第3話
「なんで……」
ワイバーンは前衛都市にいたキッカすらそうそう見かけないような魔獣だった
本来なら後衛都市のこんな辺境になんて現れるはずのない存在が今目の前に現れたのだ
グーラベア2体が一撃で仕留められる
「喰らえ!」
両手剣を全力で振るうが鱗に弾かれる
「逃げ……て……ください……勝てません」
ワイバーンは尻尾を振るう、ダウドは剣で防ぐも砕かれ吹き飛ばされる
最低でも魔力を込めた一撃でないと鱗に傷をつけることすら出来ない(例外あり)
龍種は治癒能力は高くないがこの強固な鱗があり攻撃力も並の魔物を優に超える
たった一撃でダウドが戦闘不能になった
救出して回復魔法をかけるも気絶している
自衛団のタンクが前に立つも一撃で瀕死になる
「無理だ勝てねぇ」
「逃げるぞ」
「何処にだ!何処に逃げれば奴から逃げられるんだ!?」
皆が恐怖し戦い所ではなくなった
皆戦意喪失している
「キッカ」
ダウドが目を覚ます
キッカは恐怖で地面に座り込んでいる
「キッカ!」
ハッとしてダウドの方を向く
「駐屯地があるのは分かるな、遠いがお前なら走って行けるはずだ」
「わか……りますが……」
「今のお前は足手纏いだ……いけ!」
ダウドが叫ぶ
キッカは一瞬泣きそうな顔になるも直ぐに切り替えて魔法で身体強化をして全力で走る
「非戦闘員は村人を村から逃がせ」
「わ、分かりました」
戦闘に参加出来ないメンバーが村人を村から遠ざける
「貧乏くじを引かされた」
残った1人が愚痴を零す
「しゃーねぇだろ、誰かが引かなきゃならねぇそれが俺達だったってことだお前ら動けるな」
ワイバーンがグーラベアを食っている間に新しい武器と防具を身につけたメンバーが集結する
「時間稼げますかね?」
「できる出来ないじゃねぇやるしかねぇんだよ」
「キッカさんが援軍を呼んで来るまで耐えれば生存率はまぁ少しは上がりますか」
「お喋りはそこまでだ、腹が満たされてねぇバケモンが来るぞ」
~~~
村の柵を超えて森の中に入る
最短距離を行く
魔獣をスルーして進む……が攻撃を受ける
運良く当たらなかった
地面にナイフが刺さっている
(ナイフ!?)
攻撃の飛んできた木の上を見るとそこには人型の何かがいた
黒色の全身を覆い隠すローブを身につけている
「ふむワイバーンか君はなぜ逃げた」
男か女か分からない声をしている
「応援を呼びに行く……邪魔をしないで」
「それは出来ない」
そう言って剣を抜く
木刀を構える
剣と木刀で斬り合う
互いに魔力を込めた武器、斬り合う度に魔力の差と武器の性能差が大きく響く
どんどん木刀に切り傷増えている壊れるのも時間の問題
「どうしたこの程度か!」
「くっ……」
魔力を斬撃として飛ばすが軽々と防がれる
武器に込めた魔力の量はほぼ同じに見えるが相当の魔力を圧縮している
何度も斬り合いその度に死が近づいてくる感覚に襲われる
(手加減されている)
相手はまだまだ余裕があるがキッカはもう余裕が無い
「もういい」
「くっ……」
木刀が斬られ身体を蹴られ吹き飛ばされる
「これで終わりだ」
キッカの飛ばした斬撃なんて比じゃない程巨大な魔力の斬撃を構える
(これは回避も防御も無理)
両膝をつき死を覚悟して目を閉じる
「君のせいでまた人が死ぬ君が弱かったせいで」
(私が強ければ……今回もあの時も助けられた)
「覚悟が足りない、戦う覚悟も命をかける覚悟もだから1人だけ生き残った」
(あの時、心が折れて戦いを辞めたのは1人だけだった、今回もダウドは逃げなかった)
「生き恥を晒すならここで死ね、戦い抜く意思があるなら武器を取れ、吼えることすら出来ぬ負け犬になぞに用はない」
木刀は砕け近くに武器はない
斬撃がキッカ目掛けて飛んでくる
(何故死を許容している?忘れたの?奪われる苦しみを痛みを……)
声でハッとして木刀で頭を強く叩く
自分の声だ、子供の時の覚悟を決めたあの時の自分だ
鈍い音がする……頭からは血が流れ顔の一部が血で染る
黒ローブの人物が飛ばした斬撃はキッカに当たることは無く突然消失した
そしてキッカの両手には2本の剣が握られていた
頭の血を手の甲で拭うとニヤッと笑う
「生き恥を晒すか?」
「生き恥を晒す気もないけど死ぬ気も毛頭ない」
地を力強く蹴り斬りかかる
2本の剣は魔力によって生成された剣、斬れ味や耐久力は本物には到底及ばない上に魔力を無駄に多く使う欠陥魔法だが先程よりも戦えている
再び斬り合う、一撃一撃が先程よりも早く重く鋭い
先程のような剣術を磨いた動きではなく自由で舞うように2本の剣で連撃を繰り出す
加減を辞めた黒ローブの人物が本気を出して戦う
時間としてはそれ程でもないが体感は数分戦っていたが途中で
「……時間切れかまた会おうキッカ」
と言い斬撃を煙幕替わりに地面に叩き付け距離を取る
「待て! なぜ私の名前を知っている? お前は何者だ」
「僕の名前はレス……僕に構っている余裕があるのか?」
ハッとして村の方を見る
まだ村を襲撃したワイバーンが居る
再び視線を戻すとそこにはもう誰も居なかった
すぐに急いで村に戻る
もう恐怖はない
最も恐ろしいのは抵抗せずに全てを奪われる事だと思い出したから
覚悟を決めて走る
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