第7話 モヤモヤ

「入りますよ」


「はい、どうぞ」


「ただいま任務完了し帰還しました」


「うん、ご苦労様、レイ君、最初の任務はどうだったかな?」


「....あ、あぁ...ん〜」


「何かあったの?」


レイはエクソシストの男に言われた事を説明した。


「そっか、レイ君、必要悪って言葉は知ってるかな?」


「知りません」


「大きな大義を成すには、やむを得ない犠牲も仕方ないって考え方だよ。私達は今、世界を変えようと戦ってる。今日百人犠牲になった人がいるとしても、私達が戦わなかったら百人はおろか、何千、何万、何億という人々が不幸になる。そう考えれば仕方ない数字だって思わない?」


「良い人だけは全員救えないんスかね?」


「それは不可能だよ。私達がどれだけ強くてもね。だから、その人達の死を無駄にしない為にも、もっと頑張って戦わないといけないんだ」


レイは腕組みをしながら考えた。


「ん〜...そっか、そうですよね!その通りだ!」


ミライは微笑んだ。


「実戦を通して戦い方はわかったと思うけど、更に強いエクソシストと戦う為にはまだ力不足だ、だからライガー君と特別訓練をしてもらいます」


「え!俺ですか?!」


「え〜野郎じゃなくてミライさんとが良いッス!」


「レイ君がもっと強くなったらね。これは任務です。ライガー君から一本取れるまで訓練をしてください」


「...わかりました」


「うぃ〜ス...」


二人は部屋を後にする。


「なぁ先輩よぉ、どこ行くの?」


「黙って付いてこい」


「へいへい」


二人は階段を降りて地下に着いた。そこはとても大きく真っ白な空間で、物等は一切置かれていない。


「なぁ先輩、ミライさんってどんなひゴホォ!?」


ライガーはレイのみぞおちを殴った。


「お前程度の奈落が知る必要はない。まぁ、俺から一本取れたら教えてやるよ」


「てめ〜...不意打ちは加藤のする事だぞ!明日には一本取ってやらぁ!」


レイはひたすらライガーの顔面を殴ろうとするが全て綺麗に避けられる。当たる気がしない。


「単調過ぎる、もっと腰を入れて打ち込め、それに足も使え」


「うるせえ!」


レイはブチ切れてアッパーをするが、また見事にかわされる。ガラ空きになった脇腹にライガーの蹴りが入る。


「グフゥ!!!」


「パンチも当たらないのに隙を作るな。今度はこっちから行くぞ」


ライガーは素早くレイの頭を両手で掴むと、飛び膝蹴りを顔面にくらわせた。


「ガハッ!」


ふらついている所にパンチを何発も打ち込む。そして完全に隙が出来た所で、大振りのアッパーで顎を打ち抜いた。レイは宙を舞い倒れる。


「グッ!ハッ!」


「ダメダメだな。それでは次はエクソシストに殺られるぞ」


「てめぇ〜...めっちゃ強えぇじゃん。でもこれはどうかな?!」


レイは四つん這いになって力をため、猛スピードでライガーに飛び付いた。


「ほう、さっき見た時よりスピードが上がってるな、だが」


ライガーから翼が生えたと思った瞬間、左翼を羽ばたかせ、一瞬で大きく右側に回避した。


「!避けられた?!」


レイは着地すると急ブレーキをかけ、ライガーを探す。


「上だ」


「ちくしょ〜が、でもまだ甘いぜ!」


また四つん這いになると、今度はライガー目掛けて上に飛び上がった。だがライガーは両翼を大きく羽ばたかせ、レイを地面に叩き落とす。


「ゲエェ!」


「空を制す事が出来ると便利だ。飛び道具でもない限り、基本的に有利になるからな。お前の武器は切り裂き、噛みちぎる事だが、さあ、どうする?」


「ハ!お前だって降りて来なきゃ攻撃出来ねーだろーがバーカ!」


「そうかな?」


そう言うとライガーが翼に包まった次の瞬間、勢いよく両翼を開いたと思えば、無数の大羽がレイ目掛けて降り注いだ。


「グ!ギャアアア!イダダダダダダ!!!」


無数の大羽はレイに突き刺さりまくる。レイは大量の血を流し大の字で倒れてしまった。ライガーはレイの元へ降りてくると、手首を切って血を与えながら話し出す。


「お前の能力は近接戦が特異分野だ、だからそこを伸ばしまくれ」


「グルルルル...それもそーかもしれねーけどよぉ、先輩が空に行っても戦う方法思いついたぜぇ!」


「ほう、なら試してみろ」


そう言うとライガーはまた空に飛び立った。レイは下で何やら拾っている様だ。


「先輩の羽はずいぶん鋭いからな〜!オラァ!」


「!!」


レイはライガーが無数に飛ばした羽をライガー目掛けて投擲したのだ。


ビュビュビュビュビュ!!!


「オラオラオラオラオラ!!!」


「ク!!!」


ライガーは避けきれず両翼に包まり身を守った。暫くすると攻撃が止んだ様子だ、ライガーが翼を広げた次の瞬間


「隙ありゃ〜!!!」


「クッ!」


レイが目前まで飛び上がって来ていた、もう羽ばたいて落とす暇もない間合いだ。レイの両腕を掴んで引っかかれないようにしながら地面に落ちる。


ズザザザザ!!!


「噛みつきが残ってんだぜ〜!」


噛み付かれる瞬間、二人の隙間から足を通し、レイを蹴りのけた。


「おっとと!チッ、もう少しだったのに!」


ライガーも立ち上がる。


「今のは勉強になったぜ、正直ヒヤリとした。だが俺の本領はここからだ」


ライガーの真の実力とはーーー?!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る