第120話 巫女服大太刀ポールダンス
変身したほうが良いという雛わんこの眼がガチだったので、全員大人しく変身する流れになりました。
で、そもそも変身が休眠解除だけな私とミラさんは良いとして、理珠さんと咫村崎センパイのはもう見ましたし、エラさんに関しては変身すらありません。何やら車椅子を操作してスタビライザーと謎の装甲板を展開して終わりです。
で、地味に気になってたんですよね、右ネキの変身。
というわけで、みんながいそいそと変身する中、今回は右ネキに焦点を当ててみましょう。
スッと右ネキが右手を掲げると虚空から謎のスポットライトが照射されます。
──ぅ青コーナー、魔力災害および不明現象生物特設対策本部所属ぅー、168センチ102.8パウンドー、今日も右手が光を放つのかー!?神の右手を持つ女ぁー!魔法少女ー、シャイーニーングー・ライッ!──
何処からともなく謎のアナウンスが響き渡り、ついでに言うなら謎の大歓声も聞こえてきます。
あと、この体重だとキログラムに治すとざっくり46キロぐらいなんですが、これ、義足の重量抜いての数値ですよね?セコくありませんか?両足の重量が含まれない分階級がだいぶ変わっちゃいません?
……いや、魔物相手に階級なんて存在しないので別にどうでもいい話であるんですが。
構えを取った右ネキが軽くシャドーでワンツーを繰り出します。
教科書に乗せたいレベルのその綺麗なモーションを繰り返す毎に身体から光が発せられて
ようですというのは、下着から順番に変化しているようでして、現状のトレーニングから直接駆けつけたジャージ姿にはまだ一切反映されてないんですよねぇ。
初手でとりあえず全裸になる系魔法少女勢に比べてとても奥ゆかしいですね?
というか、上半身の服が消える前にガウンが降ってくるの本当になんというか、放送コードに優しい変身ですね……。
最後はワンツーからの右ストレート(アルティメイたまない)で変身完了の様です。
うーん、ただのシャドーボクシング見学会ですねこれは。肝心の
まあ、そんな与太話は良いとして……。
変身が終わった私達を確認して雛ちゃんが目測刃渡り4メートルの大太刀を構えました。
「砂、凄いと思う」
それだけ暴風が吹き荒れかねないってことですね?
言うが早いか、雛ちゃんはその場で軽く大太刀を袈裟懸けに振り下ろしました。
同時に響く破裂音と襲い来る暴風。
って今、剣先にヴェイパーコーン出てませんでした!?
あれです、物体の一部だけが音速を超えた時に出る空気の膜みたいな奴。あれがうっすら出ていたような……。
「……ん?……んー?」
私達が驚愕しているのを知ってか知らずか、何か違和感が有った様子でしきりに首を傾げる雛ちゃん。
「ちょっと、何度か振る」
再度宣言すると、今度は急に片足で立って、重心移動とか何も考えていない感じの手振りで大太刀をブンブン振り回し始めました。
……あれ?
多分、同じ重武器である大鎌を振り回してるから実感としてわかるんですが……。あんな振り方をしたら、武器の重さに引っ張られて真っ直ぐ立ってられないはずなんですよ。いくら身体強化特化型の魔法少女と言っても流れる身体を制御するのは片足立ちでは不可能なはずです。
「……あ、多分理解った」
理解ったといいつつ、なんかぽかーんとしてる雛ちゃんが急にジャンプしました。
で、普通に最大高度まで到達して……。
到達した瞬間に足を
……いや、まさか二段ジャンプとか?いやいや、ゲームや漫画じゃないんですからそんな……って跳んでるー!?
私の想像とはちょっと違う軌道ですが、再度空中で跳ねる雛ちゃん。
あれ?なんか右に不自然に流れたような……?
見てる間にも雛ちゃんは幾度も宙を蹴り上空にとどまり続けています。
ただ、やっぱりずっと右にずれ続けてるんですよね。
そのまま、一度も地面に足をつけないまま訓練場の壁に辿り着き……。
ああ、なるほど。
雛ちゃんが到達予定の壁のすぐ横、採光用の窓から覗く太陽を見て強化形態である鬼神の神薙がどんな魔法を身に着けたのかを察しました。
アレ多分、自分限定の簡易重力制御とかそんな感じのやつですよ。
空中に留まるために重力の影響を緩和しているから、自転に置いて行かれてちょっとずつ移動しているんだと思います。
重力制御で重心を操作出来るからこそ、あの大太刀を片足立ちで振ってもバランスを崩さなかったんですね。
あ、ということはあの大太刀、振り回すときの重量は軽く、インパクトの瞬間から切断完了までは重くとか出来るんですね?だから軽く振ったように見えて先端が音速を超えたと……。
……いや、普通はそれでも超えませんからね音速!
