刻の満ち欠け

 ペンダントを手に入れてから1週間程が経った。今日はあの時以上に気温が高く、最高気温は32℃になると親に言われた。いつものルーティンでテレビをつけるとニュースで殺人事件についてやっていた。被害者の写真が映し出された瞬間に僕は違和感を感じた。


「この人どこかで見たことあるな...」


ただ、そんな感覚があるだけで実際に誰なのかは分からない。部屋のエアコンを消してから、僕は学校へ向かった。



 「ねぇ。待って!お願いだから。燃やさないで。お願いだから彼を殺さないで!」



 それから3日後。勉強をしている時に、窓から家の中に猫が入ってきた。あの時の猫だ。


「どうしたの?」


何も鳴かぬまま、階段を下っていく。


「ニャー」


テレビのリモコンを指しながら鳴く。


「テレビをつけろってこと?」


電源を押すとテレビの画面に見覚えのある顔が映る。霊斗だ。異常気象の暑さと最悪の事態を考えた時の絶望で身体中に汗をかく。本能のままに、僕は彼の家まで向かった。家の周りにはマスコミや警察がたくさんいて、なかなか近づけない。話を盗み聞きした感じ、最近各地で怒っている殺人事件と同じ方法で殺されたということが分かった。同一犯だと睨んでいるそうだ。それと、霊斗の死体の横にこんなものが落ちていたらしい。

【青いペンダント】

全て思い出した。夢の中で彼の絵が燃やされていたということ、そして燃やしていた人は青いペンダントをつけていたということを。そして、その誰かの夢を見る時必ず異常気象の暑さになると。つまり、僕の絵が燃やされる夢を見た時に僕は殺される。


「こんなもの。いらない!」


震える手でペンダントを地面に投げつけた。その場から走り出した。


「気づいてしまったようだね。近くにいた2人にペンダントを渡したのはこちらの失敗だ。それでも、あれの魔力に気づいたのは褒めてあげよう」


お面を外しながら彼は言う。赤い目が鋭く光る。


「渡したペンダントはどうしたのかな?」


にやりと笑う。


「今更気づいたって何も変わらない。お前は死神の手によって殺される運命なのだから」


「いやだ、絶対に!」


必死に彼の顔を睨みつける。


「威勢があるのはいいことだが、お前にできることは刻が来るまでの人生を怯えながら過ごすことしか出来ない。ペンダントを手に入れたあの日から、お前の最期は決まっている。精々足掻いているといい」


そういうと街の向こう側へと消えていった。


「一体どうすればいいんだ」


こんな話、親に言っても信じてもらえないだろう。とは言え1人で逃げようにも不可能に等しい。なら、探そう。同じペンダントを持っている人を、ネットで。そうすれば同じ境遇の人と出会えるかもしれない。早速SNSを開いて、検索欄に青いペンダントと打った。そして、気になった人にいくつかDMを送った。



 彼の前では強がっていたが、自分の担当している人間にバレたと魔王さまに伝えたら何をされるか分からない。胸が締め付けられる。


「魔王さま。申し訳ございません。夢山雪ゆめやまゆきという少年に秘密に気付かされてしまいました。どうしたらいいでしょう」


「全くお前は、エリートのくせに失敗だとは。まあいい。アクアに攻撃のプログラムを追加しておく。お前は死神として失格だ。もう二度と顔を出さなくていいぞ」


「申し訳ございません。どうかそれだけはお許しください」


「お前を人間として現世に送り込む。この安定した魔界は少しでも人間にバレてしまったらいけないのだ。今までありがとうな」


体の内側から光が出てきて激しい痛みと熱に襲われる。



 『そんなことある訳ないでしょ笑』

返信には僕を軽蔑するような言葉しかない。


「だめなのかな...」


途方に暮れていた時、


「危ない」


顔の横を何が通り過ぎる。


「大丈夫ですか?」


聞き覚えのある声に、僕は恐怖をを覚える。


「僕を殺しに来たって言うの?」


震えるような声に対して彼は予想外の台詞を言った。

「協力しませんか?」


「は?なんで。急に態度を変えてどうしたの?」


「君に仕組みがバレたことで魔界を追放されたんですよ。だから、君を殺す必要も無くなった。そんな魔界に復讐をしたい。だから手を組みませんかということです」


彼の手には赤い血がついている。


「ここは危険なので1回私の手を握ってください」


彼の威圧感に負け、僕は彼の手を握る。すると急に周りが見えなくなったと思うと、すぐに僕はお洒落な古通りにいた。


「ここは?」


「ペンダントの秘密を知ったことで魔界から狙われています。だから、他の地方にに転移しました」


「そんなことできるの?」


「かなりのエネルギーを使うので連発は出来ませんが」


「すごい!というか傷は痛くないの?」


「これくらいは別に。とにかく魔界の動きを止めなければ」


「でも一体どうすれば?」


「夢焔神社という場所を知っていますか?」


「いや、知らない」


「そうですか...そこから魔界に行くことができるんですよ。でも、それだけでは魔界を壊すことは出来ないでしょう。だから、【終点の花】というものを見つけなければなりません」


「それで、僕は生きれるようになるの?」


「はい。終点の花の情報も夢焔神社にあります。ひとまずそこを目指すことにしましょうか」


「分かったよ」


計画を立てるために、その日の夜は安いホテルを見つけてそこで泊まった。彼の傷も癒えてきた。

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