第133話 絶対の信頼
「いやー、いい感じの一撃がはいったねー。お侍さん達が同じ場所を狙ってたからわかりやすくて助かったよ」
仮面のせいでわかりませんが、恐らく満面の笑顔を浮かべてこちらへと駆け寄るセイクリッド・スターさん。
亡霊侍の剣の軌跡だけで足裏狙いって判断できる戦闘センスは正直脱帽ものです。
「……いや、貴方、次戦闘したら魔力を使い果たして消えるって話じゃありませんでしたっけ?」
「あ、やっぱりそうなんだ。なんとなくそうかなーって思いながら出てきたけど、これで踏ん切りがついたし全力で戦えるね!」
ああ、やっぱりそういう精神性なんですね。
ただ消滅するより、魔法少女として人々のために戦って消えようって……。
シアちゃんマジでなんとかしてくれませんかね?雛わんこと連日議論してましたけど、結局救う手立てが見つかったのかどうか……。
っと、戦闘中に敵から気をそらしてはいけませんね。
といっても、
……というか、激痛でのショック死ってどういう死に様なのか見たことがないのでわからないんですよね。
いや、念の為トドメは刺しときましょう。
ここで放置して死んだふりでしたーから奇襲を食らうなんて無様を晒したくはないですからね。
絵面は酷いですが、転がってる身体に七人侍の高周波ブレードを突きたててもらいます。
そう考えた瞬間、
「やはり性根が腐ってるとしか思えないわ。倒れた相手に追撃なんて」
お、褒め言葉ですね?ありがたく受け取っておきましょう。
戦闘なんて命の取り合い、卑怯卑劣は手を抜いてない証拠ですからね。
「くっ、まあいいわ。あら、2対1になったから思考を読む難易度が上がるとか思ってるの?片割れはすぐ死んでしまうのに?」
粘っこい笑顔とともにセイクリッド・スターさんへその指を向けます。
自殺の強制、なるほどそれがありましたか……。
七人侍と
「あ、大丈夫だよ多分」
焦りながら攻撃する私に対してあっけらかんと言い放つセイクリッド・スターさん。
『自らの命を断て!』
放たれる自殺強制の言霊を受けて彼女は……。
「だって、魔物の身体だもん。魔物って、消滅はするけど命とか死って概念は無いんだよ?」
何事もなかったかのように、平然と仁王立ちしていました。
なるほど、魔物になった本人から言われると説得力ありますね。
よし、チャンスですね。
半ば呆然とする
「死にませんでしたけど?じゃあ、これから2人分の思考を読んで上手く回避してくださいね?というか、さっきの奇襲でショック死してない理由はなんなんですか?痛覚恐竜並ですか?ジュラ紀はとっくに終わってますよ?」
ん、教祖なんてチヤホヤされる立場に居たせいか煽られ慣れていませんねアイツ。
明らかに私にヘイトが向いたのがわかります。
よし、狙い通りですね。私は某狩りゲーでも自分が標的にされてるほうが動きやすいタイプのハンターなので何の問題もありません。挑発はバフスキルです。
「そ、即死しないなら正面から殺しきってやるだけだわ!隠の巫女よ!星の力を私に!」
藤由さんからの魔力譲渡の後に行われるのは、怪しい指の動き……。
あー、あれは
んー、直感ですが、これ私の逃げ場を無くすように組んでる気がしますね。
……でも、私にだけ注視してていいんですか?
「隙ありぃー♪最大出力、
セイクリッド・スターさんが構えた杖から放出されたのはなんかこう、やばげな熱量を感じさせる純白のビーム。
ビーム……、太すぎませんか?魔砲少女がでぃばいんなんちゃらーって叫びながら撃つヤツの倍ぐらいの太さありません?人間一人飲み込む太さですよ!?
直撃の瞬間、軽く飛んだのが見えたので多分全身透過状態にしたんだと思いますが……。
「まぁだまだぁー!」
……ビームが途切れないんですよねぇ。
「いぎぎぎぎぃぃぃぃぁぁぁああああ!」
数秒後に聴こえてきたのは
透過で下の階に落下しないように実体化したせいで食らったと思うんですが、普通に下の階にすり抜けて逃げればいいのに……。
や、まあ、教祖とかやってる以上、プライドとかメンツとかそんなめんどくさいものが邪魔をして逃げるって選択肢を潰してるんでしょうけどね。
んー、しかし、まだアイツ死んでないっぽいの何なんですかね?
