其の人生の終りに捧げる

第10話 少女祈り中

　いわゆる式典が終わると、期末試験がきた。篠塚はその夜、時雨と何があったのか想像できなかった。そんなことはなかったが、彼は風采のいい女の子が自分の前で脱いでいるのを初めて見た。時雨は千葉に帰る前の夜に篠塚をホテルに誘ったが、篠塚は断った。

　栗原だが、彼は彼女が少し異常だと思っている。彼女は自分に慎重になり始め、以前の活発な可愛らしさも消え、最後にポニーテールやハーフアップをしたのはいつだったか、篠塚はもう覚えていない。篠塚は何度も起こったことを問い詰めたが、栗原はいつも口をつぐんでいた。

「大丈夫、夏休みになればいいのに」と栗原は篠塚に言った。苦笑いを浮かべた。

「おかしい」篠塚は不可解だった。

　期末試験が始まった。栗原は以前から佐々木らと復習していたが、松雪は外校の橋本徹也とバスケットボールをする機会をあきらめ、復習にも余念がなかった。星野はデートや出会いをたくさん押しのけ、一日中教室に閉じこもっていた。しかし篠塚は少しも感染していない。なにしろ、男性にとって結婚後、心は定まらない。

　最初の試験は文語文中国語でした。篠塚はわずか40分で中国語の答案用紙を書き終え、残りの時間、彼は中国語で答案用紙に奇妙なものを書いた。中国語の解答用紙を渡すと、学生たちは孔子（こんつ）の語録を文語文として日本人に試験してあげようと文句を言って、本当に人間性がない。しかし篠塚は一言も言わなかった。

　2つ目は数学で、習ったばかりの因式分解と2次関数の内容を試験した。答案用紙が提出され、学生たちは自分の草稿用紙をチェックしている。しかし篠塚は一言も言わなかった。

　日本の歴史は平安時代を試験して、鳥居、参道の見取り図と仮名の出所を試験して、学生たちはすべて仮名の漢字の出所があまりにも暗記しにくいと文句を言っている。篠塚は一言も言わなかった。

　国語、物理、英語、政治の試験が終わり、渡辺先生がクラスを持って社会実践を終えた。

　総点で言えば、篠塚さんは藤原さんに次いで2位だったが、英語が少し劣っていたのかもしれない。

　期末総括大会で篠塚氏は壇上に上がって発言し、中国語の「大丈夫」で尾を引き、その後、日本語なまりの英語をひそかに罵倒し、ゆっくりと壇上に降りた。

「本州島を船で回りましょう！」栗原が提案した時、篠塚は驚いた。

　床に敷かれた床に寝そべっていた栗原は、窓越しに月の傍らに輝く木星を見上げていた。篠塚は茶室から出たばかりで、時雨の名前で頭がいっぱいだ。栗原の質問を聞いて、篠塚はたちまち我に返った。

「なに……なに？」

　栗原は問題を繰り返した。

「二人だけ？」篠塚は訊いた。「それはよくないでしょう？」

「結婚話が公になったんじゃないですか」栗原は目を動かさずに木星を見つめた。「それに、2人しかいないのに退屈しないの？」

「ほかに誰がいるの？」篠塚は訊いた。

　栗原は1枚の紙を取り出し、美しい文字でひらがなのルビの名前を書いていた。

「篠塚（しのずか）楓（かえで）、篠塚（しのずか）玲舟（れいふね）、栗原（くりはら）渋坂（しぶさか）、水原（みはら）秋太（あきた）、安城（あんじょう）凛一（さめいち）、米沢（よねざわ）塩太（しおた）、鈴木（すずき）響伊（ひびい）、佐本（さもと）勇太（ゆうた）、松雪（しもゆき）言太（いた）、星野（ほしの）空（そら）、高橋（かたはし）奈川（ながわ）、藤原（ふじわら）逢坂（あいさか）、紅葉野（こうようの）昭太（てらた）、神中（かみなか）平成（へいせい）、八重（やえ）奈子（なこ）、堇花（みすればな）響（ひび）、黒柳（くろやなぎ）笹子（ささこ）、橋本（はしもと）徹也（てつや）…」篠塚は栗原標のひらがなを眺めながら、一房の名前を読み上げた。

