第152話 魔法少女による災害救助活動
「あら?そういえば魔女のセヴンスさんとは初対面……だったかしら?」
ヘリから降りてきた黒髪黒衣の魔法少女は瓦礫だらけの地面を優雅な足取りで歩きながらこちらへと近寄ってきました。
「わたしは土蜘蛛のあやかし……、いえ、土蜘蛛の根源を持つ魔法少女シルヴァ・ストリング。本来は京都担当なのだけれど……、この現場には私が必要だと呼び出されてしまったの」
身長は170ちょっとぐらいでしょうか?出るとこは出てて引っ込むとこは引っ込んでる羨ましいスタイルです。白さんと似た系統ですが、この人の方が艶やかと言うかなんというか……。
あと、浮かべているのは仄かな笑顔なのに雰囲気がすごく怖い人ですね。
ともすれば巣にお持ち帰りされて長い時間をかけて搾り取られるみたいな威圧感。
そして、それ以上に強い、
「はじめまして、セヴンスです……」
なるほど、これが土蜘蛛の魔法少女ですか。
雛ちゃんみたいに鬼の暴力性だけを抽出して行使してるタイプじゃなくて、土蜘蛛そのものみたいな気配を身にまとっている感じなんでしょうか?
正直ちょっと怖くて思わず後ずさってしまいました。
「厭だわ……。怖がらせるつもりはなかったの……。ほんの少しだけ、そう、ほんの少しだけ腹を立てているだけ……。今日はあの子との逢瀬の日でしたのに、ねぇ……?」
ねえ?って言われてもわかりませんが、怒りが収まるまでちょっと離れていたいんですが、大丈夫ですかね?
と、とりあえず気を取り直して救助活動を開始しましょう。
魔法少女と私の担当する作業については現場を見ながら自衛官の方と魔生対の職員の方が打ち合わせをしている様です。
あ、それより先に雛ちゃんが支えてる集合住宅をどうにかしとかないと時間が……。
「あら……、アレを抑えて欲しいのね?」
私の視線の先に最初に気がついたのはこわいこわい土蜘蛛の魔法少女で……。
「
黒く変質した両腕から放たれるのはヒーローの蜘蛛男なんかとは比較にならないぐらい大量の粘糸。それはあっという間に建物を覆い尽くして崩壊を止め、反対側の地面や建物と繋ぐことで倒れる事を防ぎました。
なるほど、シルヴァ・ストリングさんの魔法はこの現場においてかなり有用そうですね。わざわざ京都から呼ばれた理由もわかります。
逆に、私の魔法で有用そうなのが
そういえば、白さんとか銃器出すのと加速ぐらいしか魔法知らないんですがこの現場で何が出来るんでしょうか?
自衛隊の方に「この一帯の建物の補強をお願いして大丈夫ですか?」と言われたので作業をしながら顔だけ動かして白さんを探します。
ああ、いまし……消えました。
えっと、何やら一定時間ごとに立ち止まってまた走り出して、何でしょう、瓦礫にペイント弾?を撃ち込んでいます。
あ、目が合いましたね。
「あらセヴンス、戦闘お疲れ様。これから数日間人命救助のお仕事が入ってしまったけれど大丈夫?疲れとかは無い?」
あー、確かによく考えたら連戦というか連続してのお仕事になるんですよね。
まあ、そもそものラブカ君が「みんなでなぐったらなんかしんだ」ぐらいの勢いだったんで疲労とかは特に感じてないわけですが……。
「私は身体の造りが他の人とちょっと違うので大丈夫です。なので、理珠さんとか雛ちゃんとかを見といてあげてください。ミラさんは私と似た感じになっちゃってるんで大丈夫だと思います。で、それはそれとして白さんは何やってたんですか?」
「何って、……まさか、私の根源忘れてたりしないでしょうね?」
うん?白さんの根源はバニーガール……じゃなくて兎でしたね!
となると、兎っぽい何かでこの場で役に立ちそうな能力は……あっ!
よく見れば、普段は片方が折れてるバニーガールの付け耳が両耳ともピンと立っています。
「思い出した?兎といえば耳の良さでしょ?」
そう言って付け耳を動かして見せる白さん……って、それ自分の意思で動かせるやつだったんです!?
