第5話 最初の任務

「はえ〜...」


レイが綺麗な街模様に見惚れていると、男は急降下しビルの屋上に着地した。


「...おい、いつまで抱きついてる、離れろ」


「あ、はい」


男の翼はいつの間にか消えていた。男についてビルの中に入っていくと、ある扉の前で止まった。


「入りますよ」


「はい、どうぞ」


ドアを開けて中に入ると、社長椅子に座っている女がいた。ショートの黒髪に真っ赤な目、とても綺麗な女だ。


「き、綺麗な、女だ!」


「おいお前!」


「良いよライガー君、それよりも奇妙な感じだね。君からは二つの存在を感じる」


「あ、俺はレイっす、二つっつーと、俺とあの灰狼ですかね、俺やっぱ取り憑かれてるんですか?」


「レイ君ね、私はミライ、よろしくね。取り憑かれてるって表現でもまぁ当たりかな、ただ、私が言った二つとは君以外に二ついるって事だよ。心当たりは?」


「ん〜...」


思いつかなかったので、何故こうなったか一から説明した。ミライは悩ましげな顔をしながら聞いている。


「ふむ、だとすれば、ポンタ君も君の一つになったのかもね」


「え?!ポンタは成仏出来てないんスか?!そう言えば灰狼が言ってた「良い名を与えられる」とかって何なんですか?!」


「この世とは別の所にいるはずだよ。まずはそこに必ず連れて行かれるんだ」


そう言うと未来は語り始めた。


「あのね、生物は死ぬと、必ずあの世と呼ばれる所に行くの。そこで現世での行いに乗じて名を与えられる。名は二つあるの。一つは最悪の存在、奈落、次は善の象徴、天子(あまこ)。そしてそれらの名を与える、生まれながらに血肉を持たない存在、根源的存在、神がいる。まあ他にも色々あるんだけど、まずはそこまで知ってて欲しいかな」


「じゃあポンタは天子になったんすよね?!」


「うん、そうだよ。そして天子として、奈落の存在である灰狼の力を封じている。天子は奈落の天敵だからね」


「え、ポンタは人にあんな目にあわされて来たのに、人が好き、なんですか?...」


「のようだね。今の君の魂は間違いなく奈落の存在に近い、それは最愛を奪われた憎しみ、憎悪が君を奈落にした」


「ダメな事なんですよね...」


ミライは立ち上がり、レイの目の前に立つとおでこをくっ付けて話した。


「いいえ、当然の事なの。世の中は常に移ろうものよ、それは善悪でさえ、ね。今世の中は大きな間違いを犯そうとしている。貧困の差、差別、権力の悪用、戦争。このままでは善人でさえ、私達のように奈落へ落ちるでしょう」


レイはドキドキしながら話した。


「えっと、俺、学校行ってなくて、その、、良くわかんねえっスよ、、、」


ミライは微笑んだ。


「ふふっ、要は犠牲者が増える前に、私達で世の中変えましょうって話。力を貸して貰えるかな?」


「あ、え!はい!貸すっスよ!」


ガッツポーズで答えた。


「じゃあ、ポンタ君との契約をまずは何とかしなきゃね」


「え、契約?何とかって、言うと?」


「破棄するって事。その契約がある限り、君は力の殆どを発揮出来ない。だから最初の任務を与えるね。」


「破棄しても良いのかな...」


「ポンタ君の好きな、善人の為だよ」


レイはミライの瞳に魅了される様な感覚が走った。何て深い真紅なんだろう。美しい。


「はい」


「最初の任務は...」


ーーーー


レイは役所の前に立っている。時刻は10時程度。晴天だ。


「っしゃ!やるか〜」


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