第157話 書類不備系魔法少女が増えました!

 というわけで、翌朝早速魔生対へと向かいました。

 あ、私は一度帰宅しましたよ?流石に朝帰りとか後が怖いですからね?

 で、魔法少女特権を使って受付さんを通過。

 流石にまだ部外者である彼女たちをザマさんの執務室まで連れて行くのはどうかと思ったので来客用の応接室で待機してもらって私がザマさんを呼びに行くことになりました。

 「なのでザマさん。認知してください!」

 「誰の子を!?」

 おっと、先走りすぎました。


 「……と言う事で、白さんが保護した私と同じ様な状況の3人なんですが」

 気心の知れた間柄とはいえ、流石に説明は必要でしたね。

 で、報告を聞いたザマさんは渋い顔です。

 「うーん、魔生対ウチとしては受け入れて保護して、正式な身分を整えてあげたいところなんだけど……」

 くいっと顎で示されたテレビを見れば、フランスの魔物&魔力災害対策組織の声明がデカデカと表示されているところでした。

 『つまり、魔力により新たな生命を得た少女達。彼女たちを生ける屍Les morts vivantsもしくは英語表記である生ける屍リビングデッドと呼称し、発見次第逮捕、拘束した上で人権を剥奪し、研究対象として扱う法律を議会が承認したということですね?』

 『ええ、流石に昨日の。アレを魔法で動かして復旧中の凱旋門に突っ込ませた件で国民感情に限界が来たみたいですねぇ……』

 

 「……ゴーストバ○ターズ2です?」

 「言っとくけどそのネタ、魔法少女の子達には通じないからね?」

 ぉぉぅ、ジェネレーションギャップ。

 「流れ的にコレ、世界中に広がりかねないヤツなのよ。だから、その子達の受け入れを大っぴらに出来ないのよねぇ」

 シワの寄った眉間を揉むザマさんですが、口はちょっと笑っています。

 「でも、大っぴらに出来ない誰かさんが既に一人居ますよね?1人も4人も一緒じゃないです?」

 「はー、また謎の書類紛失事件を発生させるしか無いかー。急いで住む部屋を手配するから、大っぴらに出来ない誰かさん1号はその子達を待機室に連れてってあげて。人が集まり次第紹介しましょ」

 はい、こういうケースでザマさんが彼女達の保護を断るなんてありえないんですよね。

 「で、彼女たちへのおちんぎんは?」

 「スネ希と一緒ね。魔生対正式所属日に今日まで遡って支給。それまでは私の貯金から貸出し。数年分ぐらいはなんとかなるし、それまでには状況も改善されるんじゃない?というか改善させるし」

 さっすが高級官僚、お金持ちです!

 いや、多分ですけど使う余裕が無かったんでしょうね……。早く戸籍を回復させて飲みにでも出かけたいものです。

 じゃ、とりあえず私は先に行きますか。


 「はい、と言う事でこの3人が今日から私と同じ協力者枠で魔生対に出入りする事になりました。ザマさんは彼女達の生活環境を整える手配が有るとかでちょっと遅れてますので先に紹介しとこうかと」

 なんか、流れ的にザマさんちょっと時間かかりそうだったので独断で勝手に紹介しときましょう。

 朝イチですし、夜勤だった初雪さんと真割さんもまだ帰る前の時間でしたし丁度良いですね。

 「ねえセヴンス?この子達貴方のノリに慣れて無いんだからいきなり話振るのやめない?」

 白さんに言われて3人娘を観察してみると、確かにめっちゃキョドってます。

 おっといかんですね。身内相手には途端に突拍子もない行動をとっても許されるからってほぼ初対面の相手に同じ様なネタ振りしちゃダメですよね。

 

 まあ、その後多少グダグダしましたが私が司会進行するという事で許されました。

 「じゃあえっと、リーダーのアデリーさん?からどうぞ!」

 という事で、初手はやはりリーダーと目される低い声がせくすぃな彼女から行きましょう。

 濃紺のキレイなセミロングを靡かせながら颯爽と前に出る意思の強そうな目の少女。

 「うむ……、その、今日からここにお世話になる……のか?名はアデライデ・コールドウェル。根源は統一言語バベルワード・プレザン、変身後の名はオムニテル・ロゼッタ。どうか、よろしく頼む」

 オムニテル、全知オムニテルと来ましたか……。

 多分ロゼッタはロゼッタストーンからだと思います。

 「ああ、統一言語バベルワード・プレザンでどの様な魔法が使えるのかが疑問か?ふむ、ならばこういうのはどうだろう?」

 と、皆が統一言語バベルワード・プレザンという根源に疑問符を浮かべたのがわかったのでしょう。アデライデさんは続けて魔法も披露してくれるみたいです。


 【せかいへ ねがう 我らがしかいにうつる蘇えりし者レヴナントを あおく てらせ】


 お、魔力が空間に対して作用するタイプですかね?結構レアです。

 彼女を中心に、世界に対して染み込むようにゆっくりと魔力が広がり……。

 私と3人娘が薄っすらと青く光り始めました。

 「うむ……。この様に、『世界』に対して私が願うことで様々な現象を起こすことが出来る。フランスから日本へ空間を繋げたりな。問題は発動までに時間がかかって戦闘に向かないことか……。ああそうだ、我々と貴方達が違和感なく母国語同士で会話出来ているのも私の魔法の影響だな」

 おお、自前の移動手段も有りでしたか。これはかなり便利な根源なのでは?

