第9話

2日後予定通りにワイバーンを素材とした防具をリオが作り上げた

特性は物理魔法耐性ランクB

衝撃にも強くBともなれば防具越しの攻撃ならばCランク魔獣の攻撃ならばおそらく直撃しても問題無い程の耐久


「残った素材で衝撃耐性の手袋も作ったよ」

「ありがとうございます」


一部の自衛団員と共に森に入り魔獣との実戦訓練を行う

数人が村で待機している、全員を連れていくと何かあった時に困るため数人編成で挑む

森の中でグーラウルフの群れに遭遇する

数は5体、キッカを除いて1人1体で対応出来る


「グーラウルフのランクはD、群れるとCランク魔獣と同等の厄介さを持ちますが1体1体はDなので慌てずに慎重に戦ってください」

「「はい!」」


戦闘を開始する

タンクは1人でヘイトハウンドを使う

グーラウルフの注意がタンクに向く

タンクに攻撃が集中する、横から剣士が攻撃を仕掛ける


「距離を取ったウルフに矢と魔法を放ってください味方に当てないように!」

「はい」


自衛団にヒーラー以外の攻撃の魔法使いが必要と考え1番適性のあった人物を攻撃系魔法使いウィザードとして育成することになった

ウィザードは魔法を使い中距離を攻撃出来る、攻撃魔法以外も使う事があるが基本的に器用貧乏になってしまう

ただ支援魔法なども多少なり覚えれば前衛を余裕が出来て有利に出来る可能性が高くなる

魔法が使えると言うだけで戦力はかなり上がる

遠くから矢が放たれるが当たらない


「当たらない」

「落ち着いてください。しっかりと狙って打ってください……決して焦らずに」


深呼吸をして弓を構えウルフの動きが止まった瞬間に矢を放つ

矢がウルフの首を撃ち抜き絶命させる


「やった」


(これならグーラベアも複数人なら倒せるかもしれない……皆さん十分騎士団でも通じる強さがある)

Cランク相当のダウドといい皆キッカの訓練を受けているとはいえかなり腕が立つ

騎士団の一般隊員クラスはあるだろう

これで魔力の扱いが上手くなればこの村はほぼ安全だろう、ワイバーンなどの例外が来なければ

ワイバーンクラスは村の自衛団の管轄を大幅に超えている


「グーラベアが出ました!2体です」

「1体をみなさんで相手してください、もう1体は私がやります」


(グーラベアもココ最近増えている……年に数体出れば多いくらいと言う話なのに)

キッカは二振りでグーラベアを切り伏せる


「グーラベアとはここらでは魔獣の主だと聞いていたのに多過ぎないかな?キッカ」


声がして声の方を向くと見知った人物がグーラベアの前に立っていた

(いつの間に……)


「君危険だから下がって」


自衛団の1人が言う

薄い緑色の長い髪を持つ幼い少女だった

長い髪を左右にそれぞれ1つずつ纏めている

少女の姿に似合わない厳ついガントレットとブーツを付けていた


「危険?この程度が?」


ゆっくり歩いて近づく

自衛団のメンバーが少女を止めようとするがヒラリと避けられる


「彼女なら問題ないですよ」


止めようとしていた自衛団員を静止する


「それはどう言う……」

「見ていれば分かります」


バギッと何かが砕ける音がするとグーラベアは血を吐き倒れる

自衛団のメンバーは何が起きたら分かっていない


「お久しぶりですワイスさん」

「うん久しぶりだねキッカ」

「どなたですか?」

「彼女は……」

「私に名乗らせて……私はエーデルワイス・ルーガルド、キッカの旧友で現冒険者」


一礼して少女は名乗る


「冒険者が何故ここに?」

「言ってないの? 10日から護衛の依頼をキッカにされてね事情を聞きにここに来た訳」

「連絡が帰ってきた場合伝える予定でした、私のいない間の護衛を知り合いの冒険者に任せますと」

「そういえば王都にとは何かあったのかな?」


村に案内するついでにワイバーンの件とその件で王に呼ばれた事を伝える


「なるほどね、それで護衛をわざわざ私のクランに直接」


本来村の護衛の依頼などはその国の冒険者ギルドを通して依頼をしないといけないがクランに直接依頼をすればギルドを通す必要は無い、例えその国に所属しているクランじゃなくとも


「はい、念の為ですが」

「キッカの嫌な予感は当たるから良い選択だと思うよ。私達ならワイバーン程度であれば余裕だし」

「ところで1人ですか?」

「あと2人居るよ」

「お呼びでしょうか?」


突然女性が背後に現れる


「エルフですか?」

「そう、彼女はエルフのレーネ、弓使いのAランクだよ。弓使いとしてはうちのクラン最高の実力者」

「漸く追い付いた、リーダー置いてかないでくださいよ~」


草むらから息切れしている少女が現れる


「彼女はスフィア、Cランクのヒーラー、実力は今後に期待と言ったところ」

「あっキッカさんお久しぶりです!」


キッカを見て興奮気味にキッカの手を取る


「ええっと……?」

「スフィア落ち着いて多分分かってないから」

「あっ、すみません! 私はスフィアと言います……えっとちょうど2年半程前に助けて貰ったのですが」

「ごめんなさい覚えてません」


スフィアは2年半前まだクランに所属して居なかった時に初心者パーティに所属していた

とある依頼を受けた際に魔獣の不意打ちで壊滅し死を覚悟した所をキッカに助けて貰っていたがその事をキッカは覚えていなかった

キッカにとっては数あるうちの1つ


「そ、そうですよね」


少し残念そうにしている


「この3人で村の護衛をするよ」


村に着き自衛団と別れキッカの住んでいる家に案内する


「私がいない間、ここを使ってください狭いですが」

「3人なら十分な大きさだよ、あっそうそうワイバーンについては一つだけ伝えておく事がある」

「ワイバーンについてですか?」

「2週間前に前衛都市にワイバーンの集団が襲撃しに来たの、多分キッカの戦ったのはその残党だと思う、数体逃したっぽいから」


数十体のワイバーンの集団が前衛都市ウルダを襲撃した

冒険者及び騎士団が対応したがBランク魔獣の群れ、倒しきる事は出来なかった


「ワイバーンの集団!?」


魔獣の群れが現れることはあったがワイバーンクラスが群れを生して襲撃してくることはここ数十年単位で起きていないような出来事である


「恐らく原因は黒龍、ここ半年黒龍の動きが活発になってるの……恐らく近いうちに調査隊が住処を暴き討伐隊が結成されると思う」

「住処ですか?」

「かつて現れた氷竜も黒龍と同じく突然現れたけど賢者の言う話だと氷竜は山の頂上を住処にしていて転移魔法を使って移動していたらしいよ」

「転移魔法……」

「……冒険者に戻るならキッカにも討伐隊に入るチャンスは来るけど……今のキッカじゃ討伐隊としては足手纏い」


エーデルワイスは立ち上がり拳を振るう

咄嗟に剣で防ぐが吹き飛ばされ外に出る


「ワイス姉さん!?」

「エーデルワイスさん何を!」


2枚の手紙にはキッカの冒険者への復帰と黒龍の情報の提供


「手加減はするよ、まさかワイバーン如き倒した程度で黒龍に勝てるとは思ってないよね?」


拳を握り構える

エーデルワイスは近接格闘主体の戦闘スタイルの冒険者だ

キッカは剣を構える


「力を見てあげる」


願ってもない機会


「お願いします」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る