「だからこういう現場に到着したときの私の最初の仕事は、瓦礫の中や地下から人間の気配がしないかを音の面から確認する事なの。ペイント弾はその可能性がある場所の目印って感じね」
なるほど……。コレまで使った魔法が全部戦闘向きだったので割と戦闘狂なんじゃと思ってましたすみません。
というか、そんな重大なお仕事をしてるのにこんな所で私と話し込んでて大丈夫なんでしょうか?
なーんて思った矢先、視界の端に映る黒いバニーガールさん。
あー……、分身魔法ってこういう時にも役に立つんですねぇ……。
「じゃあ、そろそろ私は仕事に戻るけど……、セヴンスも疲れたら魔法少女用の仮設休憩所に行きなさい。一応、寝る場所とご飯は用意してあるはずだから」
そう言って瓦礫の隙間を風のように走っていく白さん。
去り際に指さされた方向を見れば、確かに職員の方が外から見えないように張ったしっかりとしたテントが見えます。
そうですよね。私とミラさん以外の魔法少女は魔力が切れたら変身を解除して休む必要がありますから身バレ防止のためにもそういう場所は必須ですよね。
なんだかんだ、魔生対もお国も色々考えて用意してるんですよねぇ。
私や理珠さん、シルヴァ・ストリングさんが中心となって魔法で建物を補強し、その間に白さん達が人命検索、依霞さんが霧を使って火災による二次災害の防止と瓦礫に閉じ込められた方への応急的な水分補給を図り、邪魔な瓦礫やら崩壊しかけの建造物やらは雛ちゃんや九條さんがパワーで処理し、埋まっていて急を要する場合は真割さんが急いでドリると……。
いや、私が来てから1年は戦闘に明け暮れてたわけですが、それ以前に何回もこういうケースがあったんでしょう。
皆ある程度慣れた動きをしていて、ここだと逆に私がちょっとお荷物感ありますね。
あの人見知り&引っ込み思案のメリクリさんですら怪我人の治療ですごく忙しそうに動き回ってますし……。
あ、あとシルヴァ・ストリングさんみたいに初動対策課以外の魔法少女や、普段戦闘に参加しない魔法少女の姿がちらほら見えますね。
ものすごくきれいな声で歌ってる子とか、あ、あの子は動物使役系ですかね?持ち出せなかったor逃げ出したペットを呼び集めているみたいです。
犬猫や、珍しいところだとフクロウなんかが一列に並んで歩いてる様子がちょっと面白いです。
コックハット被ってる子とか、修道服っぽい子とか普段目にしないいろんなタイプの魔法少女が集まってるみたいです。
そりゃあ、魔法や本人の性格が戦闘向きじゃないけど人の役に立ちたいって魔法少女もいますよねぇ……。
お歌の魔法少女の子のリラックスできる歌とか、鎮静効果半端じゃないですからねコレ。こんな人命に関わるピリついた現場で彼女が歌い始めた途端怒鳴り声が聞こえなくなりましたもん。
パニックや焦燥によるミスが減り、結果的に効率が爆上がりするとかなんて効果的な支援魔法なんでしょう!
……あれ?こうしてみると私の魔法って、応用範囲広く作ったつもりだったんですがめちゃめちゃ戦闘特化になってません?白さんに脳筋疑惑かけといて、実際に脳筋だったのは私だったんですねぇ。
まあ、作り直すこともできないんでこのまま行くしか無いんですが。
そんなこんなで、自衛隊の指揮のもと要救助者を可能な限り救出し、瓦礫を撤去し、周囲の建造物にダメージが無いかを念の為魔法で補強しながら確認して、長い長い3日間に及ぶ災害出動は終わりを迎えました。
結果として、ラブカ型の魔物が出現した際にドラゴンも連鎖出現するものと予測して発令した広範囲に及ぶ避難指示が功を奏し、死者6名、重軽傷者(札月さんが魔法で全員治療したので)無しという被害規模から考えるとかなり少ない数字で抑えられた様です。
いえ、死者が少ないなんて言ってもやっぱり人は死んでるわけで、コレを喜んじゃいけないと思うんですよねぇ……。
……あとこれ、魔力的にドラゴンはやっぱり魔物じゃなかったって伝えたら魔物保険の適用範囲外になってものすごく揉めたりしませんか?
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なお、死人が出たので戦闘映像は公開されなかったため、ログ回はありません。
あ、修道服の子は死者の感知、コックハットの子はスタンドのパール・ジャム発動時並に肉体にプラス効果のある料理が作れます……が、見た目が凄く悪いです。
次回はドラゴン飛来の裏側ですかね。
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