 あとはやはり、通訳魔法は便利ですよねぇ。

 ……あれ?これもしかしてヴォイニッチ手稿とか読めたりしません?


 「アデライデさんありがとうございました。では次の方ー。えっと、じゃあピンクのふわっふわの髪が可愛い貴方で」

 はい、次の方は身長高めなのに優しそうでふわっふわの髪の女の子。リアちゃんでしたっけ?

 「えっと、えっと……。すぅーはぁー……。私は、オフィリア・フォーサイス、です!根源は妖精郷!リトルウィッチとしての名前はティターニア・フルートです!よろしくお願いします!」

 貯めが長かった分勢いよく行きましたね。これは割と思い切りが良いタイプと見ました。

 しかし、根源が妖精郷……使い魔召喚タイプですかね?

 「リアは強いぞ、我々の中の火力担当だからな。いや、伝承に有る妖精が割と残酷でな……」

 あ、やっぱり召喚タイプっぽいですね。

 確かにブラックドッグとかレッドキャップとか、ゲームでもモンスター扱いで出てくる妖精結構いますもんね。


 「では、最後は私ですね」

 っと、紹介する前にすっと自然な感じで前に出た薄紫で、えっと髪型は最近ちょっと流行ってるハンサムショートって奴ですかね?の小柄な女の子。

 でもなんかこの子、立ち振舞いが侮れない感じですよ?

 「名はエルナ・シュタインフェルト。先のお二人はイギリス出身ですが、私はドイツ生まれですね。根源は騎士、小魔女クラインヘクセとしてはリッター・デア・ディームートと名乗らせて頂いております。以後、お見知り置きを」

 名乗り終えると同時に、一切体幹にブレのないボウ・アンド・スクレープで一礼するエルナさん。……いや、それ男性の挨拶ですよね?

 「リッター・デア・ディームート謙虚なナイト……だとぅ!?」

 あと、九條さんが思わず席を立ち上がるほど反応してらっしゃいますが、私のログには何も無いです。

 

 「で、彼女達は私と同じ体質になりますので心拍数とか体温とかがアレですが気にしないであげてください。後変身も解けません。……というかぶっちゃけると、彼女達が私と同じ体質というか世界中で今騒がれてるゾンビ少女達全員私と同じ体質なんですよねー」

 とりあえず、白さんには話しちゃったので他のみんなにもぶっちゃけちゃいましょう。

 あ、当然ですが理珠さんやミラさん、エラさん、あとイツァナグイ紹介する過程で雛わんこには先に説明が済んでます。

 さあ、果たして反応は!?


 「……おk、だと思ってた」

 「まあ、死ぬほど解りやすかったんで意外性も何も合ったもんじゃねーって言いますか……」

 「まあ、私も蛇さんから既に聞いておりましたし?」

 「あ、あの、羽佐間室長から教えていただきました……」

 なんという怒涛の知ってたコールでしょう!

 まあ、札月さんは医療関係者ですししょうがないと思います。

 というか、初雪さんはいつの間にイツァナグイと仲良く!?

 

 と、そんな白々しい空気が流れていたところに魔物出現の一報が入りました。

 ──東京、渋谷にて魔物発生。通常体、モル……多数の触手を生やした中央に口のある植物型の魔物です。ただし非常に巨体で複数人での対処を推奨します。魔力保有量も多く特に、呼気による状態異常攻撃に注意を払ってください。解析班からはチームセヴンス、もしくは霧の魔法少女での対処を提案します。魔法少女の皆さん、対応お願いいたします──

 

 息が臭そうな予感がしますね!?

 というか、渋谷に大型の魔物が発生とか特撮映画界隈的に碌なことにならない気がするんですが大丈夫ですか?というか、絶対ドラゴンも来ますよね!?

 「あ、私対ドラゴンをソロるからセヴンスは大型モンス狩ってて、できるだけマッタリで」

 お、なんかドラゴンに対して依霞さんが応手を用意してきたみたいですね?

 ……流石に東京で人的被害が出ると大騒ぎになるので、なんとか被害を抑えられれば良いんですが。




☆★☆★☆★☆

 

 セヴンスさんのお給料ポケットマネー払いに関してザマさん曰く

 「別に、親友と遊ぶ予定で貯めてたお金を貸してるだけだもの。元々使う予定だった相手に別の用途で渡してるだけ。問題無しよ」だそうです。

 

 レヴナント3人娘は、アデリーちゃんがサポート要員、リアさんが火力担当で、エルナさんが防御担当のコンビネーションプレイが得意です。

 地味に、妖精扱いされる幻想生物の中でユニコーンがめっちゃ強いんですよね……。

 

次回はVSモル……大きな口の周囲に多数の触手を生やした植物型の魔物です。


 

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