第7話

「はぁ!」


グーラベアを切り伏せゴブリンの攻撃を避けて切り刻む

商人が来るまで十分な装備がないので災厄の聖剣を持つキッカ1人で対応する

魔力剣は緻密な魔力操作が必要のため自衛団に使える人はいない

(魔獣が迷い出る事が増えてる……)

ワイバーンが出た日から3日、ルーヌ村に2回魔獣が現れた

2年間でもこの短期間に連続して出てきたことは無くダウドが言うには数十年以上でこんな事は無かったという


「助かった」

「私に出来るのはこのくらいなので」


道場に戻り木刀に持ち変える


「おっ、終わったか」


ダウドが構える

微弱だが木刀に魔力を込めている

ワイバーン戦後自衛団員には魔力を武器に込めるやり方と魔力を全身に纏うことで身体強化する方法を教えた

まだ上手く出来てる者は居ないが出来るようになればかなりパワーアップする

魔獣の出現が増えている今早急なレベルアップが必要となる


「うぉぉぉ!」


力一杯振るうが片手で構えたキッカの木刀に軽々と止められる


「魔力がまだ武器に留まってません、これでは魔力を無駄に使うことになります。このように纏います」


魔力を込めて軽く弾くとダウドが吹っ飛ぶ

ダウドが床を転がる


「皆さんも遠慮なくかかって来てください」


魔力を込めて全員が襲いかかるが容易く蹴散らす

無意識に制限していた分の力もあり今まで訓練していた2年間とは比較にならないほど強い

数分後には自衛団員全員が床に転がっている

汗を拭く為に上着を脱いでタオルを使う


「なぁ今透けてなかった?」

「あぁ少し透けてたな……キッカさんって着痩せするタイプなのか?サラシ着いてるが中々大きい」

「見せてるのかと思うくらい無防備だよね物凄く美人なのに」

「お前ら喋ってる余裕あるから訓練しろ」

「「は、はい!」」


喋っていた人達は木刀で頭を叩かれ急いで立ち上がり訓練を開始する


「お前なぁ……」

「どうしました?」

「少しは警戒したらどうだ? ここはお前以外男しか居ねぇんだ」

「……何かあれば一太刀で仕留めるで問題ありません」


そう言って木刀を手に持ち立ち上がる


「そういう話じゃねぇんだよ……」


隠れた苦労人のダウドはため息をつく

昼の休憩中に珍しい客がルーヌ村を訪れる

アルデルカ王国の直属騎士団だ

どうやらワイバーンの件が王都に伝わったようだ


「ワイバーン討伐者は誰だ!」

「私です」


キッカが名乗りを上げる


「名はなんという?」


騎士団のリーダー格の男性が話しかけてくる

なかなかに若い、20代前半だろうか

キッカは一目でかなりの実力者だと見抜く

リーダー格の男性、アルフレッドも一目でキッカが只者ではないと分かるがワイバーンを1人で倒せる力を持つとは思えなかった


「キッカ・アルクティスです」

「キッカか、アルクティス……君は貴族か?」

「元貴族です、今は冒険者家業も一時的に辞めてます」

「元冒険者ということかランクは?」

「Bです」

「……そうか、ワイバーンの討伐者である君に王が直々に会いたがっている、王は忙しいから5日後になるが王都に来て貰えるか?」

「大丈夫です」


即答する、5日後なら特に用も無いし断る理由も無い


「それでは5日後早朝に迎えに来る、服装に関しては普段身につけているもので構わない……それでは失礼した」


話は終わり騎士団は帰って行く


「ワイバーンの件で何かしらあるとは思ってたがまさか騎士団が直接来るとは思わなかった」

「どんな人物か見たかったんじゃないですかね?王に会わせていい人物か」

「あぁ、手紙じゃ分からんもんな」

「はい、ワイバーンクラスを倒したのなれば警戒はするでしょう、それでは訓練に戻りますか」


午後の訓練を終えて皆が帰宅する中キッカはリオに呼び止められる


「採寸するから来てね~」

「服を脱げば良いですか?」

「あっ、下着や肌着は脱がなくていいから」


上着を脱いだキッカを手馴れた動きで素早く採寸する

ワイバーンの防具を作るのに必要なのだろう


「もう着ていいよ、これで制作に入れる張り切るぞ~」


服を着る


「完成はいつ頃になりそうですか?」

「そうだね……一通り修理終わったし集中できるから3日後かな」

「では3日後に顔出しますね」

「分かった、明日も訓練頑張ってね~」

「はい、では失礼します」


一礼して鍛冶屋を出る

騎士団が来た際に嫌な予感を感じたキッカは念の為に昔の知り合いに伝書鳩を飛ばす

最も応答するとは限らないが頼るとしたらこの相手しか居ない


~~~


翌日

アルデルカ王国の王の間で1つの報告が挙げられた


「ワイバーン討伐をした人物はキッカ・アルクティスと名乗っておりました」

「貴族か?」

「元貴族で今でもその名を使っているとのことです!そして元冒険者の17.18の少女でした、元Bランク……元Bランク冒険者がワイバーンを1人で倒せるとは思えません」

「ワイバーンを単独撃破した元Bランク冒険者ねぇ……その女の姿はどうだった?」

「スタイルが良い銀髪碧眼の見目麗しい少女で少し幼さは残ってましたが成人の女性と言って差し支えないかと」

「ほう、そうか……もう良い下がれ」

「はっ!」


アルフレッドは下がる

王様は何かを企んでいる笑みを浮かべる


~~~


夜道を歩いていたとある人物の元に伝書鳩が飛んでくる

キッカからの伝書鳩だった

手紙を受け取った人物は内容を見ると少し思案すると来た道を引き返す

2枚の手紙のうち片方にはこう記されていた


『焔月の10日~数日間

アルデルカ王国ルーヌ村の護衛の依頼をお願いします

迷い出た魔獣のみの討伐になると思いますが念の為に必要以上の準備をお願いします

報酬は魔獣のみの場合5000レトで想定外の事態が起きた場合1万5000レトとなります

受ける場合は折り返し連絡ください方法は伝書鳩でも人でも構いません、8日までにご連絡ください

受けない場合は連絡は必要ありません

キッカ・アルクティスより』


焔月の10日とはワイバーン戦から8日後つまりキッカが王都へ行く日だ

小さな村の護衛としては5000レトは依頼料としては破格、想定外の事があった場合1万5000という3倍となる

レトとか通貨の名前で銅コインが1レト、銀コインが100レト、金コインが1万レト、大金コインが100万レトとなっている

手紙を受け取った人物はある建物に着くと勢いよく扉を開く

その建物には交差する銀色の狼の後ろに青い月が書いてある看板がありそこには蒼月の銀狼と書いてあった

夜中なのに人が居る


「どうしたリーダー」


騎士風の男性がその人物が勢いよく扉を開けたことに動揺もせずに話しかける


「村の護衛の依頼を受ける、人員は私とレーネ、スフィアで行く」

「村の護衛?ギルドに頼まれたんすか?」


盗賊風の男性が聞くと首を横に振る


「いや、個人依頼」


基本的にギルドを通さないと依頼は受けれないがクランに所属している人物に対してなら直接頼む事が可能となる

ただギルドの依頼じゃない為報酬払い等の保証はされない

蒼月の銀狼とは前衛都市ウルダの冒険者ギルド所属のクランである


「個人依頼ッスか珍しい……知り合いからっすか?」

「うん、昔のだけどね」


その人物は嬉しそうにしている

キッカの冒険者時代の数少ない知り合いでもある

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