第150話 巨大不明生物(ドラゴン) 飛来

  ──見るもあたわず、識るもあたわず、隠せ、かくせ、御簾の中──

 今後、ドラゴンが襲来した時の為に、事前の打ち合わせ通り理珠さんが隠しの藤御簾を展開したのを詠唱で確認しながら、砂浜を駆けつつ七翼の飛刃イペタム・ヴルンツヴィークを展開して加速します。

 というか、砂浜で巨大な魔物と戦闘するの展開はアレですね。雛ちゃんと初めて出会った魔物の群れ&モンゴリアンデスミミズ相手以来です。

 ……今回、敵はグレードダウンしてるのにこちらの戦力が人数比で2.5倍になってるので最早戦闘結果は見えているようなものなんですけどね。

 一応、なんか特殊能力が有ったりすると思わぬ苦戦をする可能性はありますから、撃滅を確認して純魔結晶を持ち帰るまでが遠足です。の精神でいきましょう。


 「めーさーさつじゅーこーせんほー!」

 んで、砂浜を疾走する私の頭上をなんか青い電撃みたいな光線がハイテンションな掛け声とともに奔り、ラブカ型の魔物に突き刺さりました。

 ……いや、わかるんですよ!?特撮オタ的に、あの良くわからないパラボラアンテナみたいな砲身から発射されるメーサー光線はなんか電撃みたいなエフェクトじゃないと駄目っていうのは!

 でも、光学兵器が電撃っぽいエフェクトになるのはおかしいですよね!?

 なお、特撮界隈でも弱めなラブカ型の大型魔物君には効果は覿面だったようでめちゃめちゃ身悶えてます。

 「うーりゃー!」

 そして、そのまま光線を発射しながら薙ぎ払うエラさん。

 ……楽しそうですねぇ。


 おっと、眺めてるだけじゃなくて私も仕事しないとですね。

 「神性具現ディヴィニタス・インカネーション万象の毒牙フルンティング

 大鎌に爆破毒をエンチャントし、素早くその場で3回転!

 回転の勢い全てを大鎌に乗せ、ラブカ君の口へと毒の刃をぶん投げます!

 「薬は注射より飲むのに限るりますよ、ラブカさん!」

 まあ、このラブカ型の魔物の元ネタだって口からお薬流し込まれて倒されてますからね。ここは毒の経口摂取をしてもらいましょう。

 

  大鎌は見事にラブカ君の口の中にぶっ刺さり万象の毒牙フルンティングの爆破毒が注入されます。

 ……正直もう、そんなに時間が経たないうちにラブカ君死んじゃうと思うんですが、もしかしてドラゴン来ない感じです?

 というか、これまでの大型魔物が港湾地帯に出てたのに対してラブカ君は普通に海岸に出現ですから、もしかするとドラゴンの出現条件を満たしてない可能性がありますね。

 あの、もしかしてラブカ君って最近の大型魔物出現のイメージに引っ張られて出現しただけのドラゴン出現に全く無関係の魔物だったりします!?


 「しぎゃー、んーん!」

 ラブカ君も悲鳴でそうだそうだと言っていますね。

 ……まあ、結局魔物だし倒さなきゃならない事に変わりはないので問題はないんですが。

 と、そんな事を考えていた時でした。

 東の空に紅の竜が羽撃いたのは……。


 何やらコンテナを片腕でむんずと掴みつつ、ばっさばっさとその翼でその身体はどう有っても飛ばないでしょう!?って感じなのに恐ろしい速度で、ドラゴンが私達を挟んでラブカ君の反対側、建物の並ぶ居住区の方へと地面を削りながら着地しました。

 当然、50メートルはあろうかという巨体が高速で飛来した衝撃が地面に伝わり周辺一帯の建物が特撮映画のジオラマのごとく弾け飛びます。

 待ってください!なんで空間を割って出現するんじゃなくて東から飛んできたんですか!?というか、その周辺って避難済んでましたっけ!?

 これはヤバいです、人的被害が大変なことになってる可能性があります。

 ドラゴンの正体とか能力確認とか全部無視して速攻で倒す必要が出てきました。


 着地の際に持っていたコンテナを落としてしまったのか、それとも元からなんとなく持っていただけで意味はなかったのか、両手が空いたドラゴンはラブカ型の魔物に視線を向けるとぎゃおーと空へ向けて雄叫びを上げます。

 それに答えるようにラブカ君も空へと首を向け、雄叫びを上げようとして……。

 ぼーん。

 発声器官が齎した衝撃で爆破毒が作動したのか、首から上が吹き飛んでなくなりました。

 想定外の事態だったのか、ドラゴンが首から上を失ったラブカ君を見つめたまま思わず動きを止めます。

 

