向日葵は、太陽を見る。けれど太陽は、月を照らす。

@mohoumono

向日葵は太陽を見る。けれど、太陽は月を照らす。

あの人は、いつも優しくって、私にとって心地よい温かさをくれた。親から貰うものは、いつも少し熱かったから、私にとってあの人と居る時間は幸福そのものだった。それ以外の言葉で綴る事が出来ないくらい幸福だった。3月9日は、ずっとコンビニに居ようと思った。そうでもしないとあの人に涙を見せてしまう。それが嫌だった。でもそれ以上に、あの人が私に向けてくれなかった表情を見るのが辛くてたまらなかった。そうして、コンビニでおにぎりを買おうと陳列棚を見ていても、何一つ買う気力なんてなかった。食欲なんて湧くはずもなかった。でも、筋子を手に取った。あの人がよく好きだと言っていたから。田舎のコンビニじゃ売っとらんって言って、わざわざコンビニまで連れて行かれて買いに行ったなぁ。私は、シャケの方が好きなんだけど。レジに向かおうとすると、「ここにおったんか。皆心配してたで」。息を切らしながら、微笑むあの人がいた。かっこいい紋章が設られている黒い袴を着て、「お腹空いたんかいな。」と、私が持っていたおにぎりを取り、レジへと向かった。払うよって言っても、話なんか聞かないで、「ええよ。今日もかっこつけさせてぇや。」「今日が一番カッコいいよ、決まってるね。馬子にも衣装って奴だ!」馬子にも衣装なんて思っても無いことを言う。でも、そうでも言ってないと、胸の内を曝け出してしまいそうだったから。あの人は、優しいから、きっと心を痛めてしまう。「カッコいいだけでいいねん。一言多いな今日は。」

そうやって私の頭を撫でる。これから先、こうゆうこともなくなるのだと思ったら、涙が溢れそうになる。私は、それを笑って誤魔化す。「もう、子供じゃ無いんだから。やめてよ。」そんな事ないはずなのに。「そうか。悪かったな。次から気をつけるわ。」気なんてつけなくていいのに。なんか嫌だ。こんな自分が惨めだ。「早く行かないと遅れんで!主役が遅れてバツついたらどうすんの?」「不吉なこと言うな。まだ時間あるから大丈夫や。安心し。」「うん。そうだね。」私は、笑えてたんだろうか。それから、会場に着いて着々と準備は進んで、始まった。あまり記憶がないけど、赤い器に透明の液体を入れて、飲んでいるところだけは、覚えていた。それで全部終わって、みんなお酒を飲んで、良い気になって騒いで楽しそうにしていた。私は、どうも楽しくなかった。早く帰りたかった。親に言って、デジカメを渡して一人ホテルに戻った。お風呂にも入らず、布団に潜った。そういえば次の日、またあんた髪乾かさずに寝てたでしょって怒られたっけ。違うけれど、その方が都合が良かったから。そうゆうことにしておいた。

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