第134話 満月の夜の奇跡
──指定因果への乱数策定・多重展開・仮想竜眼AからCまでは通常策定・D以降には撹乱のための無限策定を設定・分岐上限は7と規定──
コイツはアレです。
あの、ミラさん救出作戦の時に
で、結果として5日間も昏睡する羽目になって知り合い全員をめちゃめちゃ心配させてしまった訳なんですけど。
まあ、流石に無茶をしすぎたと反省しましてですね?
色々制限をつけて、私の脳にダメージがそんなに来ない様に調整した
今回指定する
ただ、ちょっと相手との相性的に通常起動の
なにせ、理想の
対策するには、多重起動して私の脳内に流れる情報量をとてもじゃないけど読心程度じゃ把握できない量にして撹乱するのが一番手っ取り早そうだったので、まあ、やってやりました。
床に転がっていた
今なら攻撃も当たるような気がするんですが、不死の概念なんてものを持ってるなら普通の攻撃はやるだけ無駄なんですよねぇ。
いや、一応魔力を消費させるという意味はありますが、事あるごとに藤由さんを操って魔力を補充される現状を考えればやっぱり意味は薄いです。
丸いパンのヒーローよろしく、頭をドッキングすれば今度は再生の概念によって傷が治って元通り……と。
はあ、私の気分は吐き気100倍腹パンマンだというのに……。
「はぁ、首を落としてくれた挙げ句に不死の概念まで看破するなんて、邪神の手先にしてはやってくれるじゃない。でも、二度目は警戒しなくて良さそうだわ」
首の接続を確かめるように、手を当てながら首を振り音を鳴らす
「不死の概念はね?私を死へと近づけるもの全てに対する耐性を持たせる能力もあるの。ショック死を誘発させる程の痛みなんて二度三度受ければすぐ耐性がつくわよね。さて、次は一体どんな手を仕掛けてくるのか楽しみだわぁ」
ニチャっとした笑顔を浮かべながら私に視線を向ける
余裕を浮かべていられたのはその瞬間まででしたね。いい気味です。
──
ブバッと、何の前触れもなく鼻血をぶっ放す
何の覚悟もなく、現状の私の思考を読み取ろうとするからそんな目に合うのです。
……私が鼻血を出してない理由?根性に決まってるじゃないですか。かわいい魔法少女は鼻血なんて出してられないんですよ!
「その眼は!?くっ、思考の情報量が多すぎる!こんなの、どうやって追いきれば……」
とは言いつつも、しっかりこちらのチャートの一部を読み取ってるっぽいんですよねコイツ。ダミーで回しているDからFまでの仮想の私がでっち上げた攻略チャートが読心された扱いでエラーになってますから。
まあ、何にしろ今回は一人ではありませんし仲間を頼りましょう。
「セイクリッド・スターさん、5……いや、出来れば10秒間アイツの移動を止められませんか?あ、移動さえされなければ透過とかで攻撃が通じないのは大丈夫です」
返ってくるのは溌剌とした気持ちの良い返事。
「移動さえ止めてしまえば良いんだね!まっかせて!拘束魔法はあんまり得意じゃないけど……。私の魔法の真髄、見せてあげるんだから!」
うーん、現役当時もこんな感じで周囲の人に希望を与えてたんでしょうねこの人。なんか、ものすごく安心感があります。
《セヴンス様、わたくしには頼って頂けないのでしょうか?雛さんの危機なのです、わたくしにも援護させて頂けますか?》
次いで脳内に流れる理珠さんからのメッセージ。
《当然援護して欲しいんですが、それ以上に札月さんをこちらへ送り込む準備をしてもらっていいですか?私の魔力で保たせてる間に傷の治療をお願いしたいんですよ》
確かに、読心の範囲外に居る理珠さんからの攻撃はとても助かるのですが、それ以上に今は戦闘終了と同時にヒーラーを送り込む準備のほうが重要です。
このクソ教祖をぶちころがしたとしても、雛が助からなければ何の意味もないのです。
──
しかも、今回はチャートが確定しても最終局面に到達する前にその部分の思考を読まれてしまうと最初から組み直しなので、脳内に流れる複数の
魔法自体から脳にかかる負荷はミラさん救出の時に比べて軽減されていますが、本来の用途ではない
正直に言えば、ぶっちゃけ気合と根性で止めてますが気が抜けてしまえばまた血涙流して顔面ホラー映画状態になることうけあいです。
……でも、全部終わって回復したら雛は絶対この戦闘の動画を確認するでしょう?その時の私が血まみれで無茶してるなんて状態だったら、絶対後悔させてしまうじゃないですか。
あの眼を見ちゃったんです。雛の前では絶対無敵のセヴンスさんって見栄を貫き通したいんですよ!
──適合乱数に到達・候補数46・指定により再策定を開始──
「くっ、思考は読み切れなくとも魔女を倒してしまえば終わりだわ!」
透過と
大丈夫、その
頭に向けて突き出される右手は首を曲げて回避、直後に来る素人な前蹴りは斜め前へ一歩前進で無効化し、その後に来る
私に対して全く効果のないタイミングで透過を解除した
いや、理珠さんの魔法だっていうのはわかるんですが、地味に
魔力が減れば回復のために藤由さんを頼ることになり、回復されるまで攻撃頻度が減るのは今までの行動から予想出来ます。地味ながらも戦局に絡む一手。ぐっじょぶです。
──適合乱数に到達・候補数106・指定により再策定を開始──
……って、アレ?
次に
あれこれ経由して再度魔力の供給をするタイミングで、ほぼ全てのチャートで同じ
それは、ありえざる奇跡。
恐らく、今日が満月だった事に起因する彼女の矜持。
もしくは、眼の前で戦う魔法少女達に対する最後の意地。
「埒が明かないわね。こうなったら、言霊で全員縛ってから各個撃破で潰してしまうしかないわ!隠の巫女よ!星の力を更に!」
しかし、その身に溢れる魔力は……。
「……
古来より、月は狂気の象徴としても扱われていました。
月を根源とするその魔法は対象を一時的狂気へと導く、魔法少女・
心身を喪失しているはずの魔法少女が放つ、完全なる奇跡の魔法。
「はがっ!?」
透過状態でも七罪呪法の効果が発揮された様に、精神に関与する魔法はやはり透過で防ぐことが出来ないのでしょう。
完全に攻撃されることなど予想してなかった相手からの魔法を受け、
「ダメ押しチャンスだね!?まっかせて!」
瞬時に状況を把握し、重ねるように魔法を放つセイクリッド・スターさん。
「ルナ・エクリプス・シェイカー!」
放たれるのは奇しくも月をイメージした精神撹乱魔法。
そこに重なるように、
《
それは、完全に動作を止めた
「相棒が居るのに、私が居ないなんてありえないでしょう?最期ぐらい協力させなさい!」
『
「
オマケとばかりに、駆けつけた咫村崎センパイの茨の弾丸が蔦の上から強固に絡みつきます。
あまりに見事な、畳み掛けるような連携に思わず笑みが溢れますが、この戦闘は私が次の魔法を、次の呪いを放つまで終わりません。
前提条件の10秒間の拘束はもうとっくにクリアしました。
後はヤツが正気を取り戻し、透過を使う
よし、今です!
「
──七罪呪法・演目・仮題『完全なる自由』──
☆★☆★☆★☆
はい、これにて戦闘終了でございます。
倒し切るまで書く予定が、ちょっと終わりませんでした。
まあ、次回冒頭でトドメ演出だけやって、後はいつもの流れですが……。
で、実は、セヴンスさん雛わんこの台詞の意味を一つだけ間違えてます。
はてさて、どういった誤解なのでしょう?
藤由さんはアレです。根源が最も強化される満月だからこそ起こった奇跡です。
その時不思議なことが起こった。です。
これだから正義の味方って怖いですよね?
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