外傷性ショック死が頻発する鞭打ち刑より遥かに強い痛みを受けてるはずなんですが……。(なお、現在は死なない程度の痛みの鞭へと変更されている模様)
まあいいです、痛みというのは死ななくても恐怖を与えるものです。
こうやって何度か攻撃を当てていけば攻撃を食らうのが怖くなって回避と防御しか考えられなくなっていくはずです。
ごんぶとビームが止まった後には、なんだかんだ身体中綺麗にこんがりとした
といっても、再生の概念で時間が巻き戻るみたいにすぐ回復していくんですけどね。
歯を食いしばり、私を
しかし、できればセイクリッド・スターさんの最期は咫村崎センパイに看取ってもらいたいですし、時間はかけたくないんです。
でも、サクッと倒そうにもコイツを必殺出来る魔法が私には無いんですよねぇ。
いや、一応有るには有るんですが、何も考えずに使うと大事故が発生すると言うかなんというかで気軽に使えないんですよ。
「セイクリッド・スターさん、ダメージ系じゃなくて、なんか即死させるっぽい魔法とかはありませんか?」
ここは、初代魔法少女の手札に賭けましょう。
なんて、ちょっとだけ気をそらした瞬間でした。
「
実体化したのは、繭のような高密度で編み込まれた
そこに……。
『動くなぁぁ!』
強制による回避行動の阻害と……。
「
必殺の一撃の気配。
ただ、その魔法は私が創り出した魔法ですよ?
直撃したとしても、枝が体内を浸蝕する前に
加えてこの身体は心臓がぶち抜かれようが死んだりしませんし、というか死んでるからこれ以上死にようがありませんし、体内の魔力を食い尽くそうにもミラさんとも魔力共有している関係上彼女の純魔結晶を砕かない限り私の魔力が尽きることもありません。
その手では殺せないですよ?
私の思考を読み取った
「一本で殺せないなら、ハリネズミになるまで刺し続けたらどうなるのか……。その身で味わってみるが良いわ!」
あ、なるほど、私自身はやったこと無いですけど
横から飛んできた黒い水の散弾を透過で回避し、セイクリッド・スターさんが次の魔法を装填している間に大きく息を吸い込み
そこへ……。
「今なら当たる」
銀刃一閃。
次の瞬間に見たものは、突如を斬り裂きながら高速で襲いかかる刃にあっけなく首を飛ばされるヤツの姿でした。
直後に、切り取られた天井と共にドヤ顔で落下してくる雛わんこ。
もー、全くこの子はもー!
恐らく、上階でずっと私を援護できるタイミングを図っていたんでしょう。完璧なタイミングの一撃でした。
さしもの再生の概念と言えど首が飛んでしまえば終わりでしょうし?
帰ったら目一杯撫で回してあげましょう。
なんて思っていたその時、転がっていった
浮かべているのは首を飛ばされて死んだことによる絶望ではなく、私に対する嫌がらせが出来るという厭らしい笑みで……。
その、邪悪な視線が鬼巫女を居抜き……。
『自らの命を断て……』
と、絶死の言葉を紡ぐのです。
……は?
待ってください、いくら何でも首を飛ばされても生きてるのはおかしいでしょう!?
それ以前に、斬首の痛みは!?
いや、違います。この場でそんな事を考えてる余裕はありません。
なんとか雛を助けないと……!
ああもう、
なら、隙間から私が
しかし、太郎太刀を手放し、貫き手を胸に向けながらも彼女は落ち着いたもので……。
「生きてる……?あ、多分不死だ」
死を前にした筈のその顔は、完全に私を信用しきった笑顔で……。
「3分以内。セヴンスさん、大丈夫」
紡がれた最期になるかも知れない言葉はいつも通りの情報不足で、余りの緊張感の無さにこちらも気が緩んでしまうほど。
言い終わると同時に肉を裂き、心臓へと突き入れられる右手。
意識を失い、力が抜けて腰を下ろし、そのまま前へと倒れ込む身体。
そして流れ出る夥しい赤……。
大丈夫です。言いたいことはちゃんと全部伝わりましたから。
ヤツの不明だった最後の概念は不死であり……。
3分以内に魔力を補填し、手当をすれば自分は助かるからそれまでに奴を倒せと、私なら出来るからと、そういう事でしょう?
ああもう、信頼が重いんですよ!あんな眼で見られたらやるしかないじゃないですか!絶対死なせてなんてあげませんからね!?
覚悟しろよクソ教祖。
こっから先はずっと私のターンのクソゲーだからな!!
「
☆★☆★☆★☆
処刑用BGMが流れ始める回
雛わんこの生死に関してはもう、言及するだけ野暮なのでノーコメントで。
アレです、ライダーの河やら海やらに落下したのと同じヤツです。
バロ眼開いたので教祖はもう終わりですね。
不死で再生する透過なコイツがどんな風に処刑されるのかを楽しみにお待ち下さい。
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