 「ミラさん!糸を!」

 「了解!人形繰糸マリオネートゥム・ニーティヒ

 動きを止めたのならば、先制攻撃はこちらが貰わねば無作法というもの。

 しかし、あの巨体相手に一撃で致命傷を与えられるような魔法は私の手持ちにありません。

 貫殺の樹槍ミストルティンなんかは割と有効そうですが、一撃必殺とまではいきませんからね。

 そんな事を考えながら、ミラさんと並んで無限の縛糸グレイプニールの糸を操りドラゴンをぐるぐると巻いて巻いて翼と前腕の機能を奪いました。

 ちなみに、ミラさんが地味に新魔法使ってますが‥…。アレです、「傀儡の根源なんだから、操り人形の糸に関する魔法が使えてもおかしくないでしょう?べ、別に誰かのワイヤー魔法みたいな空中機動が出来る魔法が欲しかったわけじゃないんだからね!」

 と、キレイなツンデレテンプレを披露しながら紹介してくれた魔法ですね。

 ぶっちゃけアレです。被実体化が出来ないだけの無限の縛糸グレイプニールです。

 

 つまり、2人で幾重にも巻き巻きすればかなり強力な拘束になるはずです。

 後は単純に、一撃必殺が出来る人にとどめを刺してもらえばいいだけです。

 というかこの人を藤御簾の中に転移させてドラゴンを不意打ちの必殺魔法で仕留める為に、前座であるラブカ君はチームセヴンスが相手をしますって話になったんですよね。

 あと、対ドラゴンとの戦闘に関する政治的問題ですが……。

 知りませんよそんな事。眼の前に脅威として出現し、周辺の住民に危害を加える存在に対して、戦わないなんて選択肢は私の脳内には設定されていないのです。


 そんな事を考えている間に藤御簾の中に金色の縦ロールをドリルのごとく垂らしながら、一撃必殺の代名詞が転移の魔法から華麗に登場しました。

 即座に引き抜かれるのは彼女の身長より3倍は長い巨大なパイルバンカー。

 ……流石に、相手がでかいと理不尽パイルも相当なサイズになりますね。

 「超やっちめーますわよー!」

 「やっちめーますわよー!」

 案の定ハイテンションな真割さんと、ごきげんな様子で真似するエラさん。

 ……実は、あの2人は物凄く趣味が合うらしくってとても仲良しなんですよね。あ、想像はついてた?ですよね。


 さて、自身は拘束され藤御簾の中でチャージを開始している真割さんの因果確定必殺パイルを認識できていないであろうドラゴン。

 端的に言って詰み……だと思うんですがどうですかドラゴンさん?


 そこでドラゴンの取った行動は、この場の誰も予想していなかったものでした。

 拘束に悶えるようにひと鳴きすると全身から光を放ち……。

 二回りほど小さいドラゴンに変身したのです。

 って、サイズ可変可能ってなんですかそれー!?


 サイズが小さくなったことによって魔力糸によって行われていた拘束が外れ一時の自由を手に入れたドラゴン。

 再度拘束することは可能ですが、今この瞬間に行われる攻撃は止めることが出来ません。

 ブレスが来るか、巨体を活かした格闘戦か、尻尾なんて可能性も……。

 最前線に出た私とミラさんが狙われた際の対処手段を脳みそフル回転で考える私に対し、ドラゴンの取った行動とは……。


 ぎゃ、ぎゃおー……と周囲を見回して既に大型の魔物というか、ラブカ君が消滅しているのを確認すると、最早この場所には用が無いとでも言うように例の空間を砕いてゲートを作り出す能力を使いこの場から去っていきました。

 って、帰っちゃうんですか!?

 これは流石に予想外です。

 いや、確かにやられて一番困る行動ではあるんですが、実際にその手を実行されてしまうと戸惑ってしまいますね。

 だいぶ肩透かしですが、これにて戦闘終了です。

 ……さて、急いでこの瓦礫の山から人命救助を始めないといけません。

 ドラゴンの魔力が魔力保有者特有の波長を持ってたとか、そもそも最初に持ってたコンテナは何処に行ったとか気になることは多数ありますがそれもこれも救助活動が終わった後で考えましょう!


 

☆★☆★☆★☆


地味にセヴンスさんが居る状態で一般人に出た初被害です。

別にセヴンスさんのせいでもないですし、防ぎようがなかったので本人そんなに気にしてません。


新職場との通勤時間の兼ね合いで平日投稿の場合は1時間遅れて夜10時の投稿で行きたいと思います。

週2~3回のペースは維持できそうなのでごあんしんくだしあ。

残業は少ないけどライフが減る系の職場です。執筆活動はMPで行うので問題ありません。


次回は魔法少女達による災害救助回です。



 

 


 

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