第2話 人殺し
ゴク、ゴク、ゴク...
「ッハァー!やっぱ水道代と天然水?では美味みがちげーなポンタ!」
「ワフ!」
「もう0時か、じゃあ行ってくぜポンタ!留守は任せる!」
「クゥ〜ン...ワンワン!」
ポンタは嫌な予感がしてる様子だ。
「...大丈夫だよポンタ、必ず帰って来るし、もしダメだった時は約束したろ?」
「...ワン」
ポンタを一撫でするとレイは玄関を出て行った。真っ暗な闇の中にポツポツと街灯のか細い光が道を照らしている。
「夜はよー、幽霊だの何だのが危ねーからって孤児院の先生も言ってたっけな。本当に何か出てきそーだぜ」
暫く歩くと、とうとう目的地に到着した様だ。
「着いた!俺ん家から一番近い心スポ、犬神神社!」
レイはバックから片手サイズの木製のハンマーを取り出した。ゆっくりと鳥居から潜入していく。ここは山に囲まれていて、住宅街から少し離れている為、叫んでも助けは望めないだろう。
「ここは犬神様の霊が出て食い殺されちまうんだよなぁ。でも犬は怖くねーし、むしろ殺しちまうのは嫌だけど、生きてる俺とポンタの為だ、仕方ねーよな...」
バキィン!
「?!?!」
不意に後ろから何か硬い物で頭を殴られ、レイは倒れ込む。
「痛ッッッツーー!!」
「あれー?頭蓋骨固すぎじゃない君〜?」
頭を抱えながら目を向けると、そこにはケースワーカーの加藤が鉄バットを持って立っている。
「加藤さ...何で...」
「んー?だってさぁ〜、俺らケースワーカーが一人で何世帯の面倒見てると思ってんのさー...しかもどいつもこいつもクズばかり!保護の制度なんてクソくらえなんだよねぇ〜!社会不適合者は皆死刑で良くない?ねぇ?だから俺はさ、少しでも楽したいから夜な夜な心霊スポット巡ったりしてさ〜、幽霊のせいで死んだってエクソシストには報告すんの!完全犯罪でしょ?!ガハハハハ!」
「...逆に幽霊に殺られちまったら良かった...のにぃ...」
「はぁ?!本気で幽霊がいるとでも?!アハッ!いる訳ないじゃんそんなの〜。あれはね、物価高騰のせいで夜な夜な悪さしたりする犯罪者を減らす為に政府がついた嘘だよ〜うんうん、同僚にも信じてる馬鹿が多いけどね〜、でもエクソシストって組織は本当にあるんだよ!建前だとしてもやり過ぎだよね〜、皆情弱過ぎて呆れますわぁ本当にぃ!キャハハハハ!」
「...こんクソ...野郎がぁ...!」
「うんうん!君みたいな社不の遺言らしいね〜!じゃあ、ね!」
加藤は振り上げたバットを振り下ろそうとした、その時!
「ガウガウ!」
「ガハッ!イッッッッッ!!!離せぇえ!」
「ぽ、ポンタ...!」
後を付けて来ていたのであろう、ポンタが加藤の喉元に喰い付いている。
ドスッ
鈍い音が走り、レイの頭は真白になった。加藤は咄嗟にポケットから小型ナイフを取り出し、ポンタの胸に刺したのだ。
急に力が抜け、倒れ込むポンタと目が合う。
「ウゲェ!ゴボ!誰か...助け...て...」
加藤も鳥居の方にふらふらと歩いて行くが、力尽きて倒れた様だ。
「ポンタ...!」
レイは這いずりながらポンタに近寄り、抱き抱えた。
「だ、誰がぁ!!!そんな、嘘だろ!ポンタ!死なないでくれ!!!」
「ゲボッ!クゥ〜ン...クゥ...」
「ポンタ?!ポンタ?!」
ポンタは優しくレイを舐めると、静かに息を止めた。レイは声にならない声で叫び、泣いた。
「ゲボッ!」
やはり加藤の一撃は致命傷だったのだろう。レイは血を吐いた。治療をしなければ長くは持たない。
「...ハハ、ハハハッハハ、何で、何なんだよ、こんな、アハ、ハハ。」
レイは激しい目眩でポンタを抱いたまま倒れた。すると目の前に、灰色の狼のようなモヤが映った。
「ポンタ...ポン...」
レイは気を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます