第131話 籠絡蠱毒 

 さて、死合うとしましょうか。

 とかカッコつけといてなんですが、実は跳ばされていった皆さんが心配で気になってしょうがなかったりもします。

 あ、雛わんこに関しても心配してません。あの子はなんだかんだ無敵なイメージがありますし、私より断然頭がいいので多少の不利も戦略で覆しそうですし、それでも不利ならさっさと逃げて他の子と合流を目指すはずですから。

 あと、外で空中戦を繰り広げてる初雪さんもどうせ無傷で返ってくるんでしょう?的な無条件の信頼があるので対象外ですが、他の皆は無事ですかね?


 《はい、屋上には白さんと真割さんが、信者達が寝ているホールに青杜さんと如月さん、九條さんが跳ばされておりますが、現状特にお怪我などはされておられないようです》

 なるほど、理珠さんありがとうございます。

 となると後はミラさん達ですが……。

 ──せっかくセヴンスの根源を借りて作り上げた魔法のお披露目だったのに、一番見せたい相手だったセヴンスと離れ離れってどういう事なの!?──

 あ、元気な様ですね。

 あとは咫村崎センパイと右ネキなのでどうとでもなるでしょう。

 よし、安心して眼の前の敵へと集中出来ますね。

 

 とは言え、現状不可視の魔力吸収付与の無限の縛糸グレイプニールが腰に絡まってるので時間をかけて戦闘していけば徐々にこちらの有利に傾いてくれるはずなんですよね。

 まあ、前提条件としてその前に藤由さんを救出しておかないとせっかく吸った魔力を回復されてしまいそうですが。

 と、ここで大山田が腰に手をやり……。

 「小癪だわ。この程度の小細工をで神に選ばれし七身一体セプタニティである私をどうこうしようというなんて」

 その場からスッと横に歩くだけで無限の縛糸グレイプニールで作った拘束が外れました。

 おっと、残念ながら魔力を盗んでいたのがバレましたね。

 というか、七身一体セプタニティって何です?6つの概念プラス自分自身で7体合体だからと特別感出した感じでしょうか?中二病患ってませんか?いい年して。

 まあいいです。なんかボスっぽい敵と戦闘しながら大山田を連呼するのも締まりませんし、七身一体セプタニティって呼んであげますよ。


 ……しかし、静謐の隠密性を付与している絶視無影ぜっしむえい黒雷鎚くろみかづちの存在にどうやって気がついたのでしょうか?

 そもそも、今どうやって認識できない状態にある無限の縛糸グレイプニールを外したんですか?

 「くふふ、これこそがお前が選ばれし者に勝てない理由だわ。我らにあってお前らに存在しない星の力よ!」

 ……あ、なるほど超能力ですかね?恐らく精神感応テレパスによる読心。

 未来予知は自分で信用できないってほざいてたので違うと思いますし。

 うーん、しかし心を読んでくる相手との戦闘とは……。

 かなりめんどくさそうな気がします。


 「では、次はこちらの星力を見るが良いわ!」

 七身一体セプタニティはそう宣言すると大きく息を吸い込み……。

 何のひねりもなくこちらへ全速力で駆け出しました。

 いや、会話中にこの部屋の中無限の縛糸グレイプニールを酷い密度で張り巡らせてますからね?そんな風に突っ込んできたら……。

 突っ込んできたら……。

 あれ?

 

 七身一体セプタニティの突撃経路にある無限の縛糸グレイプニールを次々と実体化させて進行を妨害しようと試みているのですが、実体化したはずの無限の縛糸グレイプニール走ってきていて何の妨害も出来ていません。

 っと、これは回避しないと不味いですね!

 近くまで接近した七身一体セプタニティから無限の縛糸グレイプニールを利用した空中機動で身を翻して距離を取ります。

 背後では、私が躱した背後にあった壁に突きこまれる七身一体セプタニティの腕。

 んー?おかしいです。

 突きこまれると言ってもヤツの運動能力は無限の縛糸グレイプニールでの妨害が効かずやや動揺した状態でもあっさり躱せる程度の速度でしかありませんでしたし、走り方も一般的な運動のソレ。貫き手で壁を貫通できるような武術を身に着けている気配はありませんでした。

 となれば、何かの概念を使ったんでしょうけど、一体何の概念なのやら……。


 距離を取った私に対して、七身一体セプタニティは壁から手を引き抜いて大きく息を吐きました。

 ……って、壁に穴空いてませんね?うーん?拘束をすり抜けた概念と攻撃に使った概念は一緒っぽい気がします。あくまで気がするだけですが。

 あと、窓の外を服を着た謎の丸太が落下していったんですが屋上に跳ばされた2人は何の概念と戦ってるんでしょう?