「違うでしょう？ここには私の友達が多いのに、どうやって知り合ったの？」篠塚は栗原に尋ねた。

「結婚祝いに来てくれたんだよ」

「彼らはあなたを何と呼んでいますか」

「篠塚さんや」

「……」篠塚は言葉を失った。

　篠塚はリストを最後まで見て、時雨今子と小林沙上という意外な名前が2つ出てきた。篠塚は急いでリストを折って栗原に渡し、「予算はどうですか」と話題をそらした。

「私一人の予算ですか。百万でしょう」

　篠塚は逆に息を吸った。「全員合わせて？」

「わかりませんが、でも銀座に1ヶ月滞在するのは十分です！」

「船は、どうやって解決するの？」

「今子家の私用船です」

　篠塚は頷き、内心うらやましく思った。

　夏休みが始まると、数十人が汽車に乗り込み、神奈川県の横浜港に向かった。篠塚は車窓側に座ると、数日前の似たような画面が胸にこみ上げてきた。水原は後ろに座ってシートベルトを締め、リラックスして椅子の背にもたれかかり、携帯電話を見始めた。前回とは違い、栗原はシート間のグリップを上げて上に折り曲げ、背を向けて横になり、篠塚の膝に枕をして目を閉じた。

　列車は岐阜に止まり、篠塚は水原に頼んで、水を買ってあげた。水原は藤原を呼び、一緒に降りた。列車は京都に止まり、篠塚は京都のビルを眺めていた。すでに7月で、桜はすべて散って、単調な空枝だけが残って、来年の春が来て、再び咲くことを楽しみにしています。翌年の春を待ち望んでいた篠塚は、恋人と手を取り合って一緒に花見をする映像を想像すると、思わずニヤリとした笑みを浮かべ、ショタに属する最もピュアで明るい笑顔を見せた。渋坂は列車の本車両の最後に座って、篠塚をじっと見つめていた--その顔は秀麗だが、彼にはなじみがない。なぜ妹がこんなに功名も成果もない男と結婚したのか、彼は本当に理解できない。

　たちまち、彼は篠塚のその会心の笑いをちらりと見た。「笑うのがピュア…」渋坂は驚いてポケットから身だしなみを整えるための鏡を取り出し、自分の顔の前に置いた。彼は鏡の上の悔しさと苦痛を含んだ顔を見つめ、鏡を閉じてため息をついた。

　午前10時24分、一行は列車を降り、関東の広い平野に立った。横浜市街地の雲集ビルが密接に整然と並んでいる。昼の太陽は横浜全体にキラキラした金縁をメッキした。これは日本最大の対外通商港の一つで、時々ヨーロッパとアメリカの商人が正式なスーツを着て行き来するのを見ることができる。

「玲舟——」時雨は遠くで叫んだ。篠塚は時雨を見て栗原の手を振り切り、列の最後、松雪のそばに隠れた。

「何してるの？」栗原が駆け寄って篠塚の手を取り、時雨の前に引き寄せると、篠塚は再び栗原を振り切って両手を重ね、自然に垂れ下がるようにして時雨に礼をした。お辞儀をした後、篠塚は背筋を伸ばし、誰も口を開くのを待たずに挨拶を始めた。

「はじめまして、篠塚と申しますが、お名前は？」と言って、時雨が自分を知らないふりをして、わざとらしく挨拶してほしいと言った。

「楓くん！」時雨は篠塚のことを全く理解せず、彼の懐に飛び込んで篠塚に擦り付けた。

「知ってる？」栗原は訊いた。顔には災いを喜ぶ恥知らずな表情があった。

「知らない、知らない…」篠塚は時雨を押しのけ、栗原に言い逃れた。

「楓くん、私のこと覚えてないの？」時雨は篠塚を見た。「前に夜は一緒だったのに…」

「黙れ！」篠塚は時雨の口を押さえて、彼女に続けて言わせなかった。「私は玲舟のかれだ。あなたは言った。彼女はどう思うだろう？」篠塚は時雨の口を押さえて、抵抗するうめき声しか出せなかった。

「もういいよ、楓」栗原は小さくため息をついた。「時雨は私に言った。あの夜はあなたが自分から引き取ってくれたのも、あなたが自分から泊めてくれたのではないか」

　後ろからブーイングが聞こえてきた。憶測の声に篠塚は頷いた。

「ただ……ですか」栗原は篠塚の手を引いた。彼女は時雨に向かって「ご案内しましょう」と言った。

　みんなは時雨の船に乗って、甲板だけで200畳の大きさがあり、船首や帆台などを含めると、船面は500畳ほどあると嘆いた。

「船室は八百畳もあるから、宿泊の心配はない。楓君については……一緒に住んでくれ」時雨は口をついた。

「え、じゃあ玲舟は？」篠塚は栗原の方を振り返った。

「彼女は君のことが好きだから、行ってくれ」栗原はあっさりと書いた。

　渋坂は篠塚を見つめ、視線を見失った。

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