第6話 日常
ハァ...ハァ...ハァ...
登校中にあんなことがあり、俺の体力はひどく消耗していた。
だが、腕時計を見ると8時20分。
朝の
10分くらいなら間に合いそうだが、なにせ、“花”の香りに誘われ、通学路からかなり離れた場所まで来てしまっている。
俺は、急いで自転車に飛び乗ると、豹をも追い越しそうな勢いで漕いだ。
キーンコーンカーンコーン
学校でお馴染みのチャイム音が鳴り響く。
「起り・・・」
「遅れてすみません!!!」
どうやらギリギリセーフのようだ。
だが、号令を途中で遮ってしまった俺にクラスメイトの視線が突き刺さる。
いや、ギリギリだったからだろうか。
どちらでもいいか、そう思った俺に“将軍”こと
“将軍”と呼ばれている理由は言わずもがな、有名な某将軍に似た名前だからである。
「戦神! 何を遅刻しとる! さっさと席に座れ!」
「へ? ギリギリセーフじゃ・・・」
「何を言っている? 0.0000001秒でも遅れたら遅刻だろうが」
「理不尽だ!?」
俺の悲鳴が教室の中に響き渡った。
SHRが終わり、俺は教室の隅の席でグッタリとひれ伏していた。
そんな俺に話しかけてくる鬼畜が一人。
黒髪をボサボサとさせた、この男は“風神”スサノオノミコトの騎士である。
「なんで遅れたんだ? お前にしては珍しい」
そうだ、俺は無遅刻無欠席を小学校から継続していた。
今回、遅刻したことで、無欠席のみにグレードダウンしてしまった。
「大変だったんだぜ・・・」
今朝の出来事を包み隠さず話した。
「なるほどな。そりゃー大変だったな。もしかすると、相手は大魔法師の神の騎士かもな」
「俺も同感だ」
大魔法士の神とは、魔法をすべて極めた人間が神として崇められたことで、神の座を手に入れられた者である。
この例は日本にも多く、戦国の武将を祀った神社がだいたいこのような理由でできている。
また、“魔法を極めた人間”というワードが出てきたが、魔法は今でこそ騎士しか扱えない。
しかし、遠い昔には限られた人間のみにだが使われていた。
そんな話をしていると俺等に元気のいい声で一人の女子が話しかけてくる。
「おっはよー、元気かい? 諸君」
「おはよう、朱音。元気じゃないの見てわかるだろう?」
「いや! 全然わからない!」
「馬鹿だな、お前は」
この姫カットの女は
彼女ももちろん俺のクラスメイトである。
彼女の特徴は馬鹿で明るいこと。
そして、その美貌だろう。
馬鹿
また、ファンクラブによると「守ってあげたくなる感じがいいね」や「ギャップ萌え最高!」らしい。
どうでもいいことだが。
また、彼女も騎士であり、
「それで、何をしに来たんだ?」
「う〜ん、もう! 何かないと来ちゃだめ?」
「いや、別に駄目ではないが・・・」
そんな俺と朱音を宗矢がニヤニヤと気持ち悪い目で見ている。
「なんだよ、宗矢」
「いや〜、別になんでも〜」
なんだコイツ。
宗矢は時折、気持ち悪い時がある。
まるで、何かを楽しんでいるような・・・
「宗矢ばっかり見て、宗矢のことがそんなに好きなの!?」
唐突に、朱音がキレた。
ただ、宗矢の顔を見て考え事をしていただけなのに。
なぜだろう。
だが、なんだか見てて面白いので悪乗りする。
「そうだな、好きだな。夜も共にした仲だし」
朱音は俺の話を聞いて、顔をリンゴのように真赤にさせると、「勝兜の馬鹿〜〜〜!」と言って教室を飛び出していった。
やはりおもしろい。
そして、被害者の一人である宗矢は周りのクラスメイトからの「あの二人・・・」「まさかそういうことなのか」といったコソコソ話や疑いの視線に耐えかね・・・
「勝兜! 貴様ー!」
俺に獅子のごとく襲いかかって来たのだった。
まさか、
1・2・3・4時間目が終わり、みんな大好き昼休み。
俺は宗矢、朱音とともに教室の後ろで弁当を食べていた。
俺等は黙々と食べている。
実は弁当を食べながら、念話魔法で会話をしていた。
「へ〜、朝は大変だったんだね」
教室を飛び出してしまい、話すことがあまりできなかった朱音に今朝の出来事を説明していた。
「やっぱり、大魔法師の神の駒かな?」
俺の素朴な疑問に宗矢が答える。
「魔法を11個も同時に発動していたんだろ、そうでもなきゃ説明できないほどの御業だ」
「それに、たくさんの属性の魔法を使ってたみたいだし」
前にも説明したが、騎士が使う魔法の属性は、主の神がどの魔法に精通しているかによって変わる。
たくさんの属性魔法を使ったということはたくさんの魔法に精通している神がバックにいるということ。
たくさんの魔法が使える神の代表例こそが“大魔法師”ドラ二クだ。
まぁ、殺してしまったので今更だが。
「残りあと何人だっけ?」
と朱音からの疑問。
この戦争では生存人数が午前0時に生存者へと各々の世話係を経て伝えられる。
昨日俺は聞き逃したので、回答は宗矢に任せる。
「確か、14人じゃなかったか? 今朝、勝兜が一人倒したからのこり13人か」
のこり、13人か...
スタートから半年。
短かったようで長かった。
もう少しだ、もう少しで
「決着がつく」
3人は頷き合ったのだった。
下校時刻になった。
午後16時30分、帰りのSHRが終わり、それぞれが帰宅したり、部活へ行ったり、教室で残って会話を弾ませている。
俺も、帰宅しようと学校指定の黒い通学用カバンを手に取る。
そこに、宗矢がやってきて「一緒に帰ろうぜ」などとほざいてきたので、
「女の子とがいい」
と言ってやった。
そして、宗矢が俺の尻に蹴りをいれる。
悶絶している俺を、宗矢が引きずりながら駐輪場へと連れて行く。
ちなみに朱音はテニス部に入っており、今はコートへと向かっている頃だろう。
そうやって俺は家へと帰宅し、衝撃のニュースを観ることとなる。
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