はー、私も結構やばめな性能してると思いますが雛わんこも大概な性能してますよねぇ……。
と、壁を軽く蹴って元の場所に戻ってくる重力制御の魔法少女。
「わかった?」
質問しながらきらきらおめめしてるのがとても可愛くはあるんですが。このわんこめー!
相変わらず言葉が足りないんですよ。起こっている事象は理解出来てもどういう理屈でそうなっているのかなんて普通はわかりませんからね?この中で理解してそうな人は……、咫村崎センパイと、あ、エラちゃんが理解したのか眼が輝いてますね。
「自分と装備限定の重力制御とかで合ってますか?」
ん、どうやら正解だったようで私の返答に尻尾ブンブンで喜んでいる様子が見えます。いや、当然尻尾は幻覚なんですが。
「合ってる。だから、こういう事もできる」
次に雛ちゃんが行ったのは、軽く地面に立てただけの大太刀を柱に見立てたポールダンス。
だーかーらー!今下着付けてないんだからそういうのやっちゃ駄目でしょお!?
見てください、無惨にも鼻血の海に沈んでテンカウント取られてる右ネキを!
というか、刀身をがっつり素手で掴んでるんですけど大丈夫なんですかね?あ、自分の魔力で作った装備は自分を傷つけないんでしたっけ。
っと、いい具合にバランス取ってくるくる踊ってましたがやっぱり自転の影響を受けたのか、
「んー、重力制御はやっぱり難しい。身体強化も倍ぐらいになってる」
多分ですが、重力制御も自分限定な事を考えると鬼の根源さん的には「自分を強化する魔法」と捉えてる感じなんだと思います。
しかし、重力制御は難しいですよね。私も呪いの一つがソレ系になりましたが、制御が難しくて今の完成度だと使い物になりませんからね。
シアちゃんという魔法作成アドバイザーが居てそれなので、少なくとも使った瞬間西にすっ飛んで行かなかった雛わんこはめちゃめちゃ精密にコントロールしてるんだと思います。
……あれ?新たに生えてきた重力制御だけが精密なコントロールを要求してきた場合、こんな風に一瞬で適応できるものなのでしょうか?
もしかして雛わんこの身体制御って完全マニュアル操作で強化幅決めてたりしませんか?脳筋に見せかけて適時魔法をコントロールして最適な場面で最適な出力で強化したりとか……してそうなのが怖いんですよねぇこの子。
「あ、終わりみたい。んー、慣れれば伸ばせる?」
と、ピアスの中心に据えられた純魔結晶が薄っすらと赤い光を放ち、それが徐々に弱まっていきます。……カラータイマーかな?
光が完全に消えると同時に、強化時に追加されていた装飾や意匠が灰となって風に消えていきます。
「私で13分。強化形式も違うだろうし、データ欲しい……」
あー、そうですよね。人によって強化のされ方が違うでしょうし、魔力の消費量とかも変わってくるはずですもんね。
……ペネトレイターさんとか、絶対1分かからず消費しきりますよね。因果確定確殺パイルのちょっと弱い版みたいなのを制限時間いっぱい連射とかやってきそうな気がします。
「想定されたデータとそう誤差のない使用感ということでよろしい?私と雛さんであと何回か試験運用したら……、量産しましょう?」
咫村崎センパイの声にこくこくと頷く通常形態雛ちゃん。
とりあえず、こちらの戦力はかなり強化される見込みですが……。それでもあの魔物崇拝カルト、一筋縄で行く気がしないんですよねぇ……。
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サブタイトルがトンチキ?私も同意見です。
巫女服ポールダンスとかいう謎の組み合わせ、どっから出てきたんでしょう?
あるのかそんなもん?と思って検索したら見つからないでも無いのがインターネット広いなぁって感じでした。
全員強化のフラグ立てたので、カチコミの準備してからボス戦開始ですかね。
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