斬りかかってくる

速度は加速魔法を使ったキッカと互角


「加速」


アルフレッドも加速魔法を使う

アルフレッドは片手剣の速度重視の戦士、キッカとほぼ同じ戦闘スタイルだった

アルフレッドの使う剣、風霊剣バルファは使用者に風の精霊の力を纏う事で風の属性剣と加速魔法の同時発動をしている

ほぼ特性を2つ持つ様なもので世界中を探してもこのレベルの剣は数本あるかどうかだろう

それほどの剣を持ち巧みに扱うアルフレッドはかなりの実力者だ

風の斬撃を2本繰り出して斬撃と同時に接近してくる

速度は現在のキッカを超えている

剣術もキッカよりも上だろう、手数はキッカの方が多いがそれでも押される

アルデルカ王国最強の騎士、その名は伊達じゃない

2人は最大速度で斬り合う、周りで見ている人々には何が起きてるか分からない


「……彼女に剣を」


一度距離を取り動きを止めてアルフレッドは近くの騎士に呼びかける


「王の指示でして」

「これは騎士の戦いだ!私に逆らうか」


睨まれた騎士は急いでしっかりとした武器を持ってくる

武器の性能差はあれど魔力剣よりも戦いやすい


「良いのですか?」

「君は負ければ王の愛人になる……そうなれば君の目的は果たせないだろう、ならせめて正々堂々と勝つ。意志を砕くならば真正面から」


アルフレッドも剣を変える


「これで条件は五分だ、いや先程打ち合っている以上そちらの方が不利か」

「さっきまでのは準備運動ですよ。それにそんなハンデ背負って勝てるとでも?」

「ふっ、そうか、それなら問題ないな。……勝てると思わなければやらんよこんな事は」


キッカとアルフレッドは互いに笑い剣を構える

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