 

 しかし、初手自殺強制から開始してくるかと思いましたがアテが外れましたね。

 読心で効果がないのを読み取ったんでしょうか?

 まあ、効きませんよーって煽れるチャンスが無くなっただけで特に問題はないです。


 でヤツの能力ですが……。

 攻撃やら壁やらをすり抜ける上に魔力を纏った物体でも足止め不可能。あと、恐らく息を止めている間だけ起動可能と……。

 なーんとなく、魔力反応的に身に覚えがあるんですよねぇ。というか、思いっきり私も魔法に組み込んでる要素です。

 「……次元の位相からズレて全ての攻撃を無効化するって感じでしょうか?いや、中々厄介な概念を取り込んでますね」

 防御だけならまだいいんですよ。

 アレが貫殺の樹槍ミストルティンと同じく別の次元に逃げているとすれば、当然貫殺の樹槍ミストルティンの防御無視能力も備わっているはずなんですよ。

 具体的に言うと、あの壁に穴が空かなかった貫き手。

 あれ、貫通した状態でこっちの次元に戻ってくれば腕が周囲の物体を押しのけてこちらの次元に実体化するので、硬さやら魔法的な防御要素を全部無視して何でも破壊出来てしまうんですよね。

 

 いや、防御無視攻撃を兼用してる完全防御能力とかインチキでは?

 一応、完全に全身あっち側に行ってしまうと床を貫通して落下してしまうと思うので足の裏ぐらいは実体が残っているであろう事と、位相がズレたままでは呼吸が出来ないのか息継ぎが必須で常時発動は出来ない様子なのが救いですかね。

 とりあえず、暫定的に透過の概念とでも呼んでおきましょうか。

 というかですよ?足の裏にしか攻撃が通じないとかクリシュナじゃないんですから、いきなり神話の英雄クラスに化けるの辞めて頂けます?たかだかクソ教団の教祖ですよね貴方?

 しかも、さっき再生の概念っぽい能力も使ってたんですよね。

 足の裏を攻撃して即死させることは不可能でしょうし、なんですかコイツ?ラグで無敵になったバグキャラとかです?


 いやまあ、落ち着きましょう。

 逆に考えて、足の裏にダメージを与えるだけで死ぬような目に合わせる攻撃が有れば良いわけです。

 そんな便利な魔法があるわけ……あるんですねこれがー。

 しかも、ちゃんと人間に使って効果の程は確認済みです。

 ……最初の犠牲となった国家機密さん達に合掌。

 ちなみに、自分にも一度使いました。というかこの呪いの効果を説明した時に理珠さんに使わされました。

 どういう効果で使ったかって?聞かないでくださいよ。

 失神と覚醒を夜が明けるまで繰り返す羽目になった挙げ句、喉が嗄れるまで声を上げさせられて……。あれは、魔力がなかったら脱水症状も引き起こして死にかけてたんじゃないですかね?魔力によるバックアップを受けても疲労が回復しなくて、目が覚めても身体が動かずに起き上がれないとか初の経験でした。びっくりです。

 なお、理珠さんはツヤッツヤでした。つやつやでした。


 っと、話が逸れました。

 つまりですね?再生するなら痛覚の感度を上げまくって痛みでショック死するレベルにしてしまえば良いのです!

 透過状態の相手に呪いが効果を発揮するのかがちょっと懸念点ですが、効果対象は相手の感覚なので五感がこちらの次元を認識してる以上大丈夫でしょう。

 

 どたどたと走る七身一体セプタニティの攻撃を無限の縛糸グレイプニールを使って天井付近に張り付いて回避し、発動に足る時間を稼ぎます。

 ……ちょっと、上階で爆発音が響いてて心配になりますが他の子が無事でしょうか?

 まあ、何か有れば理珠さんから連絡があるでしょうし、ミラさんも何も言ってこないので大丈夫だと思いましょう。

 

 では、お喰らい遊ばせ!魔法の元ネタが3000倍とかなんとかな忍者のアレで魔法少女達には紹介できないこの呪いを!

 

 「神聖反転ネガ・ディヴィニテート色欲顕現マニフェスタティオ・アスモダイ!」

  

  ──七罪呪法・演目『籠絡蠱毒ろうらくこどく』──

 

 

☆★☆★☆★☆


ということで、シナリオボス戦開始です。

息継ぎ中と足の裏以外完全無敵系クソボスです。

なお、足の裏の痛覚感度が3000倍になって今後ひどい目を見る模様。

ちなみに、痛覚以外の感度も操作出来るので夜の生活で良い刺激になります。

刺激で済むのかは効果量次第ですが、初使用時は強化しすぎてひどい目にあったみたいですね?





 



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