第2話

 俺は近くの店のガラス越しに自分の姿を見てみた。そこには黒髪で青い服を着た16歳くらいの少年が映っている。昔やったRPGの主人公だった。


 これは喜んでいいのだろうか?

正直異世界の冒険はわくわくしているが、せっかくなら何も知らない世界で冒険をして見たかったという気持ちもある。

 まぁ嘆いても始まらないので冒険を進める事にしよう。


 そういえばゲームでは初めに主人公の名前を設定したが今俺の名前は何になっているだろうか?


 頭の中でステータス画面の事を考えると空中にステータス画面が浮かび上がってきた。

便利な機能をありがとう。


 やはり主人公の名前は設定されていない。

確か俺はソーマという名前でプレイしていた気がする。ゲームの説明書で使われていた名前だ。

 俺は自分の名前をソーマと設定した。

ついでにステータスを確認するがレベル1である。

 まぁこのあたりは予想通りなのでとりあえず物語を進めることにしよう。


 この街ではまず酒場に行って一緒に冒険をしてくれる人がいないか探して、腕利きの盗賊の噂を聞いた気がする。

 その先もなんとなく覚えているがこの世界にもフラグとかの概念があるかもしれないので一応流れ通りに進んでいくとしよう。


 俺は酒場に入りマスターに話しかけた。

「この街で冒険仲間を探しているのですがどなたか心当たりはありませんか?」

「それなら盗賊のシモンがいいんじゃないかな?あいつも最近冒険仲間を探してたよ。今は迷いの洞窟に行っていると思う。」

「情報ありがとうございます。」


 俺はマスターにお礼を言い店を出た。

マニュアル通りの解答をありがとう。マスター。

 ゲームとは違い全く関係の無い質問をしても別の解答が返ってくるのだろうか?

 少し気になったがそれは別の機会に試してみよう。


 予想通りシモンの情報を聞くことができた。

ちなみにこの世界の盗賊というのはジョブの事で人から盗みを働くものではない。

(ちなみに魔物からはアイテムを奪ったりしている)


 情報が聞けたので早速向かいたいところではあるがここで一つ問題がある。

 俺の記憶が正しければ洞窟でシモンと話していると魔物に襲われるのだ。確か推奨レベルは10レベルだったと思う。


 まずは街の外に出て魔物を狩ることにした。

確かこの辺りはカエルやウサギの魔物が居たはずである。

 街の外を歩いているとカエルの魔物が2匹現れた。

俺は先制攻撃を仕掛けた。

ソーマの攻撃、クロールAに6のダメージ。

クロールAの攻撃、ソーマは3のダメージを受けた。

クロールBの攻撃、ソーマは3のダメージを受けた。

ダメージを受けても痛みは感じないがステータス上のHPが23から17に減っている。

ソーマの攻撃、クロールAに6のダメージ。

クロールAは倒れた。

クロールBの攻撃、ソーマは3のダメージを受けた。

ソーマの攻撃、クロールBに6のダメージ。

クロールBの攻撃、ソーマは3のダメージを受けた。

ソーマの攻撃、クロールBに6のダメージ。

クロールBは倒れた。

全ての魔物を倒した。

20の経験値を手に入れた。

10ミリスを手に入れた。(ちなみにミリスはこの世界のお金の単位である)


「バトルキツ過ぎーー」

 俺は思わず一人で叫んでしまった。

というかゲームではターン制って普通だが、現実だとあまりにもだるい。自分の番以外では何故か体が動かないのである。

 あと敵が強すぎる。

レベル1だから仕方ないが、残りのHPが11しか無い。半分以上削られてしまった。

 まだレベル1なので回復呪文も覚えておらず、回復薬は確か10ミリスなので1つ買うとお金が尽きてしまう。仕方が無いので俺は宿屋に泊まってHPを回復する事にした。


 そうして20日後…

俺は10レベルになった。

「いや、時間かかり過ぎーー」

また一人で叫んでしまった。

 この間俺は街の外で魔物を倒し、HPが少なくなったら宿屋に行くという生活を繰り返していた。

 ゲームだと宿屋で過ごす時間は一瞬だが実際は1日かかるのである。

 この世界はスマホもテレビも無いので宿屋でひたすら横になっていた。

 ましてや一人でこの生活を3週間近く続けていたので軽く鬱になりかけた。


 どうやらこの世界の冒険は予想以上に難易度が高いらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る