第5話

 ボルク村への道中も俺達は現れた魔物を倒してレベルを上げていった。


 シモンと同様にナーヤもこちらから指示は出来なかった。ナーヤは攻撃魔法が得意で最初から初級魔法をいくつか覚えていた。


 序盤での初級魔法は有効なダメージを魔物に与えられる。ナーヤはこちらからの指示が無くても攻撃魔法を使ってくれるので戦闘が楽だった。


 楽なのだが、序盤ではMPが少ないのである。彼女はMPの節約など一切せず攻撃魔法を放つので、すぐに魔法が使えなくなる。

 魔法が使えなくなると杖で攻撃するくらいしかないのだが、ほとんどダメージが与えられない。いきなり使えない子になるのである。

 使えない子がいては全滅してしまうので、MPが無くなるとレーベルの宿屋に戻って回復する。そんな事を続けていた為ボルク村に辿り着くまでにかなり時間が掛かってしまった。


 「やっと…着いた。」

 俺は一人で呟いた。ボルク村に辿り着くまでに一周間ほど掛かってしまった。ゲームだと30分くらいなのに。


「じゃあ早速魔王の配下の情報を集めようぜ」

シモンが言った。俺達は早速聞き込みを開始した。前回はそれぞれ別れて情報を集めたが今回は皆んな一緒である。

 もちろん俺が行く場所は一つだ。山奥へと続く門の前に立っているおっさんのところだ。


 大きな門の前には鎧を着たおっさんが立っていた。門番とかなのだろう。


 「すいません。このあたりで魔王の配下を見かけませんでしたか?」

俺はおっさんに尋ねる。

「あぁ少し前に見たよ。山奥へと進んでいっていたな。」

「ありがとうございます。では僕達も山奥を進みたいのですが門を開けて頂けますか?」

「開けるのは構わないが最近、大きな熊の魔物が出るんだ。準備をしていった方がいいよ」

「わかりました。準備が出来たらまた声をかけます」


俺達は村の中心へと戻った。

「ねぇ、準備なんて必要かしら?さっさと追いかけましょうよ」

「まぁ確かに早く行かないと追いつけねぇよな」

ナーヤとシモンが言った。

こいつらゲームだと大人しかったけど、こんな事考えてたんだな。


「俺達は村に来たばかりで疲れてるから宿屋で一泊してから行こうよ」

 特にナーヤ。お前のMPが心もとないのである。

二人も納得してくれたので、俺達は宿屋で休んだ。


 ちなみにゲームでは出てこないが俺は宿屋は3人同じ部屋だと思っていた。だがナーヤは当然かのように男女で分けて2部屋をとっていた。

…まぁ当然だよね。ちょっと期待していたけど。

俺とシモン。ナーヤでそれぞれ別の部屋に泊まった。


 次の日、俺達は武器屋と防具屋で装備を揃えた。熊の魔物は攻撃力が高いので防具は特に重要である。


「すいません。準備が出来たので門を開けてもらえますか?」

「あぁ今開けるよ。気をつけてな」

 おっさんに門を開けてもらい俺達は山への一本道を歩き出した。

 山の山頂あたりで熊の魔物テディが現れた。


 こいつの攻撃パターンはだいたいわかっている。俺は基本回復役でたまに剣で攻撃。ここまでの道中も出来るだけ戦闘を避けてナーヤのMPも万全である。


 シモンはたまによくわからない盗賊スキルを使っていたが、ナーヤの魔法のお陰もありそこまで苦戦せずにテディを倒す事ができた。


「案外楽勝だったわね。」

「ナーヤの魔法が凄かったからだよ」

 確かにナーヤの魔法は凄かった。それと胸も凄かった。

「そうかしら。…ありがと。」

ナーヤは少し照れながらお礼を言った。ゲームでは見られない一面が見れて満足だ。


 そんな素敵な場面の後だが、先程の戦闘でナーヤのMPがほぼ無くなったので俺達はボルク村の宿屋に